女たちが暴走すると男の存在は霞む……女の業に乗っ取られたディズニーランド
ついこの間まで、カ~ッと強い日差しが照りつけてたのに、ここ数日で急に涼しくなってきた。ようやく秋。振り返れば、今年の夏はなんだかどこにも行かないで、毎日毎日「ブス一色」。ブス本エッセイの執筆で、私は首までドップリと、汗だくになりながら「ブス漬け」の日々を送っていた。まさに、ブスが熱い夏。……ああ、思い起こせば、昨年の夏は4人目の赤子を産んだばかりでバタバタだった。それが、1年後には、「ブス仕事」でバタバタ。「ブスが暴れてる」とか「ブスを手玉に取る」など、そんなブスフレーズを炸裂させて、ブスまみれになっていたら、気が付けば秋になっていた。
――ブスと私。
そんなふうに「女の中に潜むブス」と、こんなにも激しく対峙した事などなかったかもしれない……原稿を書いてる間中、我々(ブスと私)は、何度もつかみ合いの取っ組み合いを繰り返し、拳でお互いの頬を殴りつけ、鼻血まみれになった……しかし、最終的には「お前、なかなかやるじゃねぇか」の展開にたどり着き、「貴様と俺」的な関係を築く事ができたように思う。
――ブスと女。
今回のブス本出版は、知人でフリーの編集者S(女29歳)が、色々な所に企画を持ち込んでくれて、それで実現したものである。Sは、かねてから私に「ブス本出しましょうよ!!」と、熱く語っていたのだが……ブスと女。女は何故かブスが「好き」である。このコラムの担当編集Y(女31歳)も、出会い頭に「アビコさん、ブスをテーマにコラム書きませんか!?」と言い、己のブス論を、真面目な口調で語っていたのを思い出す……。一体、ブスの何が、こうも女たちを駆り立てるのか? 先日、取材でお会いした女性編集者は「これ、私が作ったんですけど……」と、ブス・マトリックスなるものを作成して、女のブスをさまざまにタイプ分けしていた(なんかスゴすぎる)。
そう考えると、ブスの世界は奥が深い。それはまさに、冥府魔道のケモノ道。女にとって「ブス」とは、単なる「容姿」の問題ではない、という事を痛感するのだ。
そんなわけで、肝心のタイトルですが。『ブ活はじめます』が宝島社から10月12日発売予定です。……「ブ活」とは、もちろん「ブス活動」の事です。『桐島、部活やめるってよ』(集英社)じゃないけれど「アビコ、ブ活はじめるってよ」と、心の片隅に覚えておいて頂ければ幸いです。
ところで先ほど、テレビのニュースを見ていたら。今日、初めてディズニーランドで「結婚式」が行われたそうである。今回の結婚式第1号は、芸能人でもなんでもない、一般の男女であった。披露宴なども含めて、お値段は750万円との事。これ、高いんだか相場なんだか、私にはさっぱりわからないのだが、ミッキーたちやほかの観光客にまで祝福されるんだから、このくらいが妥当なんだろうか? それにつけても(かなり緊張気味とはいえ)花嫁が発散する、ビームのごとき幸せオーラがハンパない。大好きなディズニーランドで、しかも第1号で結婚式を挙げてるんだから、当然と言えば当然なのだが。そして、そんなウエディングパレードを祝福する、観光客の女たちもまたすごかった。ある意味、花嫁と同じくらいの存在感を醸し出してる。てゆうか、もしかしたら、花嫁よりもスゴい事になってたかもしれない。なにしろ、頭にミニーちゃんの耳のカチューシャをのっけて、口元をハンドタオルで押さえつつ、本気の眼差しで「すんんごい、うらやまし~~~~っっっっ!!!!」という顔でパレードを見守っているのだ……なんていうか私には、その光景が「……その時、ディズニーランドは女たちの業に乗っ取られた」というふうに見えた。花嫁と観光客の女たちが、一体となって、シンデレラ城よりもはるか上に、のぼりつめてる。
「幸せ!!」「うらやましい!!」「アタシもこんなとこで式挙げてくれるような、甲斐性のある男見つけなくちゃ!!」
そんな女たちの思いが、とぐろを巻いて、ディズニーランドの上空を覆っていたんじゃないだろうか。こんなふうに女たちが「暴走」すると、当然なのだが、男の存在は霞む。新郎や、男性観光客の存在感は、ある意味「無い」に等しい。今回、たまたまデートで訪れていたカップルは、一体どんな思いでこの結婚式を見ていたのだろうか?上目遣いで「ねぇねぇ、アタシ達も、こんなふうに結婚式挙げたいネ~~~っっ!!」と、おねだりをするカノジョを前にして「……一体いくらカネかかるんだろ……?」と、戦々恐々とする男たちの姿が目に浮かぶのだが。