「保育士はキツい仕事」を打ち破る! ウチの園が働きやすいワケ
最近、保育関連の取材を受けることが多くなったのですが(金払ってないですよー、『ガイアの夜明け』じゃないんだから(笑))、いろんな方に「こちらで働く保育士は幸せですね」と言われるんですよ。経営者として社員のことを考えてやっていることが、どうやらほかの会社からすると普通じゃないみたいで、これが「離職率の低さ」につながっていると納得されます。私からすると逆にほかの保育園事情に驚くばかり。話を聞くと、「先輩が帰るまで帰れない雰囲気」「サービス残業当たり前」「教材を夜遅くまで作らされる」「有給があっても言いだしにくい」などなど、小さい時からやりたかった仕事のはずなのに、いざ働いてみるとキツくて辞めたくなるのが保育業界全般らしいのです。
うちのやり方は、
・基本給が他保育園より少し高い(認可外保育園は雇用保険のみで厚生年金がない代わり基本給が高いところがあります。弊社は設立時に、非加入で給料が多い方がいいのか、加入してほどほど多い方がいいのかを決めてもらいました)
・タイムカードで管理しているので、8時間を超えたら残業代が付く
・土曜日出勤は1時間につき1,000円を加算(土曜日に子どもを預かっても園はほとんど儲かりません)
・賞与あり
・交通費全額支給
・昼食、おやつ付
・有給を言いだしやすい環境(全員消化しています)
・プライベート優先(お子さんの行事やプライベートの大切な用事がある時は、8時間労働に満たなくても問題なし)
・慶弔休暇はもちろんのこと、離婚、失恋、ペットの病気や死も休暇として認める
・保育士の誕生日はホールケーキのプレゼント
素人で保育園を作ったのですから、もちろん顧問社労士と顧問税理士に付いてもらっています。私自身は校了が近づくと徹夜当たり前の出版社しか知らないので、世間の基準を知った上で、どうすれば働いて楽しい会社になるかを考えたら、自然とこんなカタチになりました。常に「自分が働くとしたら」という目を持っていないと、保育士に無理な要求をすることになり、それが原因で子どもたちに影響が出るのが一番怖いんですよ。子どもからすると、せっかく保育士と信頼関係が作れたかと思ったら退職……なんてこともありますからね。うちの子どもが前に通っていた保育園でこのようなことがあったので、保育士はとっても大切です。
特に月齢が低い子どもは保育士がすべてといっても過言ではありません。お母さん代わりですからね。認可・認可外関係なく、保育士が退職続きのため派遣でしのいでいる保育園も多いそうです。なぜ、保育士が辞めていくのかを園が考え、改めないと、離職のスパイラルからは逃れれませんし、子どもたちも退園していってしまいます。
■父・角川春樹を経営者として尊敬しているけれど……
経営者として私は父親のことを尊敬していますが、父のやり方が成功したのは過去の話です。北朝鮮のような恐怖政治で、カリスマか洗脳かわかりませんが、社員に「イヤ」と言わせない押しの強さと、斬新なアイディアと才能を持っていて、昭和という時代も追い風になり、ひとりで突っ走り会社を大きくしていきました。
角川映画は今見ても確かにかっこいいですよ。でも、今それをやっては誰もついてきてくれません。賛同して出資してくれる人さえ見つからないかもしれません。草食化した若い社員は、会社を訴えたり、病んだとして労災認定を受けようとするかもしれませんし、ブラック企業として「サイゾー」のインタビューにしゃべる可能性もあります(笑)。実際、有能な社員は辞めていき、父の指示がないと仕事ができない人ばかりになっているような気がします。現在は規模を縮小してビジネスをしているので、大赤字になることはなく、余生のマネーゲームとしてはちょうどいいサイズで人生を楽しんでいるようですよ。人間の寿命が延びたので、働かないと間が持たないですからね。父は仕事が趣味なので、うらやましい限り。
ある日突然、「保育園をやろう!」と思い立ち、4カ月後にはオープンして、すぐ軌道に乗せてしまうところは、完全に父親の血だなと自分でも笑ってしまいます。このたくましさは、自分の娘にも受け継いでもらいたいなと思いますね。もちろん勝算があって事業を始めたんですよ。負ける試合は最初からしませんし、慈善事業にも興味なし。子どもが好きなだけじゃ続かないのが、保育事業ってものですよ!
角川慶子(かどかわ・けいこ) 1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バン ギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では4歳の愛娘の子育てに奮闘中。