AKB48、CDバカ売れの陰で、新人アーティストは「初回プレス50枚」の現実
日本レコード協会(RIAJ)の発表によると、2012年度のCDやDVDなどの音楽ソフトの生産実績が、2年連続で前年度増を記録したことがわかった。これにより、金額でも10%増の3,108億円となり、1998年以来14年ぶりに前年を上回ったという。シングルやアルバムCDがミリオンセールスを連発した時代は過ぎ去り、「レコード業界冬の時代」といわれる昨今、久々に明るい話題となった。
しかしそんなニュースの一方で、凍りついた音楽市場では、かつては考えられなかったある“異変”が起こっているという情報をキャッチした。
昨年度CDの売り上げランキングトップ10が、6、7位に嵐、その他すべてがAKB48と関連グループで埋め尽くされたというニュースは記憶に新しい。また11位以下を見ても、30位のEXILEまでは、すべてジャニーズとAKB48で埋め尽くされている。もはや「CDが売れるアーティスト」は完全に限定されてしまい、特に新人アーティストともなると、ランキングからは蚊帳の外となってしまっている。
「先日ソニー・ミュージックエンタテインメントからデビューすることになった新人アーティストですが、CDの初回プレス枚数はたったの50枚だったそうです。これはつまり、CDのヒットや売上などはまったく視野に入っていないということ。今は、音楽配信が主流ですし、それでもあえてCDを作ったのは、CDジャケットを制作するデザイナーや、プレス工場に仕事を与えるためでしょうね。50枚といったら、試聴機用や各テレビ・ラジオ局に配布されるプロモーション版と変わらない枚数で、大型のタワーレコードや新星堂に1枚ずつ置かれれば、すぐになくなくなってしまいますよ。こんな時代にデビューするアーティストは、正直不幸だと感じます」(レコード業界関係者)
かつてノンタイアップの新人の初回プレスというと、およそ3,000~5,000枚というのが相場だった。しかし現在は、その1/100程度の枚数しか作らないというのだから、もはやインディーズどころか、路上アーティストの見本盤や、身内で交換するため作られたオリジナルCD-Rのような感覚だ。
「それでも昨年は増収に転じたというのだから、業界全体が『当たると約束されたもの以外には力を割かない』姿勢でいるのでしょう。ソニーで、近年でも活動している人気アーティストといえば、奥田民生やYUKIなどですが、彼らの売上でもプラスに持っていくことは不可能なのかもしれません。また一般的にはあまり知られていませんが、嵐が所属するレコード会社『ジェイ・ストーム』は、独自の流通ルートを持たないため、ソニーが流通を担当しています。『もしジャニーズが独自で流通を持ちだしたら、ウチは倒産しかねない』と苦笑する関係者もいるほどで、同社はここの収益に頼っているというのが現実だそう」(同)
もはやレコード業界に春が訪れることはないのだろうか。