「単なるノイズ・マーケティング」G-DRAGONの“19禁”プロモーションに批難の声
BIGBANGのリーダー、G-DRAGON(本名クォン・ジヨン)が2009年のファースト・ソロアルバム『Heartbreaker』以来およそ3年ぶりとなるソロアルバムを、現地韓国で9月15日にリリースする。それに先駆けて、9月1日にシングル「THAT XX」を発表したのだが、ジャケットに“19禁”の文字が書かれていたことで、インターネット中の話題をさらった。
“19禁”とはいわゆる、19歳未満視聴不可のことである。韓国では通常、ドラマ・映画・音楽(ミュージックビデオを含む)といった作品が、青少年にふさわしいかどうかという判定は、「映像物等級委員会」や「青少年保護委員会」なる機関が主に行っている。判定の基準は詳細に決められており、それらをどの程度クリアしているかによって、全年齢対象、12歳以上視聴可、青少年視聴不可(19禁)などが決められる。青少年には不適切な性的描写や、過度な暴力性が認められるものには、大抵19禁の判定が下る。
今回、G-DRAGONの新曲「THAT XX」は、タイトルおよび歌詞に青少年にふさわしくない言葉が使われているとして、アーティスト自らが進んでジャケットに19禁と明記したことが注目された。
「問題とされた言葉は、韓国語の『ク セッキ』。日本語にあえて訳すならば、『あの野郎』や『あのクソッタレ』でしょうか。英語の『ファック・ユー』同様に日常会話ではよく使われますが、公共の場では不適切な言葉です。とはいうものの、韓国語を母国語としていない日本人から見ても、『これのどこがNGなの……?』というレベルの歌詞だったので、韓国人にはなおさらでしょう。“自発的”に19禁と銘打って好奇心を煽ったわりには『ク セッキ』程度の言葉だったため、韓国のネットユーザーたちも、『一体どんな歌詞かと思ったけど、全然過激じゃない』と、肩すかしをくらったという声も多く聞こえ、中には『もう少しマシなプロモーションを思いつかなかったのか?』と怒りのこもった感想を書くブロガーさえいますよ」(韓国雑誌ライター)
元来、19禁指定は、それ自体が十分に宣伝効果を見込めるものである。セクシャルかつスキャンダラスな期待を大衆に抱かせるのに、これほど効果的な言葉もないだろう。
「韓国の音楽制作者ならば、どのレベルの歌詞が19禁になるのかを知っているはず。知りつつも、あえて青少年に不適切な歌詞を書くのは、どうしても表現したいメッセージがその言葉を使わないと伝えられないか、もしくは単なるノイズ・マーケティングかのどちらかでしょう。残念ながら、K-POPのような若者向けの楽曲では、後者が大半です」(K-POPライター)
19禁指定となることで、マスコミに報道され、大衆は余計に好奇心をかきたてられる。ダメと言われれば言われるほど見聞きしたくなる心理を、逆に利用するわけだ。
G-DRAGONの「THAT XX」は各種音楽ポータルサイトで1位を獲得、YouTubeでの公開8時間で約80万回の再生数を記録するなど、所属事務所YGエンタテインメントのマーケティングの思惑は、見事に大成功を遂げた。19禁という宣伝文句につられて楽曲をネットで購入したりYouTubeなどで視聴してもらうのが、そもそもの狙いだからだ。その上、購入者や視聴者がTwitterやブログで感想を書くことで、さらに楽曲に対する注目度は拡充する。
しかし、G-DRAGONといえば、もうすでに押しも押されぬトップスター。3年ぶりの新曲となれば、それだけで十分話題性はあったはず。なぜわざわざ自発的19禁という手法で、関心を集めようとしたのだろうか。
「『THAT XX』のミュージックビデオに出演している女の子は、YGエンターテインメントが年内デビューを計画している新人ガールズグループのメンバー、キム・ジェニなんです。つまり『THAT XX』の19禁騒動は、これからデビューする新人のお披露目が最大の目的といえます」(同)
あまりに露骨な新人プロモーションに、さすがファンからも「BIGBANGも、G-DRAGONも好きで、もちろんYG全体を応援しているけど、さすがにこういう売り出し方は好感持てない」と辟易する声も上がっている。果たして、自発的19禁の本当の目的が達成されるかどうか、その結果を知るのはもう少し後のことになりそうだ。