中村獅童がMC卑弥呼でノリノリ! 名曲揃いの歴史番組に見たNHKの本気
<中村獅童がひたすら歌って踊って歴史を教えます!>
この謳い文句だけで、いろいろ想像がふくらんで、すでにかなり面白い。中村獅童が歌って踊る、しかも「ひたすら」。どういうことなんだろうか。
これは、NHK Eテレで放送された『歴史にドキリ ロワイヤル・スペシャル』の謳い文句だ。この番組、元日の夕方6時からの放送枠だったというところでも、その「面白み」が高まる。豪華な正月特番の裏で、NHK Eテレでは獅童が「ひたすら歌って踊って」いたのだ。
この素晴らしい香りプンプンの番組は、冒頭から想像以上だった。いきなり黒髪ロングのカツラに赤い口紅をつけ、卑弥呼の扮装をした中村獅童が登場した。アップでニッコリ微笑む卑弥呼・獅童。すごいインパクトだ。それが狙いなのだろうけれど、女形もこなす歌舞伎役者とは思えないブサイクさに、面喰ってしまった。
そして、「私は卑弥呼、邪馬台国の女王」と、いきなり踊りながら歌い始める獅童。「くに」の成り立ち、米作りが始まりなどを歌い、曲が終わったところで……
「……卑弥呼です」
と、語り始めた。そして、
「みんな、紅白見た?」
と、まずはお茶の間の関心を引く。かなり気さくなんだな、卑弥呼さま。
今回は、この卑弥呼・獅童がMCを務める音楽番組ふうの設定で、日本の歴史の重要人物をランキング形式で紹介し、紹介された偉人が歌って踊りながら自分のやってきたことを紹介していく内容だ。
「出よ、私の後輩たちよ。シャラ~~ン!」
シャラ~~ンと言っちゃうくらい、MC・卑弥呼はノリノリだ。「ランキングといっても、さっそくバラしちゃうと、基本的に時代が古い順よ」と卑弥呼の説明が入り、20位の「聖武天皇」から、19位の「藤原道長」、18位の「紫式部」と、時代順に紹介が進んでいく。
肝心の楽曲は、「式部、式部、紫式部」というリフレインが印象的な紫式部の曲や、「天下統一、ファイヤー!」というシャウトが熱い織田信長の曲など、耳に残って思わず口にしたくなる、わかりやすさ満点の名曲揃い。
ちなみに全ての曲は、ヒャダインの手によるもの。曲もところどころブルーハーツふうだったり、C-C-Bふうだったりする。豊臣秀吉の曲なんて、関白という役職を取って「関白宣言(秀吉流)」というタイトルがつけられ、内容は完全にさだまさしのパロディ。「言っておきたいことがある~」というそのままの歌詞だった。北里柴三郎が北島三郎ふうになっていたのは、名前が似ているからだろうか。そんな遊びも含めて、バラエティ豊かだ。そしてそれを、次々歌い・踊りこなす獅童の器用さにも、あらためて感心する。
調べてみたところ、この番組は、小学6年生を対象にした社会科学習のための番組なのだそうだ。獅童は通常放送でも「歌って踊って」おり、今回はそのスペシャル版として、総集編の体裁を取って放送されていたのだとか。こんな面白番組を知らなかったことに、ちょっと後悔。
一見、獅童のやりたい放題の番組のように思えるが、NHK Eテレの教育番組ゆえ、一曲覚えれば、その人物についての知識が結構ちゃんと得られる。例えば、源頼朝の場合、ご恩と奉公で、土地をあげる代わりに、「いざ鎌倉」という時には、馳せ参じろとか、御家人制度が鎌倉幕府の土台となっていることなどが、ちょっと少年隊ふうの曲の中に盛り込まれている。1時間足らずのこの番組を見ているだけで、日本史の復習ができてしまうのだ。子どもの頃、この番組があればよかったと、ちょっと本気で思った。さらに、ところどころに大河ドラマや歴史スペシャルドラマの映像らしきものが挟み込まれるのも、さすがNHKといった感じ。そう思うと、衣装も大河ドラマで使用された一級品のように見えなくもない。
個人的には、15位の北条時宗が歌うアニソンロックのような「元との戦い」、9位の近松門左衛門が歌う三味線の入った和風テクノに合わせてロボットダンスや人形浄瑠璃までもが登場する「ああ愛しきは 江戸の・世・PEOPLE」がよかった。
ランキングが次々に発表され、2位の睦奥宗光&小村寿太郎が登場、いよいよ1位を残すのみとなった。流れ的には、戦後の偉人なのかと思いきや、MC卑弥呼から告げられたのは、まさかのあの人物だった。
「私でした~!」
お前かよ、MC卑弥呼。
「どう考えても、私が一番最年長じゃない」
このムチャクチャな理由付け。卑弥呼、腹立つわぁ、と思ってしまっている時点で、もう獅童・卑弥呼の思うつぼだ。
「私、おめでとう~。そして、ありがとう」
「キラキラキラ」という効果音と共に、再び「ブサイクな」卑弥呼・獅童の笑顔のどアップ。やっぱりむかつく。しかし、なんだかんだで、卑弥呼・獅童のトリコになってしまったようだ。
(太田サトル)