寝ている子どもを預ける!? 失敗かもしれない親目線の保育園づくり
「駒沢の森こども園」は親目線で作った保育園なのですが、実際に経営してみて、親目線は不要だったり、子どものためにはならなかった事柄がいくつかあるので、書いてみたいと思います。ご家庭での育児や保育園に預ける時の参考にしていただければと思います。
■木のフォークやスプーン
使ってみると口当たりがよすぎるのか、おしゃぶり感覚なのか、フォークの先端をガリガリ噛んで割ってしまう子どもが多数。また、木の製品は表面のコーティングが剥がれると水分を吸収するので、カビの原因となるため、結局すべて破棄。現在はプラスチックのフォークとスプーンを使用しています。木の箸は、噛む年齢の子どもは使わないので問題はありませんでした。
■机の角のスポンジ
赤ちゃんがいる家庭でよくやっていますが、机の角にぶつかった時、ケガをしないようにスポンジみたいなものを両面テープでつけていますよね。保育園の机も全部つけていましたが、1歳児がケガをしないようにつけたはずが、1歳児によって全部剥がされてしまったのです。現在はきれいに取り外していますが、オープンしてからいままでの間、机の角に頭をぶつけるような事故は1件もありませんでした。それと同様、コンセントカバーなるものがベビー用品店などで売っていますが、異物をコンセントに入れたり、指を入れたりするような危険な行為は一度も発見したことがありません。家庭で考えられるような事故は、保育園では意外にも起きないのです。年上の子を含むたくさんの園児とともに生活する中で、安全に遊ぶことを自然と学んでいるのでしょう。
■ベビーベッド
1歳からお預かりの保育園なので、必要はないかも? と思っていましたが、家庭では1歳でもベビーベッドに寝ている子どももいるので一応購入しました。やっぱり、使いません(笑)。現在はおもちゃ置き場と化しています。1歳の誕生日から登園する子どもも多いですが、入眠はおんぶやバウンサーでして、それから布団に移すのが定番です。それも1カ月すると、自分から布団に入って寝るようになるのが、保育園マジックってとこでしょうか。
■自由登園、自由降園
専業主婦のお母様も気軽に預けられるよう、営業時間中であれば何時に来ても構わないようにしています(事前予約が必要)。美容院や歯医者の予約時間、上のお子様の幼稚園お迎えなどに合わせて、ほかの園児がお昼寝している最中でも受け入れをしています。専業主婦の方は、「40時間プラン」を選ばれている方が多く、きっちり40時間利用しようとするせいか、昼寝をしている子どもを抱っこして連れてきたり、無理やり昼寝から起こして来たり……とにかく母親都合で預けてきます。私なら「いま昼寝をしているので、30分遅れて登園します」と電話するのですが、そんなことは考えもしないのか、平気で「ハイ」と渡してくるのです。意外でした。子どもからすると、家のソファーで寝ていたのに、目が覚めたら保育園だから大泣きしますよね。泣く子をあやすのはこちらの仕事なので問題はありませんが、子どもに配慮しない母親が多いという事実に驚かされます。
また、幼児教室や習いごとに通わせてから来るお子さんがいるのですが、昼寝をしていないせいか、来た途端大泣きして、昼寝をするようなこともあります。3歳ぐらいなら体力もあるので耐えられる子どももいますが、2歳なら昼寝の時間を考慮した上で幼児教室や習いごとに通わせないと、ちょっと無理があるのではないでしょうか。お母様の目的はうちの園でおやつを食べ、アクティビティに参加することだったのですが、結局寝ていて参加できませんでした。おやつは起きてから食べさせましたが、昼寝がずれこむことで生活リズムが崩れ、それこそお受験には影響があるのでは? と思ってしまいます。仕事の都合ならまだしも、お母様の時間のやりくりで子どもに無理させるのはちょっとね。私が子どものためを思い一番に考えすぎるせいか、そりゃー、イラッとくる母親もいますよ。子どもに無理させない範囲で、自由登園してほしいです。私も園長も大きなプラスとなっているのは、育児経験があること。だからこそ、気になるのかもしれませんね。
角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では4歳の愛娘の子育てに奮闘中。