2012年に見る『ロンバケ』、山口智子のハイテンション演技がキツイ理由
今回ツッコませていただくのは、9月26日から首都圏で夕方に再放送され始めた『ロングバケーション』(フジテレビ系)。いわずもがな、今から16年前の1996年に放送され、平均視聴率29.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、最高視聴率36.7%(最終回)を記録した、木村拓哉、山口智子主演の大ヒットドラマである。
10月にスタートする、キムタク主演のフジテレビ月9ドラマ『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』(それにしても、ものすごいタイトル)の宣伝のためなのだろうけど、久しぶりに見て感じたのは、90年代半ばのキムタクは、今見てもやっぱり“キムタク”だったということ。ある意味、いつの時代でも変わらないものを提供し続けてくれる、安心ブランドだと思う。
また、ちょっと意外だったのは、稲森いずみが記憶していたよりも若くてツヤツヤでキレイだったこと、松たか子がまだ眉太で野暮ったかったこと。当時はオシャレな感じがした挿入歌がダサく感じられるなど、時代の流れを感じてしまう部分は多々あったけれど、中でも最大の驚きは、2012年現在に見ると最もキツイのが、山口智子だということだ。
当時は、わりと熱心に見ていた『ロンバケ』。可愛くカッコいいと思っていたはずの山口智子が、今見てみると、テンションがビックリするくらい高い! 結婚式当日に相手が失踪してしまい、白無垢で街を全力で走る設定もそうだが、「傷ついているのに、それを見せまいと頑張ってる」感じの演技のテンションの高さが、痛ましいのだ。
今のドラマで、ここまでテンションが高い女優さんは、おそらくコメディでしか登場しないだろう。ただし、テンションの高さだけでいえば、W浅野(浅野温子、浅野ゆう子)の方が絶対値は上だと思うのだが、ここまでの違和感はない。
では、なぜ山口智子のテンションの高さが不思議に見えるのか。それは、おそらく「ハイテンション」とはまったく異なる価値観「ナチュラル」が同居しているからだと思う。「ナチュラル」であることに対して、ものすごく気負いや必死さが感じられて、切ない気持ちになってしまうのだ。
バブル崩壊が1991年だったことを思うと、5年たった当時は、イケイケでいられたバブル期とは違い、不景気の中で空虚さを感じつつ、「ナチュラル」へのシフト変更にあがいていたのかもしれない。
ちなみに、先日、フジテレビの10月改編新番組&特別番組発表が行われ、テーマに「圧倒的に面白くてオリジナリティーにあふれるカッコイイ“クール・メディア” モテる☆フジテレビ」が掲げられたけど……。
常に最先端を走り、イケイケだった時代のフジテレビは、面白かった。正直、昔のような面白さ・パワフルさを取り戻してほしいという思いはあるけれど、90年代のフジテレビの大ヒットドラマを今久しぶりに見ると、あらためて「時代の変化」と現在のズレをひしひしと感じる。今後への不安も相まって、なんだか『ロンバケ』が切なくてたまらない。
(田幸和歌子)