もはや“一発屋”生産番組? オーディション番組が乱立する韓国テレビ事情
2012年も残すところあと2カ月。K-POP界も年末の音楽賞の賞レースが、そろそろ気になる頃だ。今年の新人賞の最有力候補は、3月にファーストアルバム『Busker Busker』をリリースしてデビューした3人組のバンド“Busker Busker”(バスカーバスカー)。GAONという韓国音楽サイトの2012年上半期のアルバムランキングを見ると、1位のBIGBANG、2位のSHINeeと、日本でも人気の顔ぶれが並んでいる中、Busker Buskerは7位に食い込むという大健闘ぶり。彼らが世に知られるようになったのが、『Super Star K』という人気オーディション番組である。2011~2012年放送のシーズン3で準優勝し、メジャーデビューの切符をつかんだ。
2009年から放送が始まった『Super Star K』。韓国におけるサバイバル系オーディション番組の火付け役である。日本ではあまり人気がないが、韓国をはじめアメリカやイギリスなど世界各国で、オーディション番組は高い人気を誇り、そこからスターも誕生している。イギリスのスーザン・ボイルなどが、最も有名だろう。
「韓国では、この『Super Star K』の人気を受け、各テレビ局がサバイバル系オーディション番組を制作しています。歌手を目指す一般人のオーディションから、プロの歌手がプライドをかけて実力を競い合う音楽系、世界に通用する金融人材を育てるといった変わり種まであり、KBS、SBS、MBCの地上波放送局とケーブルテレビ局を合わせると、その数はなんと12番組にもなります」(韓流雑誌ライター)
主な視聴者層は、10代から30代の若者。この年代といえば、“競争社会”の真っただ中で奮闘している世代である。特に10~20代は、その後の人生が決まる大事な時期で、韓国の学歴社会の厳しさは、日本でも知られるところである。毎年、韓国の大学センター試験の日の混乱ぶり(受験生がパトカーに先導されて受験会場に来るなど)は、日本のニュースでもほとんど風物詩のように取り上げられている。
「競争に勝つために日々を過ごしている若者にとって、落第の恐怖と戦いながら、毎週過酷なミッションをクリアしていくサバイバル系オーディション番組は、一種の自己投影となっています。テレビの向こうで歌っている参加者の姿と、自分自身を重ねて見ているのでしょう。また参加者は、若者の中にある『自分もスポットライトを浴びる世界に立ってみたい』という芸能界への憧れを代理で果たしてくれる存在でもある。だからこそ、参加者たちを応援したくなる。それがオーディション番組の人気の大きな要因でしょう」(同)
しかしその半面、オーディション番組のあまりの乱立ぶりに、辟易する声もネットでは多く見かける。番組数が多く、1年に1度のシーズン制を採る番組がほとんどなために、その年に優勝して知名度を得ても、1年後には視聴者の関心は新シーズンに移ってしまい、一発屋で終わる者も多いのだ。
韓国の競争社会の縮小図ともいえるサバイバル系オーディション番組。だが、本当のサバイバルは、その後から始まる。果たして、冒頭に紹介したBusker Buskerも、来年の今頃はどうなっているか。そして、乱立するオーディション番組は、淘汰されていくのか? 今後も注目していきたい。