「婦人公論」貯金特集に登場、競艇で3億円負けた男・坂上忍の名言
今号の「婦人公論」(中央公論新社)は、年末年始の合併号、盛りだくさんの内容です。特集内には荻原博子×倉田真由美の対談、インタビューには麻木久仁子、小林幸子、酒井法子、寄稿文に岩井志麻子の「佳苗、美代子、美由紀……。毒婦と化した女たちの“共通点”」と、話題の女性が大集合しています。
特別付録は、「2013 瀬戸内寂聴 12カ月 金言シール」。瀬戸内寂聴の福々しい笑顔(篠山紀信撮影)とともにメッセージが12カ月分書かれています。「3月 100点満点の人間なんてもしいたら気持ち悪い( ̄▽ ̄) ニヤ」「11月 たまには自分にもご褒美の贅沢をあげよう( ̄▽ ̄) ニヤ」といった具合です(顔文字は筆者が加筆)。用途について、「手帳やカレンダーなど、目につくところに貼れば、見るたびにほっとしたり、力が湧いてきたり――」と書いてありましたが、小さいのに迫力がありすぎて、目につくところに貼る勇気がないので、ベッドの裏にでも貼ろうと思います。おふだかよ!?
<トピック>
◎特集 大増税に負けない! 「貯まる家庭」になる
◎ルポルタージュ・時代を創る女たち 浜野佐知 ピンク映画の反逆児
◎噂のウラをとってきました!! 熟女AVブーム到来! 私の出演料はいくら!?
■これでも“名子役”と呼ばれていたらしいですよ
まず、みなさんにお伝えしたいことは、“「婦人公論」は油断して読んではいけない”ということです。先ほど「話題の女性が大集合」と書きましたが、実は、それ以外にとんでもない爆弾が特集内に仕掛けられていました。特集のテーマは「大増税に負けない! 『貯まる家庭』になる」。どうすれば貯金できるか、節税できるか、細かいノウハウが書かれています。読んでいると、自分の計画性のなさにがっかりし、心底情けなく、真っ暗闇の未来が怖くて叫び出したくなります。本当に本当に自分がかわいそうになる特集です。そのつらさに耐えてじっくり読んでください。そして、読んでいくと……坂上忍のインタビュー「大晦日恒例、僕の身清め大勝負」という記事に辿り着きます。
坂上は、毎年大晦日に東京・平和島の競艇場へ行くそうです。そして、その年の有り金全部を賭けにつぎ込んでいるんだとか。有り金全部! です。勝ったら翌年は仕事をせず南の島で遊び暮らし、負けたら働く。過去20数年で勝ったのは3回ほどで、トータル約1億円強。負けは、なんと3億円にのぼるのだそうです!!
「競艇場の雰囲気って醜いんですよ。でも、そこが大好きなんだなあ。僕も含めて、来ている人たちがホントに醜い」
「大晦日になるとそのヤバさは最高潮になります。なんといっても集まってくる面々が、鬼気迫っていてすごい。ほかのギャンブルよりも、生活かけてやってる人の割合が高いんですよ。なぜか、頭に鏡餅をのっけてるオッサンもいたりして(笑)。きっとみんな、最悪な、ツイてない1年を送ってきたんだな。でも今日、ここで勝つことができれば、すべてひっくり返せる。そんなイベント、ほかにあります? 最低最悪を一気に最高にしてやる、と血迷っている人たちが集結しているので、場内は異様な熱気です。その心の醜さといったらハンパじゃないですよ」
「もっと醜く、もっと浅ましくなりたい。徹底的に浅ましい人を見ると、素直に負けた、と思う」
あまりにスリリングなインタビューだったので引用が長くなってしまいましたが、これはぜひとも全文を読んでいただきたいです。できれば特集の最初から読んで、自堕落な自分を省みて、落とすところまで落としてから、ここに辿り着いていただきたい。落ちたところは水たまりなのに、底なし沼だと思いこみ大騒ぎした自分のちっこさ、浅はかさがわかることでしょう。人間は、深くて暗くて哀しくて、そしておもしろい。「もっと醜く、もっと浅ましくなりたい」。こんな言葉、常人には言えません。個人的に今年イチの名言です。このインタビューを貯金特集のトリに掲載した「婦人公論」、危険すぎます! なめたらあかん。
■AVは生きている証し!?
22歳でピンク映画の監督としてデビューし、42年間でピンク映画400本弱、一般映画4本を撮影した女性監督の草分け、浜野佐知のルポが掲載されています。男性中心の業界で、「“女の目線”で女にしか撮れない映画を作ってやろうと」走り続けた女性。男性監督にはない特徴として、女性の股間のアップ、“パンフェラ”というパンツの上からするフェラチオ、口内発射された精液をキスして男性に口移しにする“ザーメン返し”があるそうです。
別のページには、サイゾーウーマンでもおなじみ神林広恵さんの連載「噂のウラをとってきました!!」で、熟女AVブームが取り上げられています。38歳で子宮がんのため全摘出手術を受け、「もっと恋愛がしたい、セックスがしたい!」という衝動を悟り、緊縛のモデルやAV出演を経て、現在はAVプロダクションを経営している女性。「私にとってAVは、妊婦さんがマタニティヌードを撮るのと同じ感覚。生きているその瞬間を映像で残しておきたかったんです」と語る30代後半の人妻。2人ともお金以外の目的でアダルト業界で働いている女性です。
浜野佐知も熟女AV女優もセックスを扱うという共通点はあれど、それぞれの背景や抱く思いは異なります。だから、こうして並べてしまうのは短絡的かもしれませんが、しかし、端から見て無謀に見え、理解されにくい世界に生きていることは事実です。そこに自分を賭けるとは、どういう心境なんだろうと、記事を読みながら想像してみるのですが、想像したところで実際はよくわかりません。わからないからおもしろい。「婦人公論」を読むと、かっこつけたりキレイごとを並べたりしない、醜い姿も欲望もむきだしにして、裸一貫で生きる人々の一端が垣間みられます。自分に装い疲れたら、「婦人公論」を読んでみてください。
(亀井百合子)