『ロンドンハーツ』、武井咲と浅尾美和で好対照だった記憶の引き出し方
今回ツッコませていただくのは、4月9日放送分『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)の「出て来いオレの名前~アノ人の何番目芸人~」。
「女性ゲストに番組名をナイショにし、思いつくだけ男性芸人の個人名を挙げてもらう」という内容で、その回答をスタジオにいる芸人が見守り、名前が挙がるとクリアできるというものだ。ゲストは番宣の女優さんでOKという、手間もコストもかからない便利な企画だと思う。しかし、女性ゲストが名前を言えるかどうかだけの内容のため、はたして面白いのかどうか……。
女性ゲストは2名で、一番手は武井咲。意外だったのは、真っ先に「ハライチ・澤部佑」を挙げたこと。理由は「三軒茶屋でバッタリ会った」から。2位以下には有吉弘行、フットボールアワー・後藤輝基、ネプチューン・堀内健、名倉潤が続き、次に出たのは「COWCOWさん」。スタジオで武井の回答を見守るCOWCOWに、笑みがこぼれる。
ところが、山田與志、多田健二の個人名はというと、「名前なんていうんだろう? 田中さん? ほっそい人…………(沈黙)ま、いっか。忘れちゃった」から一転、チュートリアル・徳井義実、ピース・又吉直樹、所ジョージ、ビートたけし、明石家さんま、ダウンタウン・松本人志などが続いた後、23番目に再びやってきたのが、「当たり前体操(COWCOW)しか浮かばない!」。
そして、挙げた名前は「タベさん? あ! ワタベさん?………」。さらに「あ!」とひらめいた後、出てきたのはなぜか「ブラックマヨネーズ!」だった。そこからブラマヨ・吉田敬、小杉竜一、スギちゃん、おぎやはぎ・小木博明、矢作兼、バナナマン・日村勇紀、設楽統などが続いた後、さらにもう一度COWCOWへ戻り、「あ、ヤベさん!」と、ここでもまた惜しいニアミス。
にもかかわらず、「ヤベ」からナインティナイン・矢部浩之へそれていき、岡村隆史、加藤浩次と『めちゃイケ』(フジテレビ系)つながりが続き、なぜかガリガリガリクソン、鉄拳、デッカチャンへ移った後に、再びCOWCOWに戻り、「タベさん」とスタート地点へ。
そこで、スタッフがヒントとして「“タ”はどういう漢字をイメージしてるんですか」と問うと、「多く! ……タ、タ、タカアンドトシ!」と大きくそれていき、堂々巡りを繰り返した後に、正解の「多田」が登場したのは58番目だった。
一方、2番手・浅尾美和は、雨上がり決死隊・宮迫博之、蛍原徹、ダウンタウン・浜田雅功、松本人志、ペナルティ・ヒデ、ワッキー、はんにゃ・川島章良、金田哲、チュートリアル・徳井、福田、フットボールアワー・後藤輝基、岩尾望、バナナマン・設楽、日村、劇団ひとり、キャイ~ン・天野 ひろゆき、ウド鈴木……と、コンビごとに名前を挙げていく。
その後は、「好きな番組」つながりで思い出す作戦に変え、後に「キャラクター部門」でスギちゃん、ムーディ勝山、つぶやきシロー、COWCOW・多田、関根勤などへ移行した。結局のところ、この2人の女性に個人名を挙げてもらう順番が早いか遅いかなんてことは、正直どうでもよい。それは、知名度の差でもなければ、芸人としての鮮度の違いでもないだろうから。
ただ、興味深かったのは、武井咲と浅尾美和の記憶の仕方・引き出し方が、極端に異なるということ。名前の響きなどの連想から、ランダムに単品で引っ張り出し、グルグル同じ場所を逡巡する武井咲の野性的な記憶に対し、浅尾美和の記憶は、大きな幹から枝葉に分かれていくように、秩序を持ってキレイに整頓されているように見えた。
人の記憶の仕方・引き出し方の個人差をまざまざと見せつけられる、画期的な企画だったと思う。だからといって、これが笑いにつながるのかはわからないけれど……。
(田幸和歌子)