ファッションと読み物の温度差が大きい「AneCan」は、フェミニン・パンクを目指せ!
この読者&広告主によるフェミニン原理主義と編集部による甘辛推進派が対立し、結果、雑誌自体は「迷走」となっているのです。とはいえ、読者&広告主の声を無視するわけにはいきませんので、表紙はエビ・もえ・麗子というフェミニンの権化となるし、誌面も代わり映えしない内容となる原因に。
ここで無邪気に提案したいのは、「AneCan」はこのままフェミニンを極めろ! ということです。ある意味、濃厚なコンサバ・フェミニン好きな人をこれだけ集めている雑誌は希有。きゃりーぱみゅぱみゅも我が道を突き進んでいたことで人気が出ましたし、何事も突き詰めた方が価値が生まれてくるんです。たとえ周囲から笑われようが一心不乱に「ピンクハウス」を着続ける花子(宮川大助・花子)だって、いまやすっかり認められた存在に。「かわいい」「フェミニン」を突き進めば20年後、「AneCan」読者には「フェミニン・パンク」「コンサバ・ロック」など意味不明な代名詞が付けられると思いますよ!
■「見た目で決めつけないで」という『しゃべり場』の声を思い出す
今月号の読み物ページでは、「結婚してわかったこと離婚から学んだこと」が目を引きます。先に紹介した「AneLADY100★2013、105人全員登場!」では読者の6割が未婚だと書いてあったのに、結婚を前に離婚の話を始める「AneCan」。最近、看板モデル・押切もえの自己啓発好きが読者や編集部に感染し、かなりシビアな話題が多くなってきた「AneCan」においては、結婚を考える時に反証材料として離婚も知っておくということなんでしょうか。
結婚・離婚ごとに女性読者4人、夫・元夫が3人ずつ登場し、さまざまな事例が紹介されてます。それぞれのケーススタディを見てみると、カフェからスティックシュガーを持ち帰るほどのどケチ夫だった、義母の過干渉と夫の浮気というWパンチに遭った、イケメン&できる男は実はモラハラ夫だった、という女性側の言い分のほかに、サークルのマドンナだった妻に家庭をないがしろにされた、妻からの暴言&DVに苦しんだ、という男性の告白もあり、さながら某巨大掲示板のような展開に。いくら「AneCan」読者の見た目が現実離れしているからって、読み物ページがシビアすぎるわ……。
そう、「AneCan」は近年、ファッションページと読み物ページの温度差が大きいのです。著述家・湯山玲子氏による連載「アネサー道場」も今月号のテーマは「嫉妬心との付き合い方」と題して、個々に人生の優先順位が異なる30代をどう生きるか、温かくも厳しい言葉が並んでいますし、押切もえの対談連載では小説家・江國香織が「人生の正解は欲しくてもないんだと思う」と語っていますし、もう“夢見る少女じゃいられない”という布石が打たれています。女性にとっては出産期限が迫りくる30代、結婚・出産・育児・離婚など待ったなしの日々で、とうとう「AneCan」も「自分磨きぃ~」と、うかうかしていられなくなったということなのでしょうか。コンサバファッションに身を包んだ「JJ」「CanCam」読者が上昇婚できたのも、もはや昔。今はファッション=内面性の表現ではなく、フェミニンなファッションでも厳しい現実に向き合い、反骨精神を持った女性が多いのです。これこそまさに「フェミニン・パンク」「コンサバ・ロック」! やっぱり「AneCan」はこの路線を貫いた方がいいように思います!
(小島かほり)