「9月入学」と「女マネ」を憧れとする、「JJ」のお嬢様気質の正体とは
女性誌レビューに、久々の「JJ」(光文社)が登場です! 赤文字系雑誌の先駆けとして、かつては売り上げ部数トップを誇っていた「JJ」ですが、現在ではすっかり「CanCam」(小学館)や「ViVi」(講談社)に押されてしまっている印象……というか、そもそも女子の総カジュアル化が進む現在、「JJ」の需要ってどこにあるのでしょうか? 世間の流れに逆らえず、今号からついに付録がつくことになった「JJ」。その記念すべき初付録の香水をプロデュースしたのは、“等身大LOVE”を歌う西野カナちゃんです。彼女が表紙を飾る「JJ」10月号を、さっそく覗いていきましょう!
<トピック>
◎紗栄子って、最近シンプルです(はぁと)
◎「9月入学」VS.「女マネ」スタイル
◎ブロモの夏⇒秋コーデマラソン400!
■“紗栄子”と“蒼井優”の意外な共通点!
まずは、「紗栄子って、最近シンプルです(はぁと)」という特集を読んでいきましょう。出ました、紗栄子。そのセレブビッチぶりで、世の女性たちを敵に回している印象も強い彼女ですが、どうやらJJ読者の憧れ女子として、毎号レギュラー登場している模様です。
「JJ」読者たちの間で、いかに紗栄子が崇められているかは、「紗栄子フォロワー選手権!」という企画からもわかります。前号の街角SNAPに登場した読者のコーディネート写真を見ながら、紗栄子が一人ひとりにコメント返ししていくという、なんとも手抜き感満載な内容なんですが、読者たちの紗栄子信者ぶりがハンパない!「紗栄子さんのファッションスタイルがお手本」「紗栄子さんのブログは毎日Check」「紗栄子さんが着ていたワンピに一目惚れして買いに行きました」「リボン使いは紗栄子さんの影響です」「紗栄子さんが~(以下略)」……このページだけで何回「紗栄子」って単語出てきてんの? それ、もう主語省いちゃってよくない?
当の本人からの“紗栄コメント”をチェックしてみると、「まさに私っぽい~(はぁと)」「私も愛用してるPRADAのバッグ!」「私、このワンピ持ってます~(はぁと)」「私もよくします!」と、すべて自分語りで返す荒技を披露! ……ん? このテクニックどこかで見たような気が……? あ!「MORE」(集英社)の連載「8740―HA・NA・SHI・WO―」で、イケメン俳優・佐藤健と対談してるのにもかかわらず、結局自身の男性観を語っただけだった蒼井優と同じ手!!
とはいえ、紗栄子も蒼井優も「一般女子の憧れ」として誌面に出る身分。今や、TwitterやFacebookには、一般女子たちの「代官山にあるお気に入りのカフェで読書なう★私の一押しメニューはこちら!(写真アップ)」「久々のライブ参戦!私のおすすめバンドだからみんなも聴いてねっ♪」といった私語りが溢れています。「自己主張を恥ずかしがるという意識もない」そんな“小紗栄子”たちを見るにつけ、「JJ」っぽさを感じてしまうのは、筆者だけでしょうか。
■「JJ」の“お嬢”な日常
次に気になったのが、突っ込みどころ満載の妄想ストーリー仕立てで繰り広げられるファッションページ「『9月入学』VS.『女マネ』スタイル」です。「with」(講談社)や「MORE」、「CanCam」だと、「スカート派」VS.「パンツ派」とか「社会人1年目」VS.「社会人3年目」といったOL設定になるところですが、「JJ」は女子大生向けの雑誌なので、舞台は大手製菓メーカーや広告代理店ではなくて、オシャレな渋谷キャンパスや自然溢れる湘南キャンパスになるんですね。
それにしても、「9月入学」VS.「女マネ」って一体何のこと? と思ったら、それぞれ「帰国子女系」「体育会系」と読ませるルビが振ってありました。しかし、この2つをキャンパスにおける2大憧れスタイルに設定するところに、「JJ」が根っからのお嬢様気質であることが垣間見えます。
