ミュージカルブームに乗り、スピルバーグの熱意で誕生した『SMASH』
――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディテールから文化論をひきずり出す!
近年、ミュージカル・ブームに沸いているハリウッド。『ドリームガールズ』(2006)、『ヘアスプレー』(07)、『マンマ・ミーア! 』(08)と立て続けにミュージカル映画が公開され大ヒットしたこともあるが、なんといってもブームの立役者は09年から放送がスタートしたミュージック・ドラマ『glee/グリー』だろう。
『glee』は、高校の合唱部を描いた作品で、舞台で活躍してきた役者たちを中心にキャスティングされている。演技ができて、歌唱力が高く、そこそこ踊れるという役者たちが、大物アーティストたちのヒット曲をカバーすることで番組は爆発的に大ヒット。視聴者はミュージカルシーン目当てでテレビのチャンネルを合わせるようになり、『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』など既存のヒットドラマも人気にあやかりミュージカル・エピソードを制作するようになった。
映画界も負けじとばかりに『レ・ミゼラブル』を制作。本年度アカデミー賞に8部門もノミネートされ、うち、3部門を受賞。アカデミー賞授賞式では、過去10年間のミュージカル映画の集大成を祝うトリビュートが行われ、拍手喝采を受けた。
本家本元のブロードウェイ・ミュージカルもぐんぐん売り上げを伸ばしており、昨年1年間の売り上げは、11億ドル(1,080億円)以上だったと発表されている。また、人気俳優のオーランド・ブルームが今秋ブロードウェイで公演予定の『ロミオとジュリエット』にキャスティングされたと報道されるなど、空前のミュージカル・ブームはまだまだ続いているのだ。
そんな数あるミュージカル作品の中で、最も輝きを放つといわれるテレビドラマが、米3大ネットワークの「NBC」で12年2月から放送開始した。巨匠スティーブン・スピルバーグが手掛ける、ミュージカルの裏舞台を描いた、リアルでシビアなドラマ『SMASH/スマッシュ』である。