鳶職、僧侶、受刑者の「あるある」を聞き出した、RGの「ナメられ力」
今回ツッコませていただくのは、RGが出演した、7月31日放送分の『テベ・コンヒーロ』(TBS系)。
この日のテーマは「(レイザーラモン)RGが自ら取材した本当のあるある」。RGはもともと、海老蔵に扮して、「歌舞伎~あるある~、早く~言いたい♪」という前置きを全編の90%以上繰り返し、最後にたった一言「あるあるでも何でもない、フツウのことを言う」というだけの、限りなく内容の薄い「歌舞伎あるある」を得意ネタとしていた。
最近は、このネタというか、RG自身が封印されていたかに見えたが、海老蔵本人がさまざまな騒動を経てテレビに再び露出するようになり、RGの存在も解禁となったようである。
そして、実際に『テベ・コンヒーロ』を見終わった感想は……「なんだか悔しい」。まさかRGなんかに、近年一番笑わせられるとは思ってもみなかったからだ。
実はこれ、6月に放送された「テツandトモの“なんでだろう”全て解決SP」を受けた、番外編ならぬ挽回(?)編のようなもので、テツトモの回を見ていない人にはさっぱりわからない、深夜番組ならではの企画であった。
「テツandトモ」編は、彼らの「なんでだろう」の理由を探ろうという内容で、例えば、「カラオケBOXで間違えて入れた曲が、たいてい演歌なの、なんでだろう?」という疑問に対し、「レアケースの方が“エピソード記憶”として強く記憶されるから」と、専門家に解説されてしまうなど、テツandトモのネタがことごとく論破され、“芸人つぶし”の憂き目に遭っていた。
そこで今回、「あるあるネタはレアケースではない!」と、RGが立ち上がり、「鳶職」「僧侶」「受刑者」など、さまざまなジャンルのあるあるを自ら取材したのだが……。
「鳶職→都内の公衆便所、把握しがち」などの相変わらずどうでもいいネタに加えて、「鳶職→嫁の方が天気予報詳しくなりがち」「僧侶→毎年クリスマスケーキは遠方で買いがち/親戚、似すぎてて笑いそうになる」「受刑者→おしるこが楽しみ」など、実際に取材をしたからこその、ちゃんとした「あるある」が、初めてRGの口から語られていた。
しかも、恒例の長い長い、ほぼ全編前フリの「○○あるある~早く~言いたい~♪」の曲に乗せたネタでは、背景に鳶職、お坊さん、受刑者など、いろいろな「取材風景」写真が流されたのだが、どれもこれも良い写真で、口惜しいほど楽しそう。
どの業種の人とも談笑し、異様に打ち解けているように見えるRG。ダメ男ゆえの「ナメられ力」なのか、相手が警戒心を解き、気を許してくれるのだろうか。そう考えると、実は取材に非常に向いている人材のような気もする。ほかの業界にも「あるある」を取材してほしいともさえ思ってしまった。
ちゃんとした「あるある」ネタをやっていたテツandトモが潰され、それが笑いになった一方で、どうしようもなくロークオリティのRGで、今後さまざまな「業界あるある」ネタをシリーズ化できそうな可能性を見出すとは。
芸の有無だけでは決まらない「テレビ」という特殊性と、ささやかな希望を見た気がした番組だった。
(田幸和歌子)