[女性誌速攻レビュー]「日経ウーマン」4月号

「先輩の女子力のなさ」を告げ口、学級会と化す「日経ウーマン」投書コーナー

2013/03/28 21:00

■ウーマン信者の「告げ口」根性

 ところで、「日経ウーマン」には「WOMAN’S TALK」という読者の投書コーナーがあります。病気・失恋・仕事のトラブル・介護等のシリアスな悩みを書いてくる読者が多いのですが、いくつかの投書には、その内容にちなんだ川柳が付されているのがこのコーナーの特徴です。しかし「SNS上の人間関係に疲れている」という内容の投書に添えられた川柳が、「距離感が 大切なおとなの お付き合い」というように、この川柳、とにかく何の捻りもおかしみもないのです! 今回、「転職活動で焦らず自分の熱意を伝えたら正社員になれた」という投書には「ゆっくりと 自分の熱を 伝えてく」という川柳が添えられていましたが、この川柳だけ見たら、職場中に風邪を移してしまった人の懺悔的な投書なのかと思いますよ。

 毎号毎号、投書も川柳もつっこみどころ満載な本コーナーですが、今回最も引っかかった投書は次のようなものでした。

「職場の先輩の女子力の無さが気になっています。年中、黒のパンツに黒っぽいトップスを着ていて、言葉使いや仕草も乱暴。彼女とは話す機会も多く、プライベートでも仲がいいのですが、彼女の女子力のなさがうつっている気がして怖いのです。(後略)」

 出ました女子力。「日経ウーマン」が昨年秋に「女子力」総特集を組んで「マナー」や「自己肯定」を提唱していたのは記憶に新しいですが、「女子力」=女性が身につけなくてはならない力、と思い込んでしまっている読者がやっぱりいるんですね。


 この文面からでは判断できませんが、この先輩、ただ身なりや振る舞いにあまり構っていないというだけで、人に迷惑をかけたりしているわけではなさそうです。親しくしている投稿者なら、そんな表面的な部分以外の先輩の良さを沢山知っているはず。真に女子力の高い女子は女子力の低い人に感化されてダメな方に流れたりしないし、ましてや女子力の低い人を悪く言ったりはしないですよね。

 それなのに「女子力」なんていう曖昧な観念で他人を評価し、あまつさえ「自分にもうつっているかも」なんて不安を抱き、それを投稿してしまう。ウーマン読者は、先生や親の言うことが常に正しいと信じ、その言いつけ(この場合は「女子たるもの、女子力を磨くべき!」という教え)を破る別の女子のことを「Aちゃんが○○していません!!(私は言われた通りちゃんと○○して頑張っているのに、おかしい)」と告げ口する小学生女子の「学級会」メンタリティから、まったく成長していないのかもしれません。

■スピリチュアルかハンドメイドか、迷走するバッグ事情

 「読者640人のバッグ&中身の最新トレンド」では、読者のお仕事用バッグの値段やブランド、色形や中身についてレポートしてくれています。しかし、堅実で実用性重視の「日経ウーマン」読者のお仕事バッグですから、「最新トレンド」を謳えるほど流行に左右されている感はありません。バッグのブランドもノーブランドがぶっちぎりの第1位です。また、去年はバッグの値段平均が2万5,129円だったのに対して、今年は2万1,628円となっており、読者の苦しいお財布事情が垣間見られます。

 そんな読者たちの神経を逆なでするように、「開運バッグを拝見!まねしたい!」のコーナーでは、開運セラピスト・紫月香帆さんがエルメスのバーキンを堂々と披露。読者たちのノーブランドバッグとは桁が2つ3つ違いますよ。まねしたくてもできません! しかしそのバーキンの持ち手に、人との御縁を結ぶ意味を持つという変なピンクのスカーフを惜しげもなく巻いてしまう開運セラピスト……残念すぎます。そしてもちろんバッグの中の財布は金運アップのゴールド。パワーストーンも複数常備。読者がこの方のまねをしようと思ったら、ブランドではなく、スピリチュアル路線から攻めるしかなさそうです。


 異空間な開運バッグ拝見の後には、「100円ショップで見つけた バッグの中にしのばせておきたい便利グッズ特集」「手作りグッズでバッグを個性的にカスタマイズ」という、読者を一気に現実に引き戻す貧乏企画が。端切れを使ったリボンやコサージュって、ウーマン読者のきちんとファッションや地味なメイクと相性最悪だと思うのですが。バッグのカスタマイズなんかで他者との差異化をはかるのは森ガールや原宿系の女の子にまかせて、「日経ウーマン」は資格取得や仕事で「個性」を磨き自己実現を目指していてくれた方が、よっぽど安心できます! というわけで、安定の特別付録「一生役立つ!!『資格&学び』ガイド」に目を通して、今月のレビューを終えたいと思います。
(早乙女ぐりこ)

最終更新:2013/04/12 15:04
『日経ウーマン』
学級会で意気揚々と告げ口してたあの子を思い出す