カルチャー
イベント「有末剛緊縛夜話 第一夜 縄の儀式」レポート

緊縛師・有末剛の縛りに感じた「強く抱きしめられたい」女のSM願望

2013/05/01 16:00
有末さんの縛りは優しさそのもの!
(撮影:後藤一平)

 それにしても有末さん、SMの世界観とは相反するように思われるが、手ほどきがとてつもなく優しいのだ。柔らかく、温かさが伝わってくるような縛りなのである。バックに流れる音楽に合わせて、縛るスピードが速くなる場面があるのだが、それでもなお荒々しくはなく、ソフトで美しい……なんだか女体を楽器にして、縄で一曲奏でちゃっているかのよう。そしてすべての行程が終了した時、有末さんは最後に女性の結っていた髪の毛を解き、その髪の毛を首筋に沿って艶かしくかきあげるのだ。

 筆者は気付いた。さっきから全身を縛られた上に吊るし上げられている2人の女性が、まったく痛々しくないことに。「痛いことで快楽を得ている」のではなく、心の底から気持ちよさそうなのだ。自分の肉が締め付けられることを全身で感じているような、生の快感があった。見ている側にもそう感じさせるのが、緊縛師・有末剛の手腕なのだろう。

 終演後、有末さんにお話をうかがった。「SMという概念が一般的になった今も、緊縛はまだまだマイナーなものとして受け取られるのでは?」と聞くと、

「性は多様なものです。ノーマルな性もあればアブノーマルな性もあります。どちらがいいとか悪いとかの問題ではなく、相手との相性もあります。違いや相入れない価値観や趣向があるにせよ、その違いを排除するのではなく、違いを認めること、つまり差異を認めること、これが豊かな文化だと思います」

 と、穏やかな口調で語ってくれる有末さん。男性だけでなく、若い女性の来場者も増えていることについて触れると……

「女性はキレイに縛られている人を見て、自分を同化します。だから、私もやってみたいと思う女性が増えているのではないでしょうか」

 終演後に、着衣にて緊縛体験の時間が設けられていたのだが、限定3名までの予定が、結局希望者過多により7名程が体験していた。なるほど、皆見てたら縛られたくてしょうがなくなったのだ。縛られている姿を見せ、女性特有のジェラシーまで掻き立てるなんて、さすがアニキ! さらに有末さんは、緊縛を求める女の心について、こんな話をしてくれた。

「最近の若い女性は、強くぎゅっと抱きしめられることがないんじゃないのかな。その感覚を求めて緊縛を見にくるのではないかと思います。あと、セックスの時に段取りを踏まない男もいますからね。緊縛はコミュニケーションの1つで、段取りを大事に、相手の反応を見ながら縛って伸ばしてあげるものなんです」

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