叩き上げのおしゃPからお嬢様へ、「JJ」改革の鍵を握るのは “ママ”!?
現在「JJ」(光文社)にレギュラー登場しているのは、おなじみ紗栄子、なぜか吉川ひなの、JJ読者の等身大アーティスト西野カナ、そしてブロモの面々です。そんな中、今月の「JJ」で、ひっそりと最終回を迎えた連載「モリモトのモト」。アパレルブランド「KariAng Park」のプロデューサー・森本容子によるコーディネート講座ページです。森本は、いわゆる「おしゃP」と呼ばれる存在。「おしゃP」とは「おしゃれプロデューサーズ」の略で、「JJ」による造語です。アパレルデザイナー、プレス、プロデューサーなどの職業につく彼女たちは、「JJ」読者の憧れの存在として、2010年夏頃から「JJ」誌上で押されに押されまくってきました。しかし、最近その「おしゃP」の存在が、「JJ」誌上で消えつつあるのです。今の「JJ」に何が起こっているのか。詳しく見ていきましょう。
<トピック>
◎森本容子主宰「スタイル美人塾」 モリモトのモト
◎大学生のちょっぴり大人な通学コーデバイブル
◎ドキッ(はぁと)女子大ガールズの合コン→デート変装テク!
■「おしゃP」とは何だったのか
「おしゃP『今日のコーデ』200!」「おしゃPの『帽子テク』を盗めっ!」「おしゃPは前髪が命です」「三井智雅ちゃんの『おしゃPフォロー』顔」「高園あずさちゃんは『今日もおしゃP風』」「<22ページ大特集>これがNEW STYLEのすべてだ!吉田伶香 大全集」「『私らしさ』って、ひとつじゃない!おしゃPだって男受け!おしゃPだから女受け!」「『これ買っておけば間違いなし!』byおしゃP 激売れアウター100 全部着せて見せまSHOW!」……これは、今からちょうど1年前の「JJ」2011年12月号の目次です。全企画おしゃPに頼りきってます。ところが、2012年2月号の「NEWアイコン4人組が誕生!ブロモの時代だ! 」を皮切りに「おしゃP」の扱いは徐々に小さくなっていき、今月号の目次では、ついに「おしゃP」という言葉は消え去ってしまいました。この1年の間に一体何があったのでしょうか? 今号最終回の「モリモトのモト」ですら、彼女が「おしゃP」だという事実には一切触れられず、「森本さんが最後に伝えたいのは、スタイル美人になるには一番シンプルな色を味方につける、ということでした。」という一文で締めくくられる巻末見開き2ページ扱い。
そもそも「おしゃP」は、手に職を持って男性顔負けにバリバリ仕事をし、でも女性としておしゃれの手を抜くこともなく、悩みながらも頑張っている女性たち。個人個人にスポットがあてられ、どちらかというとヤンキー気質で、中には昔はヤンチャして高校も中退しちゃったけど、心を入れ替えてアルバイト店員からはいあがって今では自分のブランド持つまでになりました! なんて子もいたりして、けっこう泥臭い雰囲気が漂っていたように思います。当時の巻頭グラビアはAKB48が飾ることも多くありましたが、ここでもまた、AKBの「泥臭く頑張る」というイメージを、「JJ」で押し出そうとしていたような気がします。
しかし最近の「JJ」は、前々回、前回と見てきた通り「お嬢様気質」に完全路線変更! 「私たち、頑張らなくてもオシャレも恋も学歴もお金も最初から全部持ってるもーん♪」という、悪気のないセレブ感が漂っています。が、ここで、もしかすると「JJ」は、路線変更したというより、「女子大生」ブランドというかつての路線に戻って再び輝こうとしているのでは……? という疑問が浮かびました。というのも、今月号で特集を組まれている新JJモデルの岩崎名美ちゃんの「お母さんが若い頃いつも買っていた雑誌だって喜んでくれた!」という発言に、ピンときたんですよ。
今月のメイン特集「大学生のちょっぴり大人な通学コーデバイブル」からも明らかなように、「JJ」は女子大生向けの雑誌。そんな彼女たちの母親世代といえば、「女子大生」というブランドを振りかざしバブルを謳歌していた世代です。
ママと仲良しな、現在のJJガールたちは、洋服を買いに行くのもハワイや韓国への海外旅行もママと一緒。ちょっぴりハイブランドなアイテムも、おねだりしたら買ってくれるし、体育会サークルの彼との恋路や憧れていたアメリカ留学だって応援してくれちゃう! JJガールのキャンパスライフは、ママの後ろ盾がなければ成立しません。
突然行われたかのように思えた「JJ」の脱・おしゃP改革ですが、かつて「女子大生」であったママたちの思惑が絡む、必然の流れだったのかもしれません。平成の世に「女子大生」というブランドの価値がどれだけ通用するかは謎ですが、母娘2世代に渡る女の業の行方は気になるところです。
■ OLにケンカ売ってる……これでもかの「女子大生」押し!
しかし、「女子大生」と一口に言っても、今月の目次を見ると「帰国子女系『9月入学生』」「体育会系『女マネ』」「四女(大学四年生女子の略)」「女子大ガールズ」「ミスコン候補」「キャンパス有名人」「就活黒髪」と、さまざまな切り口で女子大生が細分化されています。大学生文化圏にいない人には通じない言い回しばかりだと思うのですが、まあ、きっと最初から非読者層として切り捨てているのでしょう。
そんなニッチ企画ばかりの中、今月号で見ていきたいのは「このギャップで男子はコロリ(はぁと)ドキッ(はぁと)女子大ガールズの合コン→デート変装テク!」です。「合コンでは王道の白系ワンピでチームの平均点をあげる」「騒ぐのは共学生に任せ、あくまでもしとやかに高嶺の花」「遊びの恋はいらない。大切に育った女子は大切に扱われるべき」など「女子大」ならではの掟は興味深くもありますが、「合コンには大人っぽい格好、デートにはカジュアルな格好をして行き、ギャップで落とす」「男の子ウケを狙って少年漫画を一夜漬け」など紹介されているテクニック自体は目新しいものではありません。
それよりも気になったのは、「女子大にいられるのは4年間のみ。OLにはできない格好をすべし」という文言です。OLに、誌上で堂々とケンカを売っています!! 「ヘルシーな脚見せで若さを演出して、年下ならではの魅力をアピール」って、そのキャッチ露骨すぎます。そういえば、先に挙げたメイン特集のファッションページでも、「OLが多いお料理教室」に行く時は、「大学生らしい可愛らしさと清潔感を両立」とか「まだまだ残りの学生生活を楽しみたい気持ちもあるから100%OLスタイルにはしない」とか、言葉の端々から毒気を感じました。
「Miss JJ」や「名古屋嬢」の投入(※前号参照)など、雑誌内における女同士の争いだけではなく、雑誌の枠を越えてまで争いを仕掛けていくなんてアグレッシブすぎます。オシャレも恋も学歴もお金も最初から全部持ってたら、もうすでに女として勝っていると思うのですが、その上「若さ」という今しかない価値を兼ね備えた「女子大生」というブランドは、今もなお健在なのかもしれません。でも、それを切り札にするのって、ちょっと捨て身すぎやしないですか? 合コン企画ページの下段で繰り広げられる、メンズたちの密談コーナーでも、合コンで出会う女子大生たちに対して「就活したくないから、永久就職狙い!?って思っちゃう」という発言がありました。「JJ」誌上での争いに敗れてしまった、叩き上げの「おしゃP」陣に思いを馳せて……今月のレビューを終わります。
(橘まり子)