「女子っぽい芸人」の茶番の中、1人本物感を発揮していたロバート・馬場
今回ツッコませていただくのは、2月21日放送分『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「女子っぽい芸人」。リーダーを務めるのは、元Bコース・ナベだが、番組冒頭でMCの雨上がり決死隊に「リーダーがちょっと不安」「リーダーが圧倒的に知名度ない」といじられていた。
そんなリーダーの周りを固めるのは、藤本敏史(FUJIWARA)、高橋茂雄(サバンナ)、徳井義実(チュートリアル)、岩尾望(フットボールアワー)、井上裕介(NON STYLE)、などの中堅芸人。さらに、ゲストに「対極」の“男っぽい芸人”としてケンドーコバヤシを迎えるなど、頼りないリーダーに手厚い「保険」をかけ、番組からのお膳立ても万全である。
しかし、ナベが番組序盤で行った“女子っぽいタイプ”の説明は、「性格:すぐクヨクヨする、嫉妬深い、一度嫌いになると受け入れない」「行動:情報交換や相談が好き 世話好き」といった普通すぎるものばかりで、早々に挫けそうになってしまった。でも、おそらくこの後に面白エピソードが続くのだろうと思っていると、真面目にこんな解説が続く。
「女子がどうでもいい会話続くのが、なんでかっていうと、肯定肯定を重ねるから。男子だと『いや、だけどな』って否定で入るから、(女子は)しゃべる気なくなるんです」
この聞き飽きるほど耳にしてきた説に対し、頷くでもなく、否定するでもなく、生ぬる~い拍手が会場を包む。確かに、こういうのって「女子のコミュニケーション」独特だから、新鮮味はなくとも企画的には合っているのか。さらに、ナベはこんな説も唱える。
「ホントに寂しいときは、寂しいって言えない」
まあ、確かにそういうもんかもしれないけど、だから何なのだ? さらに、続くのは、フット岩尾の「最近太ってきた。『ブサイク』はビジネスだけど、『デブ』はビジネスでやってないから言われると傷つく」という関係のない話や、フジモンの「ニーハイブーツ履きたい」とかいう「オネエ」発言、NON STYLE・井上の「メンズエステやパックをする」という単なる「ギャル男」発言などなど……。
中でも、一番苦しそうだったのは、リーダーである元・Bコースのナベと実妹がかつて付き合っていた徳井だった。「みんな寝静まってから妹のシルバニアファミリーで遊んでた」みたいなエピソードも、「女装コントしてる時は、女装としてでなく、女芸人として見てほしい」とかいう妙な主張も、「女子っぽいアイテム」として持ってきた「陶器。クッキー焼いて入れたり♪」というよくわからないプレゼンも、どれもこれも「女子っぽさ」からは空回りしていて、ただ空しさだけが漂う。
もしかして、Bコースが解散したばかりだから、先輩たちがみんなでバックアップしてあげようという心温まる企画なのだろうか。「オネエタレントが人気だから、ちょっとひねって『女子っぽい』とかでイケるんじゃね?」くらいの知恵を誰かが授けたのだろうか。
この日の出演者は、吉本芸人ばかりだったが、こうした馴れ合い・傷の舐めあいは、吉本興業の良さであり、悪さでもあると思う。
そんな中、ただ1人輝いていたのは、「リアル女子」のロバート・馬場裕之。「レモンって、ちっちゃい時から、ちゃんと(香りなどが)“レモン”なんですよ」という感性も、「女子っぽいアイテム」として持参した、使い込んだタッパーに入った「ぬか床」も、水筒に入れて持ち歩くカモミールティーも、何もかも説明不要のホンモノ感!
馬場ちゃんをリーダーにするか、あるいは、自薦ではなく他薦で「オネエ疑惑芸人」をやったほうが、面白くなったんじゃないかと思うのだけど……。
(田幸和歌子)