芸能
[TVツッコミ道場]

芝居、歌、趣味、ダジャレ、全てにおいて一流に面倒くさい野口五郎

2013/06/09 15:00
『FACE/GORO A SIDE STORY』(USMジャパン)

 ダジャレを連発したり、小芝居を挟んだり、自分流のこだわりが強かったり。こういう人は、今のトーク番組やひな壇バラエティだと「面倒くさい」扱いされそうな気がする。5月30日の『スタジオパークからこんにちは』(NHK)のゲストとして登場した野口五郎を見て、この人は元祖面倒くさいキャラだったと再確認した。

 登場した時に、「生活も仕事も“こだわり派”」と出ていたが、このこだわりが問題だ。最近は、アナログレコードのデジタル変換に凝っているそうだが、俳優業においてもこだわりを持っているという。テレビがワイド画面に切り替わっていく時期、従来の4:3画面では両端の部分が表示されないことがあった。五郎はこれを利用して、「そこ専用の芝居をしたりとかね」と話す。4:3画面だと見切れてしまう端っこで、

「何か削ったりとか、何かこう拭いたりとか……」

 と、小芝居をしていたという。最近も課長役をやった時に、髪を黒く染め、きついパーマをあてて、そしてそれをヘアメイクさんに伸ばしてもらうという、よくわからない手順を踏んで収録に臨んでいたという。

「こういう(髪形の)人ってなんか、いそうだなっていう」

 そこには五郎なり理論が存在するのだが、そんな細かいこだわりにスタッフも共演者も誰も気づかないことが多い。でも、「気づかれないのがうれしい」から「目立つようなことはしないように」と、微妙なラインを狙っているのだとか。

時には逆に、気づかれるための小芝居をすることもある。かつて NHKの連続朝ドラマに出演していた時には、ドラマの放送終了直後にニュースを読むアナウンサーを笑わせることに挑んでいたのだという。この五郎のチャレンジには、番組MCの伊藤雄彦アナも思わず、

「余計なことしてほしくないですけどね」

 とツッコんだが、そもそもこの「余計なこと」に全力を注ぐのが五郎なのだ。

 朝ドラ出演時のVTRが流され、エンディング間際に主人公のお見舞いに花束を抱えて登場する五郎がアップになる。花束の葉っぱの部分が五郎の鼻の穴をくすぐり、ムズムズヒクヒクする五郎の表情が大写しになってドラマが終了した。見るからに「余計な」小芝居だ。

「1時になりました、ニュースをお伝えします」

 真顔でニュースを読むアナウンサー。五郎、撃沈。伊藤アナが言う。

「どんなニュースもありますから。笑っちゃいけないので、笑わないように、つねってたりとか。笑わないように努力してるんです」

 そりゃもっともだ。しかし、それでも「負けた!」とか「10年たって負けが確認できました」と悔しがる五郎。ここで、「五郎さん、面倒くさいです」といじっていいかもしれないが、五郎は大スターで、番組MCも芸人ではないため「あまりやらないでください」と、優しく釘を刺された程度だった。

続いて、話題は歌手・野口五郎に移る。ステージの後には毎回「ひとり反省会」を開催し、「『どうしてあの時にこうして手を前に出しちゃったのかな』とか、『そんなふうに手で説明しないと君は相手に伝えられないのか』」と、自問自答するそうだ。1人でイスに向かって歌うこともあるそうで、

「そこに今まで自分の愛する人がいた、いなくなったっていう設定を、自分で作って歌ってるんですよね」

 と、独特の理論を展開。やっぱり「面倒くさい」とツッコんであげる方が、五郎はおいしくなるんじゃないんだろうか。

 そんな五郎のこだわりを、最も近くで浴びるのは当然、家族。五郎に「面倒くさい」的なことを言えるのは、妻・三井ゆりだった。三井がVTR出演で話していたのが、自宅にあるスタジオにこもるとなかなか出てこないので、家の中にいるのに携帯電話で連絡を取り合うとか、シャンプーや液体せっけんの詰め替えがやたら好きで、それをいつも五郎がやっているため、「(結婚して)12年、シャンプーを1回も詰め替えたことがない」という。

 また、食事中にダジャレを言って子どもたちを笑わせる五郎には、「最近はもう、(私も)フフッみたいに笑って」「『鼻で笑うようになったよね』『昔は違った』とか言われますけど」と妻の余裕をみせる。

 最後に、視聴者から寄せられた質問に答えるが、その質問が「ご趣味は何でしょう」。ここまで五郎の深い内面を聞いてきて「趣味」とは。しかし、

「特許とったりとか、商標登録とったりとか」

 と、さらにすごいことを言う五郎。実際に取得しているものが、「6つ7つ……」とのこと。続く質問は、「どうしたら五郎さんみたいに嫌われないダジャレを言うことができますか?」。これには、オーソドックスなダジャレは厳禁とアドバイス。悪いお手本とはいうものの、「電話にでんわ」「そんなバナナ」「イルカなんでいるか」と寒いダジャレを楽しそうに連発する五郎。

 ここまで五郎をつっこんだりいじったりせず、優しく見守っていたNHKだが、このダジャレ連発には、

「でまあ、奥さんには『フフッ』と鼻で笑われていらっしゃるようですけどね」

と、ようやく五郎をいじったのだった。野口五郎の面倒くささは、さすが元祖の貫禄であった。
(太田サトル)

最終更新:2013/06/09 15:00
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