ガリガリ君のコスプレも披露!? 10代の不安と潔さが交差する「Popteen」
女性誌レビューに、ティーン・ギャル系ファッション誌「Popteen」が初登場です! サイ女のみなさんの中には、「懐かしい~」「高校生の頃に読んでた!」という方もいるはず。あまり馴染みがない人も、益若つばさ、小森純、ローラ、鈴木奈々などを輩出したファッション誌と聞けば、なんとなくイメージがつくのではないでしょうか。そう、一見おバカだけれど、抜群の愛嬌とノリで、芸能界をサバイブしている面々です。
「ブスって言われたから整形した」と告白したり、「彼氏は私がピンクの下着を履くとものすごく興奮する」と惚気たり、「OK! んふふ~♪」だけで一気に売れっ子になったり……そんな、生きたいように生きる彼女たち。雑誌のつくり自体も、まさに「生きたいように生きている」という一言に尽きると思います。なんてったって、第1特集のタイトルが「魔界からやってきたぴかりん取扱説明書!」ですからね! サイ女の皆さんは、水木しげる先生監修「妖怪大百科」の1ページと間違えてしまうのでは。いきなり置いて行かれそうになりましたが、そのPOPな生き様を見させていただきましょう!
<トピック>
◎魔界からやってきたぴかりん取扱説明書!
◎コスプレ探偵ぴかりんの「萌っえ萌えにしてやんよ!」
◎ビバ!! ティーンズ
■ぴかりんの血液型はミルク型
第1特集「魔界からやってきたぴかりん取扱説明書!」のぴかりんとは、妖怪でもなんでもなく、今号で初めてピン表紙を飾ったPOPモデルのことでした。一体全体、ぴかりんとはどのようなモデルなのか。それを知るために、まずは、「ぴかりんの生態をあばくじょ!」というコーナーから、簡単にプロフィールをさらってみましょう。
ぴかりん 17歳蠍座
★血液型:ミルク型(A型)★身長:練乳1コ分(153cm)★体重:いちご3コ分(38kg)★出身地:魔界(千葉県)★持病:粉みるく病(花粉症)★趣味:除菌グッズ集め★特技:ホットココアの早飲み
「いつもはオシリからミルクソフトクリームがでるけど、たまにストロベリージャムがドロドロでちゃうの!! べんぴの時はイタチョコさんがでてくるの かたくてイヤ~ン」(ぴかりんのネタ帳より抜粋)
「出身地:魔界(千葉県)」のシュールすぎる字面に「ふっ……」と口角が上がりつつも、虚構だらけのぴかりんのプロフィールに、これをどう受け止めていいのか、とまどってしまいました。かつて、「こりん星からいちごの馬車でやって来た、りんごももか姫」だった小倉優子を一瞬思い出しましたが、ぴかりんのキャラ設定は、小倉優子のぼんやりとしたそれとは格が違う気がします。まさか、自身の便についてまで、目を背けず虚構を貫き通そうとしているなんて……。しかも、それをネタ帳に書き留めているのも、健気さを感じます。無理やりではなく、まさに「自分がやりたいからやる」というスタンスだからこその芸当なのではないでしょうか。
そんなぴかりんですが、「ぴかりんのPopteen中毒インタビュー」では、モデルとしての自分について、冷静に語っています。
「POPには中2のときから出させてもらってるんだけど、当時は髪色がハデだったり、自分では意識してなかったけどキャラが変わってたりで、そういうコがめずらしかったから撮影に呼んでもらえてるんだろうなって思ってた。いわゆるネタ系みたいなね(笑)」
一見、「生きたいように生きている」ように見える17歳の女の子。しかし実は、中2の頃から、すでに自分が大人からどう見られているのかを意識していたということに、ちょっとびっくりしてしまいました。そして、そういった視線に押しつぶされるのではなく、「自分の個性を認めてもらえた」「頑張れ」と受け止め、結果、「便秘時に尻から板チョコが出る」といった、ぴかりんキャラができあがったわけです。
サイ女世代にとっては、「ギャル=反抗的な子」のイメージがあるかもしれません。しかし、生まれた時から日本が不景気ど真ん中だった最近の10代は、例え見た目がギャルでも、不思議ちゃんでも、シビアに「これからどう生き残っていくか」を真剣に考えているのかもしれません。事実ぴかりんも、「みんなの期待に応えたい。答えるのが苦とかじゃなくて、期待に応えるのがひかりの生きがい」と綴っています。しかもこれ、ぴかりんの「遺書」らしいです……。先々のことを考