上原さくらの離婚成立をスクープした、「女性自身」のディープな情報網
下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!
第174回(4/26~30発売号より)
またしても、とんでもない快挙。今週の女性週刊誌3誌の全てに「ビッグダディ」記事が掲載された。先週に引き続き、どうなってるんだ。日本のメディア界――。
1位「女性セブンが伝えた『ダイエット』の50年」(「女性セブン」5月9・16合併日号)
2位「上原さくら 慰謝料ゼロで離婚が成立! でも夫の金庫から“500万円”消えた…」(「女性自身」5月14・21合併日号)
3位「赤坂晃『芸能界との訣別』と『結婚』を初激白!」(「週刊女性」5月14・21合併日号)
ゴールデンウイークということで、女性週刊誌は全て合併号である。特に「セブン」は創刊50周年記念号とも重なり、通常より分厚い。創刊50年――。女性週刊誌の中では最後発雑誌ながら、あらためて日本の週刊誌業界の歴史を感じる。誌面も50周年記念特集が目白押しだ。50年間の男女の愛憎スクープ写真、嵐特別撮りおろし、プレゼント企画、林まり子と中村うさぎによる「女性週刊誌」考など、読み応えのある1冊となっている。
そんな特別企画の1つが、「セブンが伝えた『ダイエット』の50年」。前後編15頁にわたる大特集だ。女性週刊誌においてダイエット企画は定番であるが、50年も前からダイエット企画が脈々と続いてきたと思うと。女性の欲望に忠実に応えてきた女性週刊誌の歴史を考える上でも興味深い。
ダイエットには長い歴史とブームがあった。近代の日本人女性が痩身に目覚めたのは昭和28年、日本人女性が初めてミス・ユニバース世界大会で3位になったことが契機らしい。昭和38年には「セブン」が和田式美容体操なるものを紹介する。これが「セブン」が“痩せる”ことを扱った最初の記事だったという。高度成長期、東京五輪直前ということだ。その後はミニスカ・ツイッギー来日でミニスカブーム、昭和45年にはタレントのダイエット本がベストセラーになるなど、ダイエットは世の女性の関心事になっていく。有名人のダイエット成功者や指南役の本もその後出版され続けた。鈴木その子、川津祐介、竹内都子、瀬川瑛子などが自身のダイエット方法を伝え、女性たちは我先にとそれを真似て実践していく。さらに、ぶら下がり健康法などに見られる美容器具も登場、ベルトマッサージ、などからアブストラクター、巻くだけダイエットになど現在につながっていく。エクササイズ系もビリーズブートキャンプの大ブームは記憶に新しいし、骨盤ダイエット、樫木裕実や美木良介などカリスマ・インストラクター、カリスマ・ダイエッターも登場、現在でも支持を受けている。
しかし、今回見ていて面白いのはなんといっても“食”だった。「あー、そんなのあったな」という懐かしのオンパレード。紅茶キノコ、パイナップル、きゃべつにリンゴ、ゆで卵――。これらだけを食べていれば痩せる、ってすごいダイエット方法が公然と語られていた時代もあった。最近も納豆、寒天を食べると痩せるといわれ、スーパーからこれら商品がなくなってしまったことも。「ラクして痩せたい」「食べて痩せたい」――悲しい願望でもある。
こうしてダイエットの歴史を振り返っていると、ダイエットの歴史の興味深さと同時に虚しくもなってくる。多くのダイエット情報がこれだけ長期にわたり氾濫している。これらが本当に有効的でリバウンドしないのだったら、日本人はもう全員が痩せてるはず――。しかしそうはならずに、ダイエットサプリは売れ続け、新たなダイエット方法が編み出される。ってことは、ダイエットとは「絶対達成できないもの」「リバウンドするからこそのダイエット特集」ということではないのか。そして痩せたい、キレイになりたいという女心につけこまれ、企業やメディアによるダイエット情報に踊らされ続けた50年――でもある。