カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「nina's」9月号

年齢別スナップでわかった! 25歳以下に「nina’s」カルチャーは存在しない

2012/08/09 19:00
「nina’s」(祥伝社)2012年9月号

 みなさま、2カ月に1度の“おしゃれ地獄”「nina’s」のお時間です! 今回もなかなか厄介な布陣ですので、心してかかりましょう。表紙では「胎盤と一緒に毒気も出しました!」とばかりに露出の少ないモッサリ服をまとったほしのあきが赤子と戯れています。SHIHOにMEGUMIにhitomiにSHEILAとアルファベットママたちがずらりと並ぶその中に、最近すっかり面白ママタレの風格が出てきた冨永愛も乱入。なんでしょう、字ヅラだけでもうお腹いっぱい。特集は「密着! おしゃれママの24H(じかん)」、「ママ会に持ちよりレシピ」なんていう企画もあるようです。「ママ」と「オシャレ」が漫然と絡み合い、レビュアーに焦点を定めさせないのが「nina’s」。今月もクリエイティブに読み進めたいと思います。

<トピックス>
◎密着!おしゃれママの24H(じかん)
◎ママの年齢別SNAP
◎千秋のお悩みバスター 苺とアリスとピストルと

■おしゃれがあれば何でもできる

 まずは特集「密着! おしゃれママの24H(じかん)」を見てみましょう。このページの前にMEGUMI、SHEILA、hitomiという3人のママタレたちの24時間も紹介されています。出産されてさらに目線が高くなったMEGUMIさんに対しては「はいはい! 送り迎えはおしゃれアシスト自転車angee!」「夜はお子さん連れてお友だちのミュージシャンのライブ! アゲ~」「お風呂でLilyの『オンナ』(幻冬舎)読んじゃう感じカッコイイ~」と、先手先手の太鼓持ちで乗り切りましょう。正面からぶつかると疲れちゃいますのでね。

 通常の育児雑誌であれば、このようなママタレのおしゃれライフが最上とされるのですが、そこは「nina’s」。その後に登場する“クリエイティブなお仕事”をされている方々こそ、この企画の本丸です。モデル、ブランドディレクター、元ライター、バイヤー、ギャラリーマネージャーらが、何気ない1日の様子を誌上公開しています。「ベビーに合わせて起床して、朝のスキンケア活動。肌にやさしいオーガニックのものが絶対!」「休日の朝食は、お気に入りのパンでおさぼり」「ヒーリングミュージックを聴きながら就寝。最近は初めて自身でプロデュースした『はじめてママの産前リラックスCD』の出番が多い」など、ある意味期待を裏切らない24時間が展開されています。それにしてもおしゃれママたちはピクニックランチしすぎ、体にいいもの食べすぎ、コーヒーを豆から挽きすぎ。もちろん、ここに出せない話はたくさんあるのでしょうが、ママタレたちの夢物語とはベクトルの違う“本気度”が妙なリアリティを持ってこちらに迫ってくるのです。

 お子さんのいる家庭は、特に乳幼児を抱えていたら、夜泣きで睡眠時間は削られ、おしゃれにかける時間も削られ、外にもなかなか出られないというのが現状ではないかと思うのですが、「nina’s」のおしゃれママたちは凝ったデザインのワンピースをまとい、多忙な中でも子どもにおやつを手作りし、ハーブとトマトを育てて、家族みんなでDJごっこをするのです。早朝に30分ヨガをして、ダンナと朝カフェして、まつ毛エクステして、アロマキャンドルして、手芸するんですよ!

 でも、ふと思いました。もしかして、「おしゃれ」という名のもとでは、不可能なことも可能になるのかもしれない。「おしゃれなママライフを送りたい」という強い気持ちが、寝不足で刺繍することを可能にさせるのかもしれません。この企画であらためて「おしゃれは無敵」と思いを新たにした次第です。

■安室奈美恵と「nina’s」は接点ある?

 続きまして、「nina’s」恒例街角ファミリースナップをご紹介します。今月は「ママの年齢別SNAP」という過酷なテーマを持ってきました。リードには「トレンドに敏感な世代や、小物づかいが上手な大人ママたちetc。年齢ごとのおしゃれの傾向って……じつはあったんです!」とあります。30~34歳、25~29歳、24歳以下、35歳以上という4つのセグメントで、時代ごとのおしゃれバックボーンとその傾向を分析。

 トップのページに「30~34歳」を持ってきているあたり、この層が「nina’s」のコアターゲットなのでしょうか。「この世代が青春時代を過ごした90年代半ばに、小室ファミリーが大ヒット!! その代表格であり、若者のファッションリーダーとなったのが安室奈美恵さん」ということで、「憧れの人は?」という質問にも「安室奈美恵、松嶋尚美、梨花」という意見が多いようです。柄と柄を合わせたり、凝ったヘアアレンジをしながらも、端々に経産婦を匂わせる、ある意味最も「nina’s」っぽいファッションが主流の層です。

 一方で「25~29歳」の憧れの人は「東原亜希、藤井リナ、浜崎あゆみ」。東原亜希の需要があるのはここなんですね。この層は「団体芸」を重んじるようで、家族全体でファッションのテイストを合わせたり、ママと子ども、兄弟同士で同じアイテムを揃えたりしています。究極のお揃い願望として「あゆの顔になりたい(笑)」なんてママもいました。季節ごとに顔が変わるから大変ですよ!

 驚くことに、24歳以下から一切「nina’s」臭がしなくなります。ごく普通の若いママ。「ファッションはTシャツやスニーカーでも、ヘアメイクはつけまつげや盛り髪バッチリ。不況や就職難が続き、男の子にモテなければ……という願望のあらわれかも!?」と分析していますが、ユニクロやファストファッションを愛用しているこの世代のママたちには、「nina’s」のいう“おしゃれ”がまったく届いていないようです。個性じゃ腹は膨れないことを知っている世代だからでしょうか。

 一方35歳以上のママたちは「YUKI、CHARA、原田知世」という“個性の三銃士”をお手本に、奇抜な帽子をかぶり、手作りアクセサリーをつけ、子どもは思いっきりおかっぱヘアに。これは生きてきた時代の違いなのか、10歳の年齢差がそうさせるのか、どちらにしても「nina’s」カルチャーがオーバー25、いやオーバー30限定だということがわかった街角スナップでした。

 今月で人気連載「千秋のお悩みバスター 苺とアリスとピストルと」が最終回を迎えます。ということでスペシャルゲストに冨永愛。会社の同僚に一目ぼれをしてしまったシングルマザーの相談に「付き合ってすぐに子どもに彼を会わせることはしない方がいいんじゃないかなって思う」と、経験に即した実のある回答をなさっていました。創刊2号目からスタートしたこの連載、そして「nina’s」の御意見番である千秋を下してまで世代交代をしようとしているのでしょうか。年齢別街角スナップで「nina’s」のおしゃれ高齢化問題を目の当たりにしてしまったせいか、そんな邪推をしてしまいました。
(西澤千央)

最終更新:2012/08/09 19:00
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