“ぬるくてモヤッ”が体現している、「リンネル」という雑誌の現実味のなさ
で、さらにページを繰ると、懐かしのFLIP-FLAPがモデルとして登場しているページがありました。2人とも、いい具合にすっかりおっ母さんっぽくなっています(実際にお子さんがいるそうです。しかもどっちか見分けがつきませんが姉は第2子妊娠中)。棒立ち&無表情なところは「リンネル」っぽい雰囲気をうまく出しているのですが、いかんせん頭身がモデル系ではないので、また別の意味でモッサリしています。オシャレきのこか、女優か、おっ母さんか。うーん、どこにも“等身大”のチューニングを合わせたくない!
■「大人への準備」の結論はペン習字
もちろん、ファッション誌に「等身大」は必ずなければならないというわけではありません。どの雑誌も読者モデルばかり起用するようになったら、それはそれでつまらなくなります。だから、「リンネル」は読モ中心の雑誌とは一線を画し、無表情なオシャレきのこで徹底して攻めていってもいいと思います。しかし、それも不安があるのか、たまに「フレンドリー」を挟んでくるからややこしい。それが、芸能人であるミムラだったりFLIP-FLAPだったり、あるいは毎月しつこく付いてくるペラペラのトートや使い道のないポーチだったりするわけです。でも……誰が、ミムラやFLIP-FLAPの登場を喜び、トートやポーチに喜ぶのでしょうか。読者の顔がちっとも思い浮かびません。
今月は、ブックインブックとして「おしゃれも暮らしも“大人”への準備」という特集が組まれています。「リンネル」を読んでいるのはたいてい大人だと思うのですが、ここで言う「大人への準備」は言い換えると「もっと現実を見ろ!」ということです。「おしゃれも暮らしも、もっと現実を見ろ!」。生活感をあえて出したフレンドリー企画の1つです。実質15ページの中に、「年齢に合ったおしゃれを知る」というファッションページ、年金だの保険だのを語った「お金のことをきちんと考え始める」というおカタいページ、マンション購入の話や田舎暮らしの話、一生ものの家具の話、そして最後はペン習字という多種多様な“現実”を盛り込んでいました。あれもこれもと盛りすぎて、結局どれも表層的で、ぬるくてモヤッとしている。とりあえず「こういう企画も入れといた方がよさそうだから、入れてみた」という感がアリアリと見てとれます。
読めば読むほど、編集部の熱と読者の顔が見えてこない「リンネル」。編集部はどういう読者層を想定しているのかが気になります。カネとか数字とかいろんな事情があるのかもしれませんが、とりあえず毎月の付録をやめることはできないんですかね。たまにはいいけど、毎月袋モノばかりいらないでしょ。もうそういうものが求められている時代ではないんじゃないかな、と個人的には思っています。
(亀井百合子)