カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「MORE」9月号

四十路カワイイ梨花にみる「MORE」が“ハッピー”という病から抜け出せない理由

2012/08/01 21:00
「MORE」2012年9月号(集英社)

 先月、蒼井優さんのコッテリ連載についてこちらでレビューをさせていただきましたが、今月号はその拡大版として、3ページのスペシャル対談を展開しています。対談相手は、映画『るろうに剣心』で共演した佐藤健。旧知の間柄(NHK『龍馬伝』の飲み会で知り合ったとか)、しかも年下ということでリラックスしたのか、普段の対談より例の蒼井さんの技「相手の話をしていると見せかけて、その実全部蒼井でした」がストレートに冴えわたっています。2号連続で大変恐縮ですが、ちょっとその発言をご紹介。「私、男の人は自分語りするより“無言実行”が素敵だなって」「実は私イケメン恐怖症なんだけど、健くんは大丈夫だったもん」「いかにもイケメンな人の前だと緊張するの。その人が「オレ、カッコいいでしょ?」って空気を出してると、ますます苦手で逃げたくなっちゃう(笑)。でも、健くんみたいにイケメンでも自意識が薄い人は大丈夫」などなど。結局「蒼井優、男を語る」になっておりました。全国のイケメン俳優の皆様、蒼井さんの前で強い自意識をほとばしらせるのは控えた方がよさそうです。その前に蒼井さんの“すっぴん自意識”を何とかしてくれって話ですけどね。

<トピックス>
◎蒼井優「8740―HA・NA・SHI・WO―」
◎私たちが梨花さんに聞きたい112の質問!
◎「新」友のつくり方

■そろそろ乗り越えたい「梨花」という病

 今月の表紙は久々の梨花。ええ梨花ですよ、梨花。だから梨花ですってば。表紙見ても誰だかわからないってそんなバカな……(自粛)。

 と、思わず二度見してしまうほどの、若さと美貌を湛えている梨花さん。産後からしばしご無沙汰だった「MORE」に登場です。「私たちが梨花さんに聞きたい112の質問!」。果たしてそんなに梨花に聞きたいことがあるのかと不安になりましたが、なんでも「読者から寄せられた質問は総数200以上!!」なのだとか。

 前半は主にファッションのこと。「ファッションのモットーは?」「今いちばん欲しい服は?」「服を買う時に気を付けているポイントは?」などの質問に、ほぼ単語で答える梨花。「ワンピ」「ワンピース」「可愛いワンピ」「可愛いワンピース」など、同じ「ワンピース」という言葉でも、ここまでバラエティ豊かに表現できる梨花さん、さすが「最強のファッションリーダー」と銘打たれているだけあります!「今シーズン気になっているアイテムを教えて!」というありがたい質問に対し、自身がプロデュースしているセレクトショップ「Maison de Reefur(メゾン ド リーファー)」の商品を惜しげもなく披露。商売熱心な一面ものぞかせています。

 最終ページは、「ライフスタイル・生き方」についての質問。「無人島に5アイテム持っていけるとしたら何を持っていきますか?」という質問には、「チビ君(お子さんの愛称だそうです)、だんな君、水着、カメラ、タオル」と答えて掴みはOK。「肌の調子が悪い時のスペシャルケアは?」という質問には「まずお風呂から!お風呂に長く入って毛穴を開くところから。何かを足す前に全部リセットして、なくすことが大事。服もそう。人生もそう。コレ絶対!」と鼻息荒く人生哲学を説きます。と思えば「年を重ねてもかわいい梨花ちゃん!その秘訣を教えてほしい!」には「自分に正直に。エンジョイ!」とバブル時代の学生起業家みたいなことをのたまっちゃう始末。なんとも自由な質疑応答でした。

 「MORE」が提唱し続けているハッピーが読者を混乱させていると前々からレビューで書かせていただいておりますが、その一因がまさにこの梨花なんですよね。一般的に考えれば「かわいい」とか「ワンピ」とか「チビ君が」とか「ダンナ君が」とか言っちゃうイイ年こいた女性は、静かに離れていきたくなる対象。だけど「MORE」という器の中では「生き方のお手本!」と持ち上げられてしまうのですから。そろそろこの“梨花という病”から脱却すべき時なのではと、老婆心ながらご忠告差し上げたい次第です。老婆心って、梨花さんは筆者より3つも年上ですがね。

■まずはディズニー好きを見つけよう

 続きまして、「つくメンまめ男くん」「上手ちゃん」など若干スベりながらも新語造語を作り続けている「MORE」が、久々にブチ上げてくれました。「『新』友のつくり方」を見てみましょう。キャッチには「大人だからこそ、必要なのに、大人だからこそ、難しい」との文字が。社会人になってから新たにできる友達を“新友”と呼ぶようです。

 まずはMOREガール100人の「リアル新友事情」から。「新しい女友達が欲しいと思う?」という質問に76%の女子が「YES」と回答。「職場に女性が少ないので、似た年齢・職業の子と悩みを共有したい」「毎日、会社と家の往復ばかり。刺激が欲しい!」「やりたいことに、挑戦できないでいる時、背中を押してくれる存在がもっといたら……」などなど。自分を成長させてくれる存在として、新友を求める傾向にあるようです。しかしながら「収入や雇用形態が違うと気後れや嫉妬がジャマしてしまう」「同僚にはあくまで仕事仲間だと思われていそうでプライベートな話は聞くのをためらう」と、大人になってからの友達だからこその難しさも。

 「MORE」仲良しモデルという藤澤恵麻&比留川游の「友情トーク」はまぁ置いておきまして、見開きで紹介されている「新友コンビ×6の友情年表」をチェック。「職場で出会った」「フェイスブックで出会った」「同業者飲み会で出会った」「ダンススクールで出会った」「音楽イベントで出会った」「宿泊研究で出会った」という6組の新友たちが2人のなれ初めを披露しています。「キレイな子だな、友達になりたいな……と思いました」「お互いミニチュアの食品サンプルが好きっていう珍しい趣味も発見して意気投合!」「顔もファッションもストライク!」など、まるで恋人を語るようにうっとりと語っています。また「新友」に欠かせないのが「フェイスブック」や「LINE」などの文明の利器。「『タグ付け』から彼女のページに行って、友達申請し、電話番号とメールアドレスを送りました」「通話料節約のために申し込んだ『スカイプ』も活用しています」。

 恒例行事としてお互いの誕生日をサプライズで祝い合ったり(それをサプライズというのかはさておき)、家でディズニーのDVD鑑賞会を開いたり。女子同士のわちゃわちゃした感じを心底楽しんでいるような、新友の方々。しかしながら「誕生日に彼と『ディズニーシー』のゴンドラに乗るのが夢だったんです。彼に伝えていたのに忘れられて……○○に泣きながら電話しました。そしたら笑いながら『大丈夫だって!』と言われて。前向きな言葉をくれるので、なんでも相談するように」という一文に、筆者は心をぐっと掴まれました。その電話かかってきたら引くわ~。そりゃ笑いながら「大丈夫」って言うしかないわ~。新友づくりの何よりのポイントは、価値観の近い人を見つけ出すっていうことなんでしょうね。

 最後に「MORE」お得意の「新友づくりの掟7」という項目がありましたので、友達づくりに悩む皆様はどうぞご参考になさってください。何より一番大切なのは距離感の取り方なんでしょうが。彼女たちの言う「ステキな友達関係」と、梨花さんの言う「自分に正直に。エンジョイ!」が、ハッピーの地平で重なった今月の「MORE」。やっぱり“梨花”という病はなかなか重篤なようで。
(西澤千央)

最終更新:2012/08/01 21:00
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