フット後藤がわざわざローマに行って人生を語るも、どうにも拭えぬミスマッチ感
海外の街を訪れた芸能人が、そのロケVTRを踏まえつつ、スタジオでMCの今田耕司、長谷川潤と共にトークを繰り広げる深夜番組『アナザースカイ』(日本テレビ系)。「どこか遠くを見つめながら人生観を語っちゃう」的な、スタイリッシュで、シュッとした“上質な”雰囲気を届けてくれる番組である。
7月13日に放送された回のゲストは、フットボールアワーの後藤輝基。日頃、ファッションセンスの悪さなどで笑いを取る後藤が、果たしてスタイリッシュに人生を語れるのだろうか。失礼ではあるけれど、つい心配になる。
後藤が訪れたのは、イタリア・ローマ。後藤・イン・ローマ。このミスマッチ感を後藤自身も狙っているのかどうか知らないが、ロケ開始早々、でっかい声で、「後藤輝基が、イタリアに来たぞ~! ボンジョールノ~~!」と叫ぶ。ワイプ画面の今田もすかさず、「絶対おかしい日本人や思われてるわ~」とツッコんでいたが、『アナザースカイ』的な絵面でないことは確かだ。
さらにこの“ズレ”は、加速していく。後藤が、街ゆく人を見て「きれいな色着てまんな。さすがイタリアでんな」と、コテコテの関西弁で感想を言ったりしているところに、<初めて明かす 売れっ子芸人としての本心……>という、落ち着いた雰囲気の男性ナレーションがかぶる。画面には、高いところからローマの街を一望し遠い目で語る、ある種お約束のカット。さらに、<今だから話せるが、本当に辛かった……>と、カッコいいナレーションが続き、追い討ちをかけるように、「芸歴17年 後藤輝基の知られざる素顔」というテロップまで流れていた。
あまりのミスマッチ。これ、後藤も撮られながら、「どっきりじゃないの?」とか思わないのだろうか。または、この番組のマジックにかかれば、どんなタレントでもスタイリッシュに見せることができるという実験だったりするのか。
とはいえ、やはり後藤が出演する以上、どうしてもスタイリッシュより、「面白番組」の空気が勝る。例えば、ジェラートの店で、ジェラートではなくバナナや空のコーンを渡されるというボケを店員さんにかまされたり、イタリアンスーツの店でも、試着する服試着する服、すべてがなんか似合ってなかったりと、スタイリッシュな番組も、後藤色に染められてしまうのだ。
番組終盤、いよいよ人生を語る空気になってきた。吉本に入ったものの、最初はなかなか芽が出なかったという苦労話や、相方の岩尾望と出会えてよかったという話を始める後藤。そこに過去の映像や写真がオーバーラップし、カッコいい音楽まで流れてきた。<笑いに飢えていた。とにかく売れたかった。もがき続けた><そしてついに苦労が報われる日がやってきた。M-1グランプリ優勝。世界が変わった>と、ナレーションも短めの文章でたたみかけ、どんどん盛り上げる。さらに音楽とナレーションのマジックは続く。密着ドキュメンタリーのパロディにしか見えないような気もするが、超カッコいいじゃないですか、後藤さん。途中、「なんで面白いんやろ?」とか言ってた今田も、「ちょっとええ感じになってるやん」と感心しているし。
そして夕日を浴び、後藤はこうつぶやいた。「イタリアがそうさすなぁ~」。そう、すべてはイタリアのせい。しかし、どんなにスタイリッシュに演出されても、後藤は後藤。やはり普段の回とは違って、番組にオチがつく。最後に、2つ星パスタの美味しさにツッコんだ場面が流れたのだ。「おいしい通りこして、おい“D”やね!」…………。スタジオで、「どこ使てんねん!」と、自分でツッコむしかない後藤だったが、これもまた、イタリアのせいということで。
(太田サトル)