“ナチュラルボーン”ウド鈴木の魅力を再発見した『そうだ旅(どっか)に行こう。』
今回ツッコませていただくのは、8月20日放送分の『そうだ旅(どっか)に行こう。』(テレビ東京系)。
今年4月よりレギュラー番組化してスタートした同番組は、毎回2~3人の芸能人をニセの仕事で呼び出し、強制的に休みをとらせて、旅に行かせるというもの。行き先も宿泊先もすべて本人たちが旅行雑誌やネットで情報を集めて決め、撮影許可まで行き当たりばったりで本人たちがとるという乱暴な企画だ。
この日は「キャイ~ン・ウド鈴木&よゐこ・濱口&ずん・飯尾の山形ズッコケ旅・後編」。後編ってことは当然「前編」があったわけだが、驚くのは後編の冒頭でも、まだほとんど何も始まっていないということだ。
そして、もう1つ驚くのは、この3人の不思議な関係性。この中では、濱口は「運転手」として働き、あまりしゃべらない。一番まっとうな人なのである。対して、飯尾は、これまでテレビで聞いた飯尾の声を全部合わせても到底及ばないほど、よくしゃべり、「饒舌」である。でも、やっぱり一番スゴイのは、ウド鈴木。「旅」はまったく始まらない、何も起こらないのに、ウドちゃんに関する「発見」だけはどんどん積み重ねられていく。
これまでウドちゃんについて知っていることといえば、「相方の天野を異様に大好きなこと」「熟女好きなこと(でも、年下女性と結婚)」「滑舌が悪く、何を言っているかよくわからないこと」「ものすごい潔癖症なのに、風俗好きという矛盾」程度。
でも、この番組によって、ウドちゃんの新たな一面をたくさん知ってしまった。一部をご紹介すると……。
・酸っぱいものが苦手で、体をねじって悶絶するほどであるということ。「レモン」と聞いただけで、戻してしまうらしい。
・人を「悪者」にする天才であること。どこでも人目を気にせず、すぐ土下座するため、相手が嫌な人に見えてしまう。
・実は「ノリツッコミ」ができること。ウドちゃん1人が車に地図を取りに行っている間に、しゃぶしゃぶ&すき焼きの肉が終了。その後、戻ってきたウドちゃんは「やっぱりまずはポン酢かな?」「やっぱりいつ見ても緑はいいねー。ではまず春菊から。ってオイ!」と30秒以上の長いノリツッコミを披露した。オマケに「ピンクの(肉)、ないんかい! なんでやねん!」と、ツッコミをする時は、なぜか関西弁を使う。
やることなすこと異常だけど、この人にはきっと「演出」はまったくない。空恐ろしい潜在能力だと思う。
ウド鈴木の名前が「体だけ大きくて何の役にも立たないウドの大木」からとられていることは有名だが、「キャラづくり」「キャラ売り」をまったくせずに、こんなにもおかしな特徴ばかりを生まれ持っている芸人というのも珍しいだろう。どこにいても、きっと誰かに発掘されていた、芸人にしかなりようがなかった人なのだと思う。
それにしても、番組の大半が「車の中で尿意を我慢するウド鈴木」を映すことで終わっていく旅番組は、前代未聞だ。やりたい放題に見えた『東野・岡村の旅猿~プライベートでごめんなさい~』(日本テレビ系)が案外まともな旅番組だったことを、この番組を見るたび、痛感してしまうのだった。
(田幸和歌子)