倖田來未「ラブリー」カバー論争、小沢健二にとっては「悪い話ではない」?
倖田來未が2月27日にリリースするカバー・アルバム『Color The Cover』。その中の1曲である小沢健二の「ラブリー」について、熱心な小沢ファンから「曲のイメージが台無し」などと批判の声が続出していると話題になっている。15日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で「ラブリー」を披露した倖田來未が、「これ、絶対アレンジしたらめっちゃかっこ良くなるなと思って」と発言したことも、小沢ファンの怒りを買ってしまったようだ。しかし一方で、「倖田來未の方が歌はうまい」「アレンジも合っていると思う」などといった擁護の声もあり、「ラブリー」カバー曲論争は、まだまだ加熱しそうである。
そんな「ラブリー」カバー論争だが、小沢ファンは「批判が噴出するのは目に見えているのに、どうして小沢サイドは倖田にカバーの許可を出したのか?」といった旨の疑問を感じているという。では、「カバー曲の許諾」とは一体どのようなものなのだろうか。
そもそも、カバー曲とは、現在の音楽業界でどういった扱いを受けているのだろう。音楽業界関係者は語る。
「新曲のCDセールスが絶望的な状況の今の音楽業界において、かつてヒットした実績のある名曲のカバーを出すというのは、手堅く売り上げが見込める、お手軽な音楽ビジネスの1つといえるでしょう。楽曲の制作と候補曲の選定が省かれるのも、作り手にとっては楽ですからね」
昔から洋楽、邦楽問わずカバー曲というのは存在しているが、それは「長く活動するアーティストのちょっとした“箸休め”、次のステップに移る際の“気分転換”のようなものだった」(同)という。しかしカバー曲は、今や音楽業界の活性化を担う重要なアイテムとしての位置付けになってしまったようだ。
確かに、昨年11月~今年3月だけでみても、Acid Black Cherry『Recreation 3』、矢野顕子『矢野顕子、忌野清志郎を歌う』、JOY『JOY COVERS』、清水翔太『MELODY』、ジュディ・オング『LAST LOVE SONGS~人には言えない恋がある~』など、さまざまなカバーアルバムがリリースされる状態にある。まさに、カバー曲“乱発”時代とでもいうべき現在の音楽業界だが、自身の楽曲に思い入れのあるアーティストが「カバーされたくない」と意思表示をすることはないのだろうか?
「カバーする側のアーティストを含め、制作者側が『この曲をカバーしたい』と思った際に、まず問い合わせをするのは、原曲の実演アーティストやその事務所ではありません。その楽曲の著作物管理を請け負う音楽出版社に連絡を入れます。そこから、作詞者、作曲者へ連絡をして許諾を得るのです。もし、歌唱・実演しているアーティストが、その曲の作詞・作曲に携わっていない場合、カバーを許す・許さないの権限はまったく与えられません」(同)
「ラブリー」は、作詞・作曲とも小沢自身が行っている。もちろん、カバーを許可しないということもできたはずだが、「それでもカバーを断るケースはほぼありえない」(同)そうだ。
「なぜならカバーされることで、原曲のアーティストに傷が付くというケースはほとんどないからです。また、そのカバー曲がヒットした際には、音楽出版社だけでなく、作詞者、作曲者にも印税が支払われるのですから、そのチャンスをみすみす逃すことはないでしょう。ただし、洋楽のアーティストの許諾は意外と厄介なようで、例えば『歌詞を日本語に変えてカバーしたい』といったリクエストは、ほとんど通らないと聞きます」(同)
今回、良くも悪くも注目を集めた倖田の「ラブリー」だが、その分『Color The Cover』の売り上げにつながるという面もあるだろう。それで、印税を手にすることができ、さらに、自身の楽曲が再び聞かれるきっかけにもなったのであれば、「小沢にとっては決して悪い話ではない」(同)のかもしれない。
しかし、聞き手側がすでに、カバー企画の安易さを見透かしているのも事実。今後、このカバー曲ブームがどうなっていくのか、注意深く見ていきたい。