サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビューラブママが大幅リニューアル カルチャー [女性誌速攻レビュー]「I LOVE mama」2月号 「I LOVE mama」になにが? ギャルママ会報誌からオシャレ雑誌へ 2012/12/20 16:00 女性誌速攻レビューI LOVE mama 「I LOVE mama」2013年2月号(インフォレスト) 今、筆者は非常に戸惑っています。ギャルママたちのバイブル「I LOVE mama」が今月から大幅にリニューアルされました。タイトルが整然と並べられ、すっきりと見やすくなったその表紙からはまったくラブママ臭が漂ってきません。書店で手に取った時、「saita」(セブン&アイ出版)と見間違ってしまったほど。どうやら編集長交代を機に、テイストを180度変えてしまったようです。メイクにもファッションにもレシピにも、「これぞラブママ」というムードは皆無。今月は、少々悲しい気持ちでレビューを書かなくてはならないようです。 <トピックス> ◎年末年始イベントごはん ◎専属・準専属がぜーんぶ使ってみました!! 冬のHOTコスメレビュー ◎種類も豊富!“フラットシューズ”は神です。 ■“過剰”こそがラブママの神髄だったのに…… 先月は「盛りクリ特集」をウキウキウォッチングしていたのに、まさか1カ月でこんなに落ち込むことになろうとは……とりあえず大特集「年末年始イベントごはん」を見てみましょう。キャッチには「お正月といえばおせちという常識を覆す! オシャレで華やかなおめでたメニューがてんこもり♪」とありますが、ラブママ界の「常識を覆す」(=オレオをオニギリに入れる、ミッキーマウス型のブリ大根を作る)に比べたら、「清楚なあの子が色つきリップ塗ってきた」くらいの変化。むしろ、これまでの「I LOVE mama」が作り上げてきた常識を打ち破っています。 料理ページのみならず、ラブママにはいろいろな形で登場してきた「コスプレママモ」の影が一切ありません。例えば「AKC学園~“ア”イラブママ的、“基”本中の基本の、“ク”ッキング」では、制服コスプレしたママたちが「ここがポイント」「お袋の味でパパのハートをゲット!」なんて吹き出しと共に随所に登場していたものです。この一見ムダとも思える過剰な演出がラブママのキモであったはずなのですが、今月号はその宝をバッサリと切り捨てています。「nina’s」(祥伝社)風余白を生かしたページデザイン、いかにもプロが施しました的(今までもプロがやっていたでしょうが)なテーブルコーディネート、並べられる料理も「カリフォルニアロール風お寿司」「プリプリエビのカクテル」「サラダ仕立ての牛たたき」「ひらひらしゅうまい」……全然フツー、フツー過ぎる! 「ママ友たちと囲むパーティーごはん」に至っては「白身魚のハーブフライ」「ビーンズサラダ」「簡単アヒージョ」ですよ。なんですか、ババアの女子会ですか。これまでラブママが愛用していた、ホットケーキミックスもポテトチップスも電子レンジも使わない。何より「これで材料費たったの○○円!」という表記もない。あるのは「※クレジット表記のある商品は全て ○○代官山店」の商品です」という広告……美ママたちの料理にかける思い「安く、盛って、カンタンに」が一切伝わってこない、これでは単なるママ雑誌の料理ページではないですか。いや、そうなんですけど。 ■まぜこぜが生んだ連帯感を分離した! 続いて皆様に訴えたいのは、「専属・準専属がぜーんぶ使ってみました!! 冬のHOTコスメレビュー」というページです。聞き慣れない「専属」「準専属」という言葉ですが、ラブモ(ラブママモデル)を「専属」、ラブママ24を「準専属」と位置付けているようです。そういう扱いであることは重々承知していましたが、敢えてそんなふうに呼ばないところがラブママの良さだったんですがね。読者、ラブママ24、ラブモ……ヒエラルキーをはっきりさせないからこそ連帯感を生んでいたと思うのは、筆者がもう「坊主憎けりゃ」状態に陥っているからでしょうか。 ここでも、あくまで主役は商品たち。おしゃれに物撮りされたコスメグッズが並び、ママたちは小さな写真とコメントのみです。さらに取り上げられた商品が「クレンジング6930円」「化粧水3790円」「オールインワンゲル4725円」と明らかに高価。100均命のラブママとしては信じられない高級化粧品ばかりが登場しています。「今なら送料無料」などのコメントも不信感に拍車をかけます。 「SHOP別売り上げ上位コスメ編」で、ようやくドン・キホーテやダイソーの名前が出てくるのですが、これまたステキイメージで物撮りされておりまして、かえって悲しい気持ちにさせられます。もちろん「クレンジングオイルのかわりにシャンプー」など驚きのテク満載の「読者ママのオススメ美容法」も、ここにはございませんでした。 「種類も豊富! “フラットシューズ”は神です。」というファッション企画では、普通の女性誌のように靴の写真がズラリ。モデルたちは商品のイメージとして、ちょこんとそこにいるだけ。こんなファッションページも今までラブママでは見たことがありません。「カジュアルモードor大人ガーリーな冬服30days」に至っては、アイテムの組み合わせに終始してストーリーもなし。“着回し○○days”という女性誌テッパンの企画を機械的に組み合わせただけの、カタログのようなページです。「ホントにお得な時短家電」も「2013年アイラブママ的トレンドヒット大予想!!」も「インフルエンザ予防に効果テキメン♪4大栄養素はコレっ!!」も、どれもこれもただただ商品をすっきり見やすくおしゃれに並べているのみで、読者ママたちのアンケートもコメントもありませんでした。本当にしつこいようですが、リニューアルというより雑誌自体がすっかり変わってしまったようです、「I LOVE mama」。 企画自体にストーリーを持たせ、キャッチやデザインで遊び、モデルたちも自由にのびのびと主張していたファッション&美容ページ。読者ママたちのアンケートを吸い上げ、彼女たちが抱いている悩みや葛藤に寄り添ってきた読み物ページ。ラブママは確かに泥臭いし、いろんなもの詰め込み過ぎだし、目がチカチカするし、決しておしゃれな雑誌とは言えません。新生「I LOVE mama」はそういう側面を意識的に排除し、誰からも受け入れられる雑誌を目指したのでしょう。 しかし「I LOVE mama」は、ギャルママたちの会報誌。編集部のオススメよりも、隣のあの子がこの冬買ったアイテムが知りたいのですよ。「節約」も「盛り」も「ちびコ愛」も、“ウチらみんながんばってるよね”と褒め合いたいのです。古くて汚くていい雰囲気だった飲み屋が、経営コンサルタントかなんかに丸め込まれて急にキレイなビルに建て替えられちゃったような残念さ……大事なことは、なくして初めて気が付くものなのですね。 (西澤千央) 最終更新:2012/12/23 16:24 Amazon 「I Love mama」 ぜんぜ~んラブママの良さをわかってないね!!!! 関連記事 「I LOVE mama」マタニティブルー&産後うつ特集に見る、若さへの偏見ミッキーマウス型ぶり大根に見る、「I LOVE mama」の食文化「I LOVE mama」がデコ弁を捨てて、料理の基本に戻った「AKC学園」ギャルママ界の「ママ友地獄」の扉を開いた、「I LOVE mama」3周年記念号「I LOVE mama」の"盛りぃークリスマス"は小公女セーラの匂い 次の記事 森光子さんの晩年秘話 >