「鳥貴族」も誕生28年目! 大倉忠司社長が語る居酒屋業界と“忠”の秘密
■均一居酒屋には行かない ライバルはコンビニ
──東京に進出してきて、関西や中部と、商売の仕方に違いを感じたりしますか?
大倉 鳥貴族をやっている上ではないですね。今のところ、お客さんは20代の方が多いというのも、大阪と同じですから。それに、焼き鳥のタレって、もともと関東の味が基本ですから、味も全然問題ないです。
──誤算はなかった、と?
大倉 まあ、誤算という言い方は失礼かもしれないですが、客単価は東京のほうが低いんですよ。
──それは意外ですね。
大倉 東京ってお金持ちが多いイメージですけど、そういう人はウチには来ないでしょ(笑)。ミュージシャンの卵をはじめ、発泡酒の大ジョッキと、おかわり自由のキャベツだけで飲んでる方も多いですよ。発泡酒の大ジョッキは、コンビニで買うよりウチで飲んだほうが安いですからね。
──そういえば、ミュージシャンで鳥貴族が好きな人って多いですもんね。鳥貴族の歌を作ったり、入場料280円の「鳥貴族ナイト」なんてイベントを勝手に開催したりしてるバンドもいますしね。
大倉 勝手にやってくれる分には、どうぞ、どうぞ、ですよ。こちらとしてもうれしいですしね。昔、よく鳥貴族に来ていたバンド、彼らもウチのマスコットキャラのトリッキーの歌を作ったりしてくれてたんですけど。彼らに冗談で「君たちが売れたら、鳥貴族を宣伝してよ」って言ってたら、テレビに出た時に「売れる前、苦労している時に通っていた焼き鳥店です」って、本当に紹介してくれて。約束を守ってくれたんですよね。
──やっぱり、”ミュージシャン”と相性がいいんですね。
大倉 ほら、彼ら夢はあるけどお金がないから(笑)。それで、売れた途端に来なくなるんですけど……(笑)。でも、ウチはそれでいんです。ここで、日々の苦悩を発散して、夢を語ってくれれば、ね。
──そんな「夢はあるけど金はない」人にも優しい、鳥貴族の均一価格ですが、それに大手居酒屋チェーンが参入してきたときは、正直、どのように見ていましたか?
大倉 均一競争が始まった一番のきっかけは、リーマンショックだったと思います。だけどウチの場合は、初めから低価格、高価値を目指してやっていましたから、影響はそれほどなかった。逆にウチは、業績が上がったくらいでしたから。ただ、そこに大手さんが参入してきて思ったのが、「本当に均一料金にすることに対して思いがあるのかな」ということでしたね。みんな、低価格、均一路線は、仕方なく始めたんだと思うんですよ。それで、働く社員、従業員の方は誇りを持てるのかなぁって。
──でも、リーマンショック以降、世間の反応は変わったのでは?
大倉 均一料金というところにスポットが当たって、メディアの取材は増えましたね。ただ、流行や時流、景気に流されないという業態でやっているつもりだったので、「時代に合っている」と言われると、違和感はありましたよ(笑)。
──価格競争になると壮絶な消耗戦になりますが、危機感はありましたか?
大倉 当時よく比較されたんですけどね、ウチは価格競争をしているという意識はないんですよ。280円という価格で、どれだけ価値のあるものを提供できるかという点に意識を置いていますから。
──では、大手居酒屋チェーンが参入してきたときも、売り上げに影響はなかったんですか?
大倉 最初の頃は多少ありましたよ。近くに同じような均一居酒屋があると、みなさんやっぱり行きますから。でも、少したったらまたお客さんは戻ってきてくれましたし、進む道は間違ってなかったと思っています。
──やっぱり他社の店舗は気になったりします?
大倉 いえ、それがねえ……同じような均一居酒屋には1回しか行ったことがないんです。それも、社員がどうしても行ってみたいというもんで。僕自身はまったく興味がなくてね(笑)。失礼かもしれませんけど、大手居酒屋の均一の店舗には一度も行ったことがないんです。
──意外ですね。では、どんな業態が鳥貴族にとっての脅威になるんですか?
大倉 コンビニさんですね。今の一番のベンチマークは”家呑み市場”なんですよ。コンビニで鶏の唐揚げの新作が出たら必ず買いに行ってます。鶏に関しては、コンビニさんに負けたくないですから! 焼き鳥に関しては、レベルが違うぞという自負はありますけど、唐揚げは作り置きしててもイケるんですよ。だから、価格と味はいつもチェックしてますね。
■長男・忠義の名前に込められた思いとは……?
つづきはコチラから!