「VERY」ママフェスで大活躍! 「未来のミセスCEO」の正体に拍子抜け
今月も広告たっぷりで景気がいい「VERY」。重量感がありますね。小島慶子さんの連載「コ・ジ・マ・メ・セ・ンのもしかしてVERY失格」では、以前取材した女性教育者が、人によって態度を変えるという人物であったこと、またそういった態度が子どもたちのいじめを誘発するのではという考えがつづられていました。その歯切れのよすぎる批評性にハッとなりつつ、今回は「冬のマタニティママのお悩みに、コンフォートシューズが効く!」という特集から見ていきたいと思います。
<トピック>
◎今日から春まで、素足を出さずに生きていきたい
◎甘トラの母もいる。
◎VERYママフェス2012
■靴に見る「VERY」の女意識
マタニティ期のヒール靴というのは、一般的には履かない方が良いとされてきましたよね。しかし今月号の「VERY」では、マタニティ期でも足元のオシャレがしたいということで、安定感のあるコンフォートシューズが紹介されています。しっかりホールドされているとはいえ9cmのブーツとか、太ヒールとはいえ8cmのパンプスとか……。見ているこっちが心配になってしまうんですが、「母であって妻である前に、女でいたい!」と声高に主張する「VERY」読者にとっては、妊娠中もオシャレしたいということなのでしょう。それをとやかく言われるなんて自由じゃない、解放されてないという、「VERY」の強い女意識が垣間見えます。
世間の意見はどうなんだろうと、気になってインターネットで「ヒール 妊娠」で検索してみたところ、妊婦がヒールを履かないのは、よくいわれる「転倒しないようにするため」という理由のほかにも、「重心が前にくるので、変に力まないように」という理由もありました。まあ、オシャレする心は自由ですから、あくまでも自己責任ということなんでしょうがね……。
■「痛さ」に敏感なポストバブル世代
今月は以前の特集「『ゆるトラの母』がいる!」から続く企画「甘トラの母もいる。」という特集もありました。このページのリード文には「OL時代にA○○C○○(原文ママ)を愛読。その結果得た成功体験と相俟って、やっぱり甘体質は変えられない」とか「独身時代は可愛い服で“モテ”ライフを満喫。母となり、全身ベタ甘な装いはイタいことに気づき」となかなか毒づいています。
この文章からは、そこはかとなく「AneCan」(小学館)を読んでいた女性が母になった時、コンサバの流れを汲む小学館の年齢層の高い雑誌にスライドしないで、カジュアルテイストも取り入れた「VERY」へと流れてきたことへの自負や、「『AneCan』のエビちゃんもえちゃん全盛期のような甘さが、今や過去のものであることは知ってるんですよー」という余裕のようなものを感じます。いいですねー、この漏れ出るプライド。
バブル世代は、自分が20代の頃にはまっていたハマトラ、コンサバファッションを脱却するのに30年くらい必要だったわけで、今になってようやく「この年齢でこのファッションは痛いかも」ということに気づき始めた様子が、「HERS」(光文社)などではよく見られます。
しかし、30代既婚者でほぼ占められる「VERY」読者を含め、バブル世代以降の女性というのは、バブル崩壊後の大不況、つまり「調子乗っていられない時代」を生きて来ました。そのため、バブルほどお気楽で天然にもなれず、自己肯定的にもなれず、自虐的だったり、同性目線のつっこみを気にする人が増えてきたように思うのです。だからこそ、10年もたたないうちに、自分のファッションが年齢にマッチしていないというイタさに気付くことができるのではないでしょうか。
ただ、30代だろうが50代だろうが、やっぱり全盛期の思い出はなかなか捨てられないのが女性というものなのかもしれません。大きなリボンや甘く裾のひらひらしたペプラムカーディガンを着た読者やモデルの姿はやっぱりまったくイタくないとは言えませんが、「好きなら着ればいいんじゃない?」と言って、さりげなく泳がせておきたい気もしてしまいました。
■お気楽な奥様感極めり!
しかし! 泳がせておけないのが、「VERYママフェス2012」のイベント・レポートのページ。この中で、全国から集まった「未来のミセスCEOたち」が会場を熱く盛り上げたという記事があるのです。「未来のミセスCEO」って何? と思う方も多いのではないでしょうか。この「未来のミセスCEO」とは、「起業をするために勉強をしている人なのかな?」とか、「そのために出資を募ったりしている人なのかな?」とか、いろいろ想像をめぐらせてみたのですが、何のことはない、単純にママフェスの会場でフリーマーケットをしている人たちの姿だったのです……。
アクセサリー、つけ爪、ハンドメイドバッグ、シルクフラワー、ソープカービングなどなど、「CEOっていうか、あの、バザーですよね?」と確認せずにはいられません。まぁ、オーガニック食材のお店や無添加食材のお店など、実際にビジネスとしてスタートし始めている方もいるようなので、そういった方に対して何か言うのは申し訳ないのですが、それにしてもなぜに「CEO」という言葉を使いたがるのか。「フリマ」「バザー」という言葉でくくられていれば違和感もないのに、「CEO」という、なんだかよくわからないけどテンションのアガる響きの言葉がつけられることによって、「お店ごっこ」「CEOごっこ」に興じるお気楽な奥様という印象を強めてしまった気がします。
今回の「CEO」もそうですが、奥様たちが何かっていうと「オーガニック」「フェアトレード」「無添加」などの意識の高いキーワードを使い、勝手に気持ちよくなっていることに、げんなりしてしまいました。
(芦沢芳子)