コンサートの密録は違法じゃなかった!? 「JASRAC」に聞いた!
違法配信と知りながら音楽や動画をダウンロードした場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科す「改正著作権法」が国会で成立した。しかし、ユーザーが動画や音源の違法性を認識できるかも難しく、「これ以上は違法」という線引きもあいまいとあって波紋を呼んでいる。
その一方で、電子機器の発達によってかねてから問題視されていた事象が、近年になってさらに浸透しつつある。俗にいう「ブートレグ」、コンサート会場で観客が録音を行った音源だ。こうした密録音源は音楽好きたちの密かな楽しみで、一部のレコード店などでは販売もされていた。
しかし現在、小型化するICレコーダーや、手軽な録音機ともなるスマートフォンの普及も一因となり、韓流からジャニーズまで、あらゆるジャンルのコンサート音源が多数生産されている現状だ。これら密録音源は、ネットオークションなどで販売されているケースも散見される。
このような行為について、音楽の著作権を管理する団体「JASRAC」広報部に話を聞いてみた。密録音源を販売する側、また購入する側に罰則は発生するのだろうか?
「権利者に許諾を得ていない複製物であることを知った上で音源を頒布、また頒布目的で所持すれば、著作権侵害と見なされ違法となります。このような違法行為による罰則は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方です。刑事上の責任だけでなく、差し止め請求や損害賠償請求など民事上の責任も負わなければなりません」
しかし、個人で楽しむ、あるいは友人らと密録音源を鑑賞する行為には罰則が発生しないという。インターネット上にアップされる密録音源についてはどうだろうか?
「ネット上にアップした場合、権利者の許諾を得ていなければ公衆送信権を侵害することになります。その場合の罰則は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下(法人の場合3億円以下)の罰金、またはその両方です(著作権法第119条1項)」
では、こうした音源の存在自体を排除することはできないのだろうか。コンサートプロモーターで構成される社団法人「コンサートプロモーターズ協会」(ACPC)によると「会場内での録音や撮影、さらにその私的利用に関しては、注意を促すことしかできないというのが現状です」という。
つまり法的に取り締まることができるのは、配布や販売目的での音源の複製、そして所持や販売のみ。密録行為やその音源を購入して鑑賞する行為に関しては、グレーゾーンどころか合法の範疇と見なされてしまうのだという。
「会場内で録音行為を発見したとしても、音源データを削除させるところまでがギリギリで、機器を没収したり、不法者を会場から追い出すといったことまでは難しい。注意を促されても2度3度と繰り返されるのであれば、そこで初めてレッドカードとなりますが」(ACPC)
しかし違法性がなく、また手軽にできるからといって、録音行為が許されるわけではないだろう。それら音源が普及し続ければ、結果的にアーティストだけでなく、そのファンたちも首を絞められることとなる。
「MCまで入っているレア音源を欲しがるファン心理は理解できますが、パッケージ化して販売するメリットも薄れ、アーティスト側からすれば音楽活動を続ける上でも死活問題となります。我々にできることは、密録に関して『やってはならない行為』だという認識を、より多くの方々に理解していただけるよう声明を出していくことです」(同)
「購入する側が違法性を問われないとしても、結果として違法行為を助長することにつながってしまう」(JASRAC広報部)ことも踏まえて、各アーティストのファンならばこそ、密録音源の是非について今一度考え直さなければならないだろう。