カルチャー
『食べるなら、どっち!?』刊行インタビュー

添加物表示は食品企業の免罪符! 消費者を防護する『食べるなら、どっち!?』

2013/05/21 15:00

――宣伝から伝わる企業イメージと、製品の安全性は一致しない?

渡辺 例えば、モスフードサービスは、保存料不使用だったり減農薬の野菜を使うなど消費者の健康を考えた商品を展開していて、その真摯な姿勢には好感が持てます。マクドナルドよりは添加物にも配慮していると思いますが、ソースに含まれているものなどトータルで見るとそれほど変わらない。ソースには発がん性物質を含む可能性のあるカラメル色素が使われているんですが、それもここ半年ほどで安全性が問われだした添加物なので、これまでは問題ないとして多くの食品に使われてきました。だから、使用をやめる体制もまだこれからでしょう。しかし残念ながら、カラメル色素の危険性は、新聞やテレビでは報道されません。

――一元的に評価はできないと思いますが、企業ごとの特徴はありますか?

渡辺 わかりやすい例でいうと、例えば、ハウス食品とS&Bでどちらが安全性の高いものを作っているかといったら、それはS&Bですね。キユーピーとカゴメも、そんなに不安なものは使っていません。しかし企業は利益を上げるのが目的ですから、そのためには少し危険と感じるような成分でも使ってしまう。カゴメの「ラブレ」も、最近になってスクラロースを添加した製品が売り出されました。真面目にちゃんとしたものを作っていると利益が上がらず、そうなるとテレビで宣伝もできない。結局は淘汰されてしまう。

――消費者にも、自身を守るために知識が必要になってくるんですね。

渡辺 山崎製パン「芳醇」の袋には、厚生労働省の定める基準内で臭素酸カリウムを使用していると書かれています。それには発がん性があるのですが、そのことは表示されていない。「動物実験で発がん性が認められている臭素酸カリウムを使ってます」と書かれていたら気をつけますが、添加物だけ書かれていても気づかない。それがほとんど一般的な感覚です。ただ、なにか問題が発生した時に、「うちはちゃんと書いてます」という企業側の免罪符になっている。

――消費者の意識によっては、添加物の状況も変わりうる?

渡辺 昔は消費者団体の力が強かったんですよ。でも今は、消費者団体や反対運動の声を聞かない。スクラロースやアセスルファムKは、ダイエットによい、肥満によいというプラスのイメージがあるので、体に目に見える悪影響が出なければ消費者も声が上げられないでしょう。

――安心して食せるものを追求すると、手作り以外の選択肢がなくなってしまいます。

渡辺 あまり神経質になると、かえってストレスで体を壊してしまいますし、完全な健康を維持するのはどうしたって難しいです。添加物の多い製品も、絶対に食べてはいけない、食べたらすぐ病気になるというわけではありません。ただ、積み重ねると危険性が増すということです。本の中で、「食べるなら、こっち」と挙げているのを選んで普通に食べてもらえれば、体に悪影響や障害が出るということは、おそらくないですよ。なにより、その商品の方が食べても美味しいですから。

――食品メーカーは、今後どうあるべきでしょうか。

渡辺 自分たちの子どもや孫に、自信をもって薦められるような製品作りをしてほしいですね。愛知県のある菓子メーカーを取材した時に、「子どもに安心して食べさせられる商品作りをするために、タール色素や保存料は使っていない」という回答を得たことがあります。過去には使っていたといいますが、安全性に疑問があるため、使用をやめたとのことです。こういった姿勢が、本来のメーカーの姿ではないでしょうか。

渡辺雄二(わたなべ・ゆうじ)
科学ジャーナリスト。1954年生まれ、栃木県出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題専門紙の記者を経て、82年よりフリーの科学ジャーナリストに。以後、食品、環境、医療、バイオテクノロジーなどの問題を雑誌や新聞に寄稿。特に、食品添加物、合成洗剤、ダイオキシンなどの化学物質の毒性の問題に詳しく、講演なども多数。著書に『買ってはいけない』(共著、金曜日)、『食べてはいけないお弁当 食べてもいいお弁当』(だいわ文庫)、『食卓の化学毒物事典』(三一書房)、『食品添加物毒性判定事典』(メタモル出版)、『ヤマザキパンはなぜカビないか』『花王「アタック」はシャツを白く染める』(緑風書房)などがある。

サンクチュアリ出版HP

最終更新:2013/05/22 12:37
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