カルチャー
『男の壁』刊行記念インタビュー【後編】

「セックス信仰が強いと女は不幸になる」工藤美代子氏が語るこれからの性のあり方

2013/04/02 19:00

――本書の中にも不倫相手がEDになり「人生の終わり」と深刻に悩む女性が登場しますが、そこまで悩む必要はないと。

工藤 彼女も、「私は相手の家庭を壊すようなことはしない、割り切って付き合っている」と口では言っていましたが、本当は結婚願望が強かったんだと思うんです。だから、相手のEDは自分の存在証明が揺らぐことだと悩んだ。しかし、その後不倫相手だった男性と結婚して、EDも含めてあらゆることを許すことができました。

――女性は必ずしも性欲だけでセックスを求めているわけではないんですね。

工藤 もちろん、女性の中にも快楽のためにセックスを求める方もいらっしゃるでしょう。ただ、日本女性の多くは性欲よりも情緒で求めているところがありますね。カナダに長く住んでいたある男性は、「カナダやアメリカの女性は自分がなぜセックスをするかをわかっている。快楽か、相手を愛しているからか、2人の関係を築くためか。日本の女性は情緒過多で、モヤモヤッとセックスするから、後がやっかいでかなわん」と言ってました。確かにそうかもしれない。自分が何を求めているかわからないから、セックスに愛情や結婚など、過剰な期待をしてしまうんですね。通常、男性はソープランドに行って相手に愛情や結婚を求めないでしょう?

――逆に、セックスをしなくてもカップルが成立するいわゆる「草食系」というケースもここ数年の若い世代に見られますが、どう思いますか。

工藤 それはそれでいいと思います。私が若い頃、お友達がセックスしている中で、自分が処女だと「このまま人生終わるのかな」と不安になったものでした。今になって思うと、セックスで自分が救われると思い込んでいたんですね。それでエネルギーや時間を無駄にしてきた気がします。私たちはそういう世代。今、その世代がおばさんになって、同じことを言ってるんです。「ちゃんとセックスをして死にたい」「このまま女の人生が終わっていいんでしょうか?」と。「いいんじゃない」と思いますね(笑)。

――最後に、まだ現役世代である若者へメッセージをお願いします。

工藤 セックスは、メールや電話といったコミュニケーションのうちの1つぐらいに思っておいた方がいい。男性も女性も、セックスすれば相手のことが全部わかる、愛し合えると思い込んだり、人生が開ける、自分が変われると思ったりしない方がいい。セックスはすべての解答でもないし、解決法でもないと私は思っています。
(構成/安楽由紀子)

工藤美代子(くどう・みよこ)
1950年東京生まれ。チェコスロバキアのカレル大学留学後、カナダのコロンビア・カレッジ卒業。著書に『悪名の棺 笹川良一伝』『絢爛たる悪運 岸 信介伝』(幻冬舎)、『快楽 更年期からの性を生きる』『炎情熟年離婚と性』(いずれも中公文庫)などがある。

最終更新:2013/04/12 15:03
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