[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

甘くて柔らかいもの好きの「ガキ舌」女から、「薬味なしに生きられない」女になること

2013/05/12 21:00

「今、まだ、お昼前だから、あんまりお寿司流れてないの、だから、自分で頼んでね、頼み方分かる?」

 ……オバちゃん、気使い過ぎである。

「え~~~っとぉ、何にしようかな~~~」

 女の子たちはそう言いながらも、メニューよりも己のスマホに目がいってて、なかなか注文しようとしない。

「え~~~っとぉ、じゃぁマグロくださ~~い」


 そこですかさず、またオバちゃんが登場。

「ワサビはどうする!?」

 ……これじゃあもう、完全に子ども扱いである。

「あ~~、あたし、ワサビダメなんでぇ抜いてくださ~~い」

 片方の女の子が、河西智美丸出しな顔で職人に注文した。「え~~~、ワサビだめなのぉ~~?」と、ダルそうな声で聞く、もう片方の女の子。「うん、全然だめ~~~」。


 寿司をほおばりながらも、隣の女の子たちが気になって気になって、もうどうしようもない状態の、私・43歳・中年。

「え~~~~っとぉ、次はぁ~~~ん~~~、サーモンとぉ~~~……サーモンとぉ~~~~サーモンとぉ~~~~~」

 サーモンとぉ~~~~の、次が出るまでがとにかく長い。普通は「決めてから注文する」所を、「注文しながら決める」女の子たち。ゴーイングマイウエイ。己の生きたいように生きている。それに対して寿司を握る職人のおっさんまでもが

「いいんだよ~~、ゆっくり決めてていいんだからね~~ゆっくり決めて~~」

と、まるで幼稚園児に話しかけるような口調で気を使ってる。何なんだ、一体。「え~~~っとぉ、じゃぁあたしはカツオ~~~」。それに対して「カツオくんカツオくん~~、これもワサビなしでいいのかな~?」と、聞く職人。

「なしで~~」
「ショウガのせてもおいしいよ」
「え~~~、ショウガ、やだー」

……出た、タメ口。期待を裏切らない展開に、なぜか気分が盛り上がってくる私。彼女たちのやりとりから、もう、目が離せない。

『これがオンナのケモノ道』