「セックス信仰が強いと女は不幸になる」工藤美代子氏が語るこれからの性のあり方
――『男の壁 ED患者1130万人時代を生きる』(幻冬舎)に対する反応はさまざまだったそうですね。
工藤美代子氏(以下、工藤) 女性や、30代の若い男性は、いずれ我が身に起きることかもしれないので「読んでおきたい」と好意的に受け取って、「面白い」と言ってくださいました。ところが、60~70代の方たちはみごとに拒絶反応でしたね。ある雑誌で、この本についての対談を企画していただいたんですが、対談相手として依頼した有名なかっこいい男性作家さんは「これは俺が出るテーマじゃない、嫌だ」とお断りになりましたし、各雑誌の編集長に本をお送りしても、いつもは「本届いたよ」とお返事をくださるんですが、今回は一切無視。もしかしたら、「女が興味本位に書いた」と思われたのかもしれません。
――中高年男性にとっては、EDは触れられたくない話題なのでしょうか。
工藤 さあ、わかりませんね……。一方で、中高年男性の多くは、いつまでも妻とセックスしていることは「みっともない」という感覚もあるようです。若い愛人に対しては「現役」であることを自慢するおじさんがたくさんいますが、「カアチャンとは何年もしてない」と、聞いてもいないのに言うおじさんもたくさんいます。家庭内ED、つまり奥さんに対してだけEDであることは当たり前という感覚があるんですね。中高年男性独特の性の意識だと思います。
しかも平気で「うちには時々着物を着るブタが1匹いる」なんてことを言う。「ちょっとお待ちください。あなたが倒れた時におしめを取り替えてくれるのは、そのブタさんですよ。それを考えたらそういう口は聞けないはずでしょう?」と私はいつも怒っているんですが。
――それじゃ奥さんがあまりにかわいそうですね。
工藤 本当に、「ブタ」と呼ぶのはひどい話ですよね。でも、こんな本を書いておきながら言うのもなんですが、私自身は、セックスはそんなに大事なことでもないような気がするんですよね(笑)。
――工藤さんは中高年の性をテーマに数々のルポを発表していらっしゃいますが……。
工藤 たかがセックスじゃないですか。女性の多くは、セックスをしたら「自分は愛されている」と思い、逆に相手がEDになったら、「愛されてない」「自分は女として機能していないのではないか」と不安でいっぱいになる。男性が若ければ多少それもあるかもしれませんが、年配や延々セックスしてきた相手なら、そりゃEDにもなってもおかしくないでしょう。「そんなことで悩まないでよ」と思ってしまうんです。セックス信仰が強いと、いくつになっても女性は不幸になります。セックスをしていれば、「相手は自分のことを愛している」と思うのは大間違い。全然そんなことありません。だって、男はお金で女を買う動物ですよ。