「アポロが月から連れてきた少年」アイドルたちの名(迷)キャッチコピー
昔からアイドルを売り出す方法の1つに、「キャッチコピー」がある。現在、国民的アイドルになっているAKB48は「会いに行けるアイドル」。そして、ももいろクローバーZは「週末ヒロイン」。AKBは、専用の劇場や握手会などで身近に接することができるアイドルとして、ももクロは学業優先で週末に活動を行っているアイドルとして、それぞれキャッチコピーがつけられたわけだ。
このようなアイドルのコピーは、一体いつ頃生まれたのだろうか。70~80年代のアイドル黄金時代に量産されたのは間違いないだろう。天地真理(61)の「ソニーの白雪姫」、山口百恵(54)の「大きなソニー、大きな新人」、松田聖子(51)の「抱きしめたいミス・ソニー」、石川さゆり(55)の「コロムビア・プリンセス」など、当時はレコード会社の社名を冠にしたキャッチコピーがあった。
その一方で、薬師丸ひろ子(48)の「ひろ子という字何度ノートに書いたっけ」、浅野ゆう子(52)の「ジャンプするカモシカ」、キャンディーズの「甘いキャンディーのような女の子達」、ピンクレディーの「初恋の味」、中森明菜(47)の「ちょっとエッチなミルキーっ娘」など、デビューするアイドルの特徴をひねりにひねって生まれたものも。
時代を反映したコピーもあった。日本の人口が1億人を突破した頃には、「一億人の……」「一億円の……」といった言葉が付けられたアイドルもおり、昭和30年代の高度経済成長に沸いた“神武景気”にデビューしたのが、当時丸山明宏と名乗っていた美輪明宏(77)で、そのキャッチコピーは「神武以来の美少年」だった。
日活映画の全盛時にスターだった石原裕次郎(享年52)の「タフガイ」、小林旭(74)の「マイトガイ」、宍戸錠(79)の「エースのジョー」、また東宝のスター加山雄三(75)の「若大将」は、その時代における憧れの男性像を示すようなキャッチコピーがつけられた。
ついでに、アポロ11号が人類で初めて月に着陸した年にデビューしたピーター(60)の、「アポロが月から連れてきた少年」という、「宇宙人か?」と突っ込みを入れたくなるようなキャッチコピーもあった。
演歌ファンとしては忘れられないのが、先日亡くなった作詞家・石坂まさをさん(享年71)が手塩に掛けて育てスターにした、演歌歌手の藤圭子(61)。今は、宇多田ヒカル(30)のお母さんとして知られる藤のキャッチコピーは、「演歌の星を背負った宿命の少女」だった。デビュー曲「圭子の夢は夜ひらく」の歌詞にあるように「十五、十六、十七と 私の人生暗かった」という藤にぴったりだと思う。
そのほかにも、「微笑少女」「平成の股旅野郎」「国民のおもちゃ、新発売」「つまさきまでまぶしい15歳」「ちょっと大物」「おキャンなレディ」など並べてみたらきりがない。一見意味不明なものも多いアイドルのキャッチコピーだが、売れれば「実に絶妙だ」と思えてしまうから不思議だ。暇があったら、歴代のアイドルのキャッチコピーを調べてみるのも、面白いかもしれない。
石川敏男(いしかわ・としお)
昭和21年11月10日生まれ。東京都出身。『ザ・ワイド』(日本テレビ系)の芸能デスク兼芸能リポーターとして活躍、現在は読売テレビ『す・またん』に出演中。 松竹宣伝部、『女性セブン』(小学館)『週刊女性』(主婦と生活社)の芸能記者から芸能レポーターへと転身。