「おばけ食堂」で“ばぁば”が攻める! 『きょうの料理』の暴走企画
今回ツッコませていただくのは、8月29日放送分のNHK『きょうの料理~「おばけ食堂へようこそ!」』(8月15日放送分のリピート放送)。
「夏休み」と言えば、きもだめしに怪談……というわけで、講談師・神田山陽による「こわい話」と、料理研究家の「ばぁば」こと鈴木登紀子の昔懐かしい料理のコラボ企画である。『きょうの料理』は本来、非常にきっちりした番組だと思うのだが、陳建一と平野レミの「シェフ×シュフ(主婦)対決」などの暴走コラボ企画をはじめ、どこの料理番組よりも、“攻め”の企画をやってのけるところがスゴイと思う。
この日の冒頭は、「メガネ+ダジャレ中年アナ」後藤繁榮と、「ばぁば」鈴木登紀子が、額に白い三角の布をつけ、顔の下から懐中電灯の光を当てるという、伝統的な“オバケ悪ふざけ”で登場。照明が落とされた暗いスタジオに、いつもの通りの軽やかなオープニングのメロディー「タンタカタカタカタンタンタ~ン♪」が流れるという、実に珍妙な幕開けだった。
そして、「夏休みきもだめし講談」に関連した料理「いなりずし」や「かっぱ巻き」を紹介し出したのだが、そのやりとりもやっぱり珍妙。
「カッパはどうしてキュウリが好きなんでしょうか。きゅうり聞いても、答えられないですかねえ」(後藤アナ)
「急に? キュウリ? そうですねー、キュウリってみずみずしいからじゃないですか。カッパにはお皿があるでしょう? お皿がかわいちゃうと一大事でしょう、カッパの君は。水分がきっと大事なのよ」(ばぁば)
そして、キュウリを見ずに、観客の方に目線を向けたまま、超高速で輪切りをしていくばぁば。歓声が上がると、「もう一度見せようかしら」とニヤリ。「あと10本ぐらいありますけど」という後藤アナの合いの手(?)には、子どもたちも思わず苦笑していた。
ちょっと驚きだったのは、ばぁばが意外と雑なこと! すし桶にご飯を移す際、おかまにご飯がまだたっぷり残っているのに、手を止めてしまう。また、かっぱ巻きを作る際には、巻き簾の外側にキュウリがはさまったままで潰れても、おかまいなし。さらに、いなりずしを作る時、「先端に詰めて、かっこよくとがると良いの」とすし飯をぎゅうぎゅう詰めているうちに、いなりが破れて、その穴からニョロニョロと米が出ていたが、それもやっぱり我関せずだった。
ところどころ「え? 今のOKなの?」などと思いつつ、ハラハラ見守ってしまう大雑把さだったが、神田講談師のこわい話について、ばぁばが放ったコメントが見事にすべてを集約しているように思えた。
「こわい話は子どもの頃、ちょっとこわいけど、好きでした。今? このトシになると、こわいものはないです。むこうが、こわがります」
なんて奥の深い料理番組なんでしょうか。おそれいりました。
(田幸和歌子)