女子たち、「オバタリアン」から図々しく厚かましくなることを学んで!
40、50歳になった時、どんな女性になっていたいのか。生き方がさまざまに細分化され、ラベリングされつつある現在の中高年女性の生き様に、「どれも違うんだよな」と首をかしげる女性に向け、「オバタリアンを目指しましょう」と強烈なメッセージを送る1冊がある。おネエ精神科医・Tomy氏の『悩める女子たち、みーんなラクになれるわよ!』(大和出版)は、女性の悩みに寄り添い、時に突き放し、しかし最後には心のコリをときほぐす、絶妙な按配の内容だ。その中で、「オバタリアン」は女子にとって救いの道だと語る真意について、また「ルックスは消耗品」と説くその胸中を伺った。
――Tomyさんは、若い頃に見た目のコンプレックスに悩んでいたとあります。ゲイという見た目至上主義の側面もある世界をどう感じていましたか?
Tomy氏(以下、Tomy) ゲイの人って、享楽的なところが多くて、浮気という概念もあまりないし、その場その場の恋愛を楽しむようなタイプが多いのね。そういうところだと、若い子の方がモテる。それで、モテることに価値をおいて、毎日を享楽的に生きてても5年もたてばおじさんになっちゃうの。そういう子たちを見ながら、アテクシもモテる子をうらやましいと思いつつも、何か違うなと思っていたの。
――「ルックスは回数券と同じ」とも書かれていますね。
Tomy それはゲイバーのママが言ってた言葉なんだけどね。そう、若さや見た目が価値を持つのは男も女も5年くらいよ。10~20代前半で勘違いして方向性を間違えちゃうと、その後やっていけない。人生なんて80年よ? 顔の良し悪しだけで自分のすべてを決めつけてしまうのはあまりにバカバカしい。顔の良さなんて、標準に近いかどうかの評価で、年取ったらみんなシワくちゃになるの(笑)。そうなった時の価値って、周りの人を幸せにできるかどうか。「自分をブス」と思ってると、表情や内面もブスになってしまうけど、笑顔や表情は、努力すれば誰でもできることだから。
――内面を変えるのは、相当難しいことですね。
Tomy 内面を変えられることは救いよ! 外面は素質が必要だから、手術までしないと変えられない。内面は、厳しいかもしれないけど、いくらでも自分の心がけ次第で試せるから、ある意味ラクなことなんです。ブスな性格は変えられるけど、顔って根本的には変えられないのよ。変えられないことに固執するんじゃなくて、変えられることを見ましょうよ。
――Tomyさんが診察している中で、女性の悩みの傾向はありますか?
Tomy 最近は、「新型うつ」と呼ばれるものや適応障害ですね。個人的には「新型うつ」はないと思ってるんですけどね、それは長くなるので今回は端折ります(笑)。また、適応障害というのは、環境と自分が一致していない、適応できていないから起こるものです。例えば、職場が変わったり、恋人に振られたことがきっかけでね。共通して言えることは、「自分と他人の関係をどう扱うか」がテーマになっているということですね。これは、他人を気にしないことが対策になるんです。
――本にもある「鈍感になりましょ」ってことですか?
Tomy そう。他人が言ってくることを全部真に受けてたら、自分が右往左往してしまう。例えば、調子が良い時って、たまたま周りに嫌な人間がいない状態であって、自分にとって嫌な人が周りに現れると、調子が悪くなって幸せな期間が終わってしまう。そこでの問題点は、周りの人間に振り回されるという自分のあり方。自分に自信を持ってないから潰れちゃうの。ただの悪口しか言ってこない人なのか、自分のために言ってくれているのか、それを判断できれば迷わないから。素直さと柔軟性だけじゃなく、自信も必要です。
――女性の生き方として「オバタリアン」を提案していますが、良いイメージで語られる存在ではないですよね。
Tomy オバタリアンは、笑い者の対象として流行ったところもある。でも、本当に嫌なもの、不愉快な存在だったら、流行らない。バブル時代で、女の表面的なところに目がいっていた時代に、オバタリアンっていう「母ちゃん」を笑うことで、何か大切なものを忘れないように笑いの対象にしてたのかなって思うの。
――女性がオバタリアンから学べることとは?
Tomy オバタリアンって強い。守るべきものがあるから強いんです。自分のためというよりは、他人のために、子どもや家族のために図々しくならなきゃやっていけないところがある。疲れたから、電車のシートにお尻ひねりこんで場所確保したりとかね。今座っておけば、足腰を大切にできる。帰ってから家族のために夕食も作らなきゃいけないし、他人の目なんて気にしても仕方ないの。自分のために守るべきものが見えていれば、図々しく厚かましくなっていいのよ。だから、オバタリアンになりましょって。別に年を取らなくても、守るべきもののために意図的に鈍感になりましょう。
――年を取ると、コンプレックスが軽減されてラクになるとも書かれてます。
Tomy 10~20代は感情に振り回されてばかりで、実は自分のことを考えてないの。楽しいことに引っ張られて、「本当に幸せなことは何か?」なんて頭にないでしょ。でも、年を取ると感情がラクに、なだらかになる。冷静に判断できるようになるのね。だから、年を取るとラクよ~。まず、若い頃は記憶力がいいからいつもでも忘れることができないけど、忘れるようになるし(笑)。悲しいことに対しても、楽しいことに対しても感情が薄れていく。それに、年を取ると、見た目の評価が減ってくるから、より内面が重要になってくる。それが一番いいことね(笑)。
――年を取ることが希望に思えてきました! 最後にコンプレックスや人間関係で自分のことだけで頭がいっぱいになってる女性に一言お願いします!
Tomy どんな時でもどーにかなるわよ! これは自信を持って言えますよ。
Tomy(トミー)
精神科病院勤務を経て、現在はクリニックに常勤医として勤務する。オカマキャラで相談に乗るブログ「ゲイの精神科医 Tomyのお悩み相談室」が注目を集めている。著書に『アンタたち治るわよ!』(講談社)『おネエ精神科医のウラ診察室』(セブン&アイ出版)など。