学生時代に1人や2人いませんでしたか? 美人で聡明、裕福な家庭で愛情をめいっぱいに受けて育ったために、素直で気取ったところのないクラスのマドンナ。最初からすべてを持っている選ばれし子女たちが、自分の母親と同じようにセレブ志向を目指し、将来性のある未来のダンナ候補を求めて体育会の「女マネ」となり、恵まれた環境で自分らしさを伸ばしてきた向上心のある子が、海外留学を経た後に「帰国子女」として9月入学をする……。背景としてはそんなところでしょうか。
さてさて。肝心の中身ですが、「癒し系で『白ふわ』が得意」な女マネたちのモットーは「いつでも可愛く、でもグラウンドで浮かないカジュアル」。そして「プレーヤーに女子もいる部活もあるから、練習中に露骨な勝負服は、空気を読んで避ける」という気も遣わなければなりません。「発表! 秋キャンパスの女のコからも(はぁと)男のコからも(はぁと)Wちやほや服!」という特集からもわかるように、どうやら「JJ」が目指すのは全方位モテ。「マネ女子会」や「買い出し」なんていう、女子だけのイベントもあるので、白ふわワンピで応援だけしていればいいってわけでもないようです。ワンピの上にメンズシャツをはおって、滲み出るガーリー度を抑えてみたり、実は洗える素材だったり、ブランドだけどぺたんこ靴だったり……という、体育会系男子が到底気付かないであろう小技を効かせることで、女子ポイントも稼がなければならないんですから、いつ何時も頭はフル回転! どおりで、登場する読者たちが、学習院、青山、明治学院……と有名校なわけです。
一方、H&MやFOREVER21といったファストブランドを使いこなす「海外っぽいゆるコーデが得意」な帰国子女たちはというと、「インター(インターナショナルスクールの略)時代の友達とランチ☆」「生まれ故郷のNYに一人旅」「学校帰りにマイケルとデート!」……って、そんな生活を送る女子大生って日本にどのくらい存在するのでしょうか? そういえば、やたらと大学別カラーを打ち出してくるところからは、アメリカのアイビーリーグ的なノリを感じなくもありません。「JJ」は、ごくごく少数の「アメリカかぶれ」のための雑誌なのでしょうか。
■「向上心のない女って、バカみたい!」
最後に取り上げたいのがこちら。「ブロモの夏⇒秋コーデマラソン400!」です。他誌が「7アイテムで1カ月着回し」なんていう、みみっちい特集をするところを、ブロモ(=ブロガーモデル)自らお気に入りショップや展示会を回って発掘した服で400スタイルを紹介しています! 目がチカチカするほどゴージャスです。
「お台場デート」「ホテルのプール」「ネイルのお直し」「ホテルでスイーツ女子会」「クラブのイベント」「ショップのオープニング」「コスメの発表会」などなど、設定もやっぱりセレブリティ! そうそう、「JJ」で紹介されてるストッキングって、1足2,000円もするんですよ。お小遣いをいくらもらってんの!? 別冊付録は「HAWAII BOOK!」だし……きっと夏休みに行くんでしょうね。仲良しのママと!
ところで「ブロモ」こと「ブロガーモデル」は、一般人とプロモデルの中間の立ち位置なようです。自らスタイリングしたコーディネートで「JJ」本誌に登場する、ブログでも、私生活や私服ファッションを公開する「JJ」専属モデル。冒頭で取り上げた紗栄子も、最新ファッションを「私らしく」「紗栄子流」に着こなすことを殊更に主張していますし、「みんなと同じで安心」という価値観を提唱する女性誌が多い中、「私らしさ」を押し出しながら、全方位モテを狙うなんて意識が高すぎ! これまで「JJ」のことを、いち女子大生向け雑誌だと誤解していましたが、その実は、<セレブ志向>なお嬢さんたちのために<私らしさ>と<向上心>の大切さを説く自己啓発本だったようです。……って、そんなの、その他大勢の一般女子には、やっぱり敷居が高すぎます!!
(橘まり子)