『イロモネア』で光った庄司智春、実は天然どころか緻密な知能犯?
今回ツッコませていただくのは、3月20日に放送された『ウンナン極限ネタバトル! ザ・イロモネアSP』(TBS系)で見せた、庄司智春(品川庄司)の意外な(?)能力。
世間的には、コンビ間の「デキない方」であり、「ミキティー~~~~~(絶叫)」と「裸」しか芸がないと思っている人も多そうな庄司智春。でも、『あらびき団』(同)あたりから、「実はピンの方が面白いんじゃないか」という気がうすうすしていた。それも、「天然」でなく、意外にも緻密に計算されていそうな気がしたのだが……今回、それが気のせいではないと確信した。
ランダムに選ばれた5人の観覧客を笑わせる全5回のステージにおいて、庄司の挑戦は、この番組の特性を知り尽くした構成になっていたからだ。
まず誰もが気になるのは、庄司の唯一の持ちネタに見える「ミキティー」と「裸」を、いつ、どのタイミングで出すかということ。1stステージでは「一発ギャグ」をセレクトした庄司だったが……。開始直後にスーツを脱ぎ始める庄司に、(早くない?)というざわめきが起こる中、たった10秒で、伝家の宝刀(?)を炸裂。
「ミキティー~~~~~~~!」
唯一のネタを、1stステージの、それも開始10秒で使ってしまう潔さ。この先、大丈夫か。うやうやしくスーツを着直す庄司は、紳士的で、それだけでもう十分可笑しい。
続いて、2ndステージ「ショートコント」では、「ふざけんな!」といきなり怒り、服を脱ぎ始め、大の字に寝転んで……「ミキティー」を誰もが予想したところ、意表を突く一言。
「撮ってみろ、グーグルアース!」
3rdステージ「モノボケ」では、応援用の黄色いポンポンを床に置き、引っ張りながら一言。
「レディー・ガガさ~ん!」
「黄色いポンポン=レディー・ガガの頭」というボケ自体よりも、なぜかレディー・ガガに「さん」が付いてるだけで、面白いから、なんだか不思議だ。
4thステージ「サイレント」では、10秒ほどヘンな踊りをして場内をシラけさせた後、階段を素早く駆け上り、そこから「無」の表情でただゆっくり降りてくるというボケを披露。この「動」と「静」の見事な使い分け。芸術的ですらある気がする。
そして、ラストステージ「モノマネ」では、「長渕剛で『TBSの番組』を歌ってみる」を披露したのだが、笑いを取れずに敗退。しかし、残り時間がわずかになっても慌てず、1つのネタだけで突き進む姿勢には美しさも感じた。それにしても、庄司は、この番組の特性を本当によく知っている。瞬間的に笑わせなければいけない同番組において、まず有利に働くのは、芸人が「旬」で「好感度」「勢い」があること。その点、庄司はいずれも持っていないと思うのだが、大声で登場した後、うやうやしくネタのデカいメモを取り出して、周りの芸人たちにツッコまれることにより、場を温め、「見守る」空気を作り出していた。
また、芸達者な芸人が玉砕していくケースが多い中、庄司は瞬間的な笑いにつながりやすい「シンプル」なネタのみで、巧みに「不意打ち」し、「動」と「静」を自在に操っていた。おまけに、時間に追われてもうろたえない「ハートの強さ」も武器だろう。
ああ見えて、庄司は実は知能犯じゃないかと思うのは、買いかぶりすぎだろうか。
(田幸和歌子)