ビヨンセは直感頼り、カニエは芸術性重視。セレブデザイナーの勝敗の要因は?
■ジェイ・Z
妻のビヨンセのファッション・ライン経営者としてのセンスはイマイチだとされているジェイだが、ジェイ自身は、ファッションブランド「Rocawear」で、本業のラップを超える売り上げを稼ぎ、一財産を築いた。
ジェイがブランドを立ち上げたのは1999年のことで、誰もが気軽に手を出せるファッションを提供。衣服だけでなく、バッグ、帽子、ベルト、ジュエリー、サングラスやメガネ、靴やスニーカーなどなんでも取り揃えており、コレクターになる常連も続出。年間売り上げ7億ドル(約65億円)を超える名ブランドとなった。ラッパーは儲かるという概念を植えつけたジェイだが、実はブランドで財を成したのである。
■ショーン・コムズ
東海岸のヒップホップ界を支えている重鎮、P・ディディことショーン・コムズは、ラップとスタイリッシュなファッションをコラボレートさせ、成功を収めた人物である。彼が「ショーン・ジョン・Inc」を立ち上げたのは今から15年前の1998年。紳士シャツ、ジャケット、パンツにスーツなど、ハイクラスのクロージングを手がけ、たちまちヒットした。ランウェイの評価もよく、デザイナーとして一目置かれるようになったショーンは、04年、ニューヨーク生まれの若手ファッションデザイナー、ザック・ポーゼンのブランドに投資。08年にはアメリカンカジュアル・ブランド「オールド・ネイビー」のドーン・ロバートソン社長を引き抜き、自身のブランドの運営を任せるなど、「ファッション界でいかに儲けるか」を念頭に行動するように。年間売り上げ2億5,000万ドル(約24億円)を誇る一大ブランドへと成長させた。
香水レーベル「アイ・アム・キング」をプロデュースするなど、ファッション界で手広くビジネスを行うショーン。昨年12月、バングラデシュの提携工場で大火災が発生し100人を超える死者が出るという痛ましい事件が起こった際には、哀悼のコメントを出さずに叩かれたが、セレブデザイナーとしては今なお高く評価されている。
■カニエ・ウエスト
キム・カーダシアンと熱愛中で、彼女の服を選ぶ姿がリアリティ番組で紹介されたことが話題になった、ラッパー/音楽プロデューサーのカニエ・ウエスト。男性のラッパーやミュージシャンがクロージング・インを手がけることは珍しくないが、女性専用のクロージング・ラインを立ち上げたのはカニエが初めて。2011年10月1日にパリ・ファッションウィークでお披露目した時は、ファッション業界からも大注目された。
カニエはブランドを設立する前から、フェンディやルイ・ヴィトンとコラボした経験を持ち、ジバンシィのクリエイティブディレクターを務めたことのあるリカルド・ティッシやクリスチャン・ディオールのアーティスティック ディレクターを務めたラフ・シモンズを尊敬していると発言。ファッションにはこだわりを持ち、コンサートでフィビー・フィロがデザインしたセリーヌの女性用シャツを着ていたこともある。芸術的な才能は、音楽だけでなく、ファッションでも発揮されているのである。
カニエ・ウエストの名前をそのままつけたブランドは、包帯をグルグル巻きにしたようなドレスや、胸元が大きく開いたタイトなクロージングが主流。セレブからも比較的好意的に受け止められている。なお、彼のブランドは大衆向けに販売することを目的としてはおらず、ハイファッションとして発表することを目的としているようだとも伝えられている。
■グウェン・ステファニー
「ノー・ダウト」のボーカルとしてデビューしたグウェン。「ハラジュク・ガールズ」という名のバックアップダンサーを引き連れるほど徹底した原宿マニアな彼女は、2003年に「ハラジュクと南部アメリカにインスパイアされた」というファッション・ブランド「L.A.M.B.」を設立。これまでなかった“ポップでキュートでカッコイイ”デザインで売り上げをぐんぐん伸ばし、年間9000万ドル(約86億円)稼いでいると報じられている。
また、グウェンは先日、スポーツウェア・ブランド「バートン」とタッグを組んで、ストリート・ファッションとしても楽しめるおしゃれなスノーボード・ウェア・コレクションを手がけることを発表。値段も手ごろで、こちらもかなりの売り上げが期待できそうである。
ほかにも、スーパーモデルからヒップホップなファッション・ブランド「Baby Phat」を立ち上げ、その後、「KLS」「Kouture by Kimora」「Fabulosity」の3ブランドを世に送り出し、デザイナーとしての能力が高く評価されているキモラ・リー・シモンズ。愛娘ローデスと共に「マテリアル・ガール」を立ち上げたマドンナ、大勢のハリウッド顧客を持つファッション・スタイリストでファッションブランド「Rachel Zoe collection」を立ち上げると同時に大ヒットとなったレイチェル・ゾーらも。
「スパイスガールズ」で一番歌っていないメンバーだったヴィクトリア・ベッカムは、デザイナーとしては超一流で、今や、ニューヨーク・ファッション・ウィークの常連。年間1億ドル(約96億円)近くを売り上げており、11年には「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に輝くなど、「デザイナー、ヴィクトリア・ベッカム」として認知されている。