「男気ジャンケン」が失ってしまった、熱さや滑稽さやステキなものたち
今回ツッコませていただくのは、宮城県初上陸でSMAP・草なぎ剛と脚本家の宮藤官九郎が急遽参戦した、5月16日放送分『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の「男気ジャンケン」。
とんねるずをはじめ、有吉弘行やバナナマン・日村勇紀、おぎやはぎ、哀川翔、清原和博など、おなじみのメンバーが日本各地に行き、出演者全員で「男気ジャンケン」をして、最後まで勝ち残った1人が大量の商品をすべて自腹で買い、男気を見せるという企画だ。元々人気の同企画に、予測不可能の天然素材・草なぎ剛が参戦とあれば、さぞ面白い展開になるだろう……という期待感が、いやが上にも高まる。
にもかかわらず、残念ながら、視聴者側としては不思議なほど盛り上がらない内容だった。本人たちは盛り上がっている。でも、本人たちが楽しそうにすればするほど、ユルイ「慰安旅行」感が出てしまう。元々フジテレビってそうだよね? とんねるずって内輪ウケの人だよね? と言われたら、それまでかもしれないが、企画開始当初の「男気ジャンケン」にはもっと熱く、もっとみっともなく、もっと滑稽でステキなものがギュッと詰まっていた気がするだけに、残念だ。
一体なぜ、見ていても気分がちっとも盛り上がらないのか。単純に、この企画に飽きたのか。いや、そんなことはない。おそらく「人気企画」だからこそ、盛り上がらなくなってしまったんじゃないだろうか。
振り返ってみると、なんとなく違和感を覚えるようになったのは、演出などを手掛ける「マッコイ斉藤」が必ず出てくるようになってから。今回も草なぎの前で草なぎのマネをし、みんなに海に投げられて水浸しになっていたりしたが、マッコイ斉藤が水浸しになろうが、泥まみれになろうが、この人のこと、よく知らない(※ディレクターをしたり、演出している番組によく登場するけれども)だけに、どういう見方をして良いのかわからなくなる。
楽しかったはずの食事会や飲み会に、よく知らない人を連れてこられて、そっちの知り合いで盛り上がられてしまった「置いてけぼり」感に似ているかもしれない。また、いつからかわからないが、ジャンケンに真剣みを感じなくなった。
かつてはジャンケンに勝ってしまった人が、うっかり引きつってしまったり、思わず嫌な顔をしてしまったり、狼狽えてしまったりしつつ、それを隠そうとするあまり、ほかの人に責任転嫁をしようとしたり、卑怯にごまかそうとする「ガチ」な感じが人間臭くて、非常に良かった。だが、今はジャンケンに勝った人が、自腹になるにもかかわらず、わりと普通に男気を見せて喜んでいる。ただのジャンケン大会みたいだ。この日も、最高額の80万円の広告費を払うことになったのが、綾小路翔だったが、80万円でメジャー番組の人気コーナーでたっぷり宣伝できたと思えば、さほど痛くないのかもしれない。
番組や企画が人気になるって、こういうことなんだな……とあらためて感じ、寂しさを覚える男気ジャンケンだった。
(田幸和歌子)