ワーキングマザー向け雑誌「Grazia」の想定読者は実在するのか?
ただワーキングマザーに至っては「オフィスに子どもを出入りさせることができるママ」と「お迎えの時間に、周囲にこっそり気を遣いながら退社するママ」の二極化で、その狭間にいる層はとても少ない。なので、オピニオンリーダーの「子どもが放課後ひとりで過ごすことに不安に感じているんだったら、会社に連れてきちゃえば?」という意見は「そういうことできる人はいいよねっ!!」という同じワーキングマザーで対立する火種になりかねない。オピニオンリーダーに同意するフォロワーがいないのは、雑誌にとって大きな痛手なのです。
■仕事に着て行きづらいファッションアイテム
お次はファッションページの問題点を見てみましょう。「Grazia」のファッションページといえば、以前は10万円近くするスーツやらバッグやら靴やらを掲載していましたが、ここ最近はアイテムの価格もお手ごろに。今月号の大特集は「360度スタイルよく見える服」という中年期に突入しはじめた読者に寄り添う企画タイトルなんですが、中身が全然ワーキングマザーに寄り添っていない。「真っ白なレース素材のワンピース、ゆるいラインのTシャツやハードなロゴがデカデカとプリントされたTシャツ、ショッキングピンクのパンツやイエローのスカートといったアイテムが誌面を飾っています。マスコミ系・広告系・ITなどのベンチャー企業なら許されそうですが、一般的な企業にこれを着ていくのは勇気がいりそう。
「Grazia」はファッション誌なのでファッションの流行・トレンドを紹介するわけですが、ワーキングマザーは仕事服は悪目立ちしたくない&そんなにお金をかけたくない→ド定番アイテムを選択、プライベートの服は子どもや夫と過ごす時間がメインだし、たまに会う友人に「またこの服着てるのか」と思われたくない→ド定番を選択、という思考が一般的。大前提として、そこには大きなミスマッチがあるのです。そこでいかに読者に欲しいと思わせるかが雑誌の手腕なわけですが、ハッキリ言ってファッションページの方向性も中途半端なんです。
例えば「おとなの『ゆるエレ』パーカスタイル」では仕事でも使えるコーデとして「パーカ+ワンピース」「パーカ+キレイ目柄パンツ」といったコーディネートなのですが、ファッション好きな人には物足りないし、定番を好む人には冒険が過ぎるんですよね。ファッションページとしても集客できていないような気が……。
■「東洋経済」の方が思い切りがいい
今月号の読み物ページ「働く。育てる。私の履歴書」には、輝かしい経歴をお持ちの先輩たちがズラリと登場しています。ワーキングマザーの代名詞ともいわれる「イー・ウーマン」の佐々木かをり社長をはじめ、銀行に入社しロンドン赴任も経験して現在は日本コカ・コーラのビジネスシステムズディレクターを務める女性、電通入社後にスタンフォード大学のビジネススクールに留学し数社を経てGoogle執行役員を務める女性、香川県内のチェーンストアの美容部員から本社転勤しリバイタルやHAKUなどのヒット商品のマーケティングに携わってきた資生堂の女性社員が、仕事と母親業の両立やその苦悩、仕事へのモチベーション維持を語っています。
彼女たちの言葉は本当に立派で学ぶところも多い半面、「私もこんなに頑張ったんだから、あなたもできるよ」という圧力に感じてしまう部分も。共感を得るにはキレイごとばかりが並び、モチベーションを上げるには抽象的な記述が続くのがまた辛いところ。