コラム
"噂の女"神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第135回】

隠蔽体質の学校と過剰報道に走るマスコミ……大津いじめ問題を取り巻く毒

2012/07/24 21:00
「女性自身」(光文社)8月7日号

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の”欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

第135回(7/24発売号より)

 垂直離着陸輸送機・オスプレイに関し、朝日新聞のスクープが続いている。過去の事故原因の調査報告への圧力の存在、5年で58件もの事故が起きていたにもかかわらず、“重大事故”ではないとして隠蔽していたこと――。原発事故に対する日本政府の隠蔽といい、日本もアメリカも“国家”が嘘をつく、というのは普遍的共通項だ。そんな欠陥オスプレイが日本各地を飛ぶのは確実だろう。原発もオスプレイも“国災”である。

1位「加害少年3人を本誌『家庭訪問』&『追跡調査』少年Cは鼻歌でレゲエ…親も本人も『全員反省なし!』」(「女性自身」8月7日号)
2位「美元が政伸に突きつけた ああ幻の『セレブ生活計画書』」(「週刊女性」8月7日号)
3位「酒井法子 『女優復帰へ…』続く逆風でも“美白肌キープ”真夏の執念」(「女性自身」8月7日号)


 大津のいじめ問題は加熱する一方である。昨年10月に自殺した13歳の男子中学生について、生徒へのアンケートでいじめを裏付ける結果が出たにもかかわらず、いじめと自殺の因果関係をかたくなに認めず、その無責任ぶりが大きく批判されたものだ。その後、連日のメディア報道がきっかけとなり社会問題化、さらには警察が介入するという異例の事態に、学校など関係各所の対応が変化するに至ったのだ。

 今回、メディア報道の功績は大きかった。これほど大きく報道されなければ、少年の自殺は闇に葬られてしまったかもしれない。責任を回避した市、教育委員会、学校の“隠蔽体質”を問うこともできなかっただろう。だが報道が続くにつれ、その矛先が加害少年や加害少年の家族たち個人へと過剰に向けられている。ネットでは実名や写真などの個人情報が氾濫し、誹謗中傷が巻き起こっているのだ。いっつもそう。ネットだけではない。今週の女性週刊誌は3誌ともいじめ問題を取り上げているのだが、中でも「自身」は加害少年たちへ大きくスポットを当てている。

 そこには加害少年3人の親の職業、学歴、家族構成、弟妹の年齢、離婚などの家庭事情や環境、経済状況、車、引越し先の家賃、さらには1人の父親の会社に押しかけて直撃取材。自宅へのピンポン――。これっていじめ問題で必要な情報か? 加害者がなぜいじめに走ったのか、それを検証するなら意味がある。だがこの記事にはそうした姿勢は見られない。ただ単に加害者たちのプライバシーや現状をちょいと覗き見して書いただけなのだ。そもそも「家庭訪問」というタイトルからして、いじめ問題を茶化しているとしか思えない。

 こうした報道姿勢はなにも「自身」だけではない。テレビでは加害少年の名前が読み取れる映像を放送、感情的なコメントも氾濫し、週刊誌もメディアスクラム的過剰報道を繰り広げる。またデヴィ夫人が無関係の人物の写真や実名、誤った勤務先など掲載し、名誉毀損として被害届を出される事態に発展した。加害者の個人情報暴露、攻撃がまるで正義だといわんばかりの現状――。だがこうした過剰で執拗な攻撃こそ「いじめ」の本質ではないだろうか。

 そもそもいじめは大人の世界でも氾濫している。それはメディア企業とて例外ではないだろう。人間が3人以上集まれば政治が始まるといわれるが、いじめも同様だ。人間が存在する限りいじめも存在する。大人がそうなのだから子どもはなおさらであり、ある意味いじめのない学校など存在しないのかもしれない。過去何度もいじめ自殺がクローズアップされ議論されてきたが、それでもいじめは一向になくならない。「いじめ」は常に存在する。そんな前提に立ち、対処するしかないのではないか。

 もちろんその前に文科省、教育委員、学校の隠蔽無責任体質を変えなければならないのは当然だ。また警察権力の介入に関しても議論が必要だと思う。それを許した学校行政の体たらくも。またいじめを気付かず、気付いていても対処しきれなかった家庭の問題もタブー視してはいけないと思う。そして日本のメディアは移り気だ。いじめ自殺問題が個人攻撃、一時的なブームとならないような報道、議論をして欲しいと切に願う。

 まだこんな美味しいネタが眠っていた。しつこいようだが、美元と政伸の離婚騒動である。美元が作成した「1カ月に必要なお金リスト」の裁判資料の存在を「週女」がスクープ! あまりに興味深いので列挙引用したい。

 食費10万、日用品5万、健康維持費13万、税金・年金3万、携帯、交通費などの生活必需品・10万、美容院2万、ネイル2万、美容注射1万、歯のホワイトニング1万、化粧品2万、エステ2万、ジム2万、外食4万、接待3万、観劇4万、書籍・DVD1万、ウクレレ教室2万、タップ教室2万、楽譜シューズ代などの雑費1万、衣装代10万――合計80万円也!!

 しかもこれは家賃と光熱費、また美元が大好きだという旅行、パーティ、外車の購入維持費などは入っていないらしい。対し夫・政伸の月収は160万円。確かにちょっと使いすぎ、分不相応である。だが、あくまで美元にとってはという前提である。

 だってこのリストの項目を見ると、ある程度の女優さん、女性タレントさんにとっては「必需」項目なのではないかと思うから。美容院、ネイル、エステ、化粧品、ジム、衣装、交際費、習いごと――。一流の女性芸能人はみんなやっていることだ。いや、それぞれもっと高額かもしれない。芸能人(特に女性)は美が命。だからこのリストだけで美元を責める気にはなれなかった。美元の不幸は自身が一流の芸能人にはなれず、でも一流芸能人と(表面上は)同じことをやろうとしたことだろう(勘違い)。しかもその原資は夫にたかって。それにしても、自分磨きは金が掛かる。女って本当に金が掛かる生き物だとリストを眺めて実感しました。

 一種の風物詩――。それが酒井法子直撃記事だ。月に1度くらいはどこかのメディアが思い出したように酒井を直撃する。酒井も酒井で、必ず一言二言しゃべる。だからメディアも性懲りも無く直撃してみる。ネタがない時に記事を埋めるには最適とばかり。

 今回「自身」記者は酒井に夏休みの予定を聞いている。「普通に息子と過ごしますよ。旅行? そうですね」こんなどうでもいい会話がなされた模様。
 
 さらに復帰について訊ねる記者。「年内復帰はないんですか?」「はい」これもお約束の質問で、予定調和のようでさえある。

 ではタイトルの「美白肌」「真夏の執念」とは? 酒井が日焼け対策のため完全防備で現れたから。内容がないからこそ、タイトルだけは仰々しい。

最終更新:2012/07/24 21:16
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