カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「STORY11月号

40オンナに寄り添う「STORY」が、対肩こり・汗じみファッションを提唱!

2012/10/07 16:00
「STORY」2012年11月号/光文社

 ここ最近レビューでは紹介していなかった連載「悩んだらピン子に訊け!」から、今月はスタートしたいと思います。今回のテーマは「仕事のこと」。キレイごとは言わず、全体的にグッとくる回答が多いこの人生相談。

 しかし一番の読みどころは、ちょいちょい差し込まれるピン子センセイのご自慢エピソード。今月も冒頭から「橋田先生にいつも言われんの。『ピン子、あんたは女優じゃなくたって、何やっても大成功してる』って。私もそう思う」と飛ばしてます。そんな“ピン子のピン子によるピン子のためのピン子伝説”が、本来の悩み相談をややこしくさせいることもしばしば。「ちやほやされる対象が20代30代の若い子に移ってしまって虚しい」という、ピン子センセイへのデッカい釣り針としか思えない相談に「『○○先輩みたいな大人の女になりたい』と思わせなさい」と、ごもっともなお答えをしたかと思いきや、突然「私も髪の毛長いときあったけど、あるときばさっと切ったわよ。覚えてる?」と、通行人の喉元にナイフを突きつけるような逆質問を。「フマキラーのCM、人形みたいに綺麗だったでしょ?」センセイ、一体それは何人形……ハイ、心にモヤモヤを残したままではございますが、気を取り直して今月のラインナップを。

<トピックス>
◎悩んだらピン子に訊け!
◎大特集 「今日着る服がわからない!」魂の叫びに愛の回答
◎私たちのCHALLENGE STORY「産まない」という苦い選択が、新しい私の始まりでした 

■養命酒的「STORY」ファッション特集

 ピン子センセイのすっとこどっこい回答に引き続き、今月の大特集「『今日着る服がわからない!』魂の叫びに愛の回答」を見てみましょう。扉に登場するのは、最新のファッションに身を包んだモデル……ではなく、体はイラスト顔だけ富岡佳子。普段は見目麗しいヨッちゃんが、40代女性ファッションあるあるをコミカルに演じています。例えば「見た目の可愛さに惹かれて若者ブランドの肩幅狭めのピーコートを購入。それを着て一日ショッピングを楽しんだらひどい肩こりに。辛くて辛くて夕飯の支度をしながら冷蔵庫の角に肩甲骨をグリグリこすりつけていたら筋を痛めてしまい、翌日病院へ……」や「友達との待ち合わせに遅れ、大急ぎで駆け付けたレストランで、座ったとたんに滝のような汗が。大慌てでニットを脱ごうとしたら、グレーのTシャツに汗染みがじっとり……」などなど。筆者の日常を覗いているのかと思う程の、このシンパシー。

 今シーズンの流行より切実なのは、体型や体調の悩み。忍び寄る冷え性、隠せないむくみ、尋常でない火照りと発汗……「STORY」ではこれらを「オシャレのやる気を奪い取る40代の体の不調」と表現していますが、まさに! アラフォー女性の体調不良を改善しつつ、オシャレも満たすアイテムが多数紹介されています。効果云々はさて置き、大事なのはババア由来の体調不良をファッションでなんとかしようというその心意気。出かけに思い切って履いたヒールを、最寄駅で既に後悔しているのが40代。小泉のKYON2が言い放った「オシャレはガマン」という言葉にがんじがらめになりながら、体調とオシャレを両天秤にかけるのが40代。

 「かわいくあれ」「若くあれ」と願っても寄る年波には勝てないのです。40代では当たり前である悩みを、見て見ぬふりしながら「若い40代祭り」を繰り広げても、結局は冷蔵庫の角にグリグリ肩甲骨をこすりつける現実しか残らない。それが40代のオシャレ離れに拍車をかけないとも限りません。そういった意味で、この特集は「寄り添いのSTORY」として面目躍如だと思います。例えが正しいかはわかりませんが、メーカーの営業が商品の特長を延々と説明する前で、「お客さんが求めているのはこういうこと」と、その商品を床に落として耐久性を確かめたというジャパネットの高田社長を思い出しました。そう、「STORY」とは“快適ライフのパートナー”……。

■「産まない」選択の向こう側にあるもの

 前々回が「40代の子育て」、前回が「40代出産のリアル」、そして今回は、「子どものいない人生」……晩婚晩産時代における40代女性の生き方を考える「私たちのCHALLENGE STORY」。「『産まない』という苦い選択が、新しい私の始まりでした」を今月も紹介したいと思います。

 女優の原千晶をはじめとする7人の「既婚・子どもなし」女性たちが、「子どものいない人生」をどのように選び、そこではどのような葛藤があったのかを語ります。病気で望めなかった人もいれば、長引く不妊治療の末に諦めた人、最初から「産まない」と決めていた人、「子どもなし」という着地点は同じでも、そこに至るまでの道のりは七人七様です。しかし、多くの女性が「子どもを産めなくて(産まなくて)申し訳ない」という気持ちに悩まされ、「今でも超高齢出産の話題を聴くと心が揺れる」のだそうです。

 「ある本の中で、子供を産まないのは、夫や自分のDNAを残さないということ、という一節を目にして、強い衝撃を受けた」という原千晶。「次の世代に命のリレーができないっていうことは大変なことだと思うと、いてもたってもいられなくて」。同じ子どもなし女性に「私も千晶ちゃんと同じ年齢のころ、産むか産まないかで悩んだ。でも、この10年間母の介護をしてきて、ああ、母は私の娘なんだと感じるの。(中略)いつかきっとその穴を埋められるものが見つかるよ」と言われ、「私にも穴埋めできるものが見つかるんだ」と勇気づけられたそうです。

 また別の女性は、病気で子どもが産めないことがわかり、それでも楽しく過ごしていこうと誓いあった夫が浮気。「浮気ぐらいなら許すつもりでいました。でも他の人と一緒になったら、彼は自分の子供を抱くことができるかもしれない」と離婚を決意したんだとか。

 7人の話を読んで見えてくるのは、「子どもを産まない女性に対する外からの圧力」よりも「子どもを産まない自分に対する罪の意識」でした。「女性=子どもを産んで当然」と考えているのはほかでもない、女性自身なんですね。子どもという形でDNAを残さないことが「穴」なんかじゃないし、ましてや夫や両親や社会に「申し訳ない」なんて思う必要もないはず。それは「産みたくても産めない人」だけじゃなく、積極的に「産まない」選択をした人にも、もちろん当てはまることだと思います。

 「50代での超高齢出産が華々しく報道され、ますます“諦めどき”が難しくなった」とはリードの言葉。医療技術も進歩して、「産める」年齢はどんどん上がっていく。お金を出せば可能になることも多くなる。それは希望と同時に「本当に自分はやり切ったのか」という問いをあらためて女性に投げかけることでもあるのです。出産とは本当に「おめでた」いことなのか、ますますわからなくなってきました。
(西澤千央)

最終更新:2012/10/07 16:00
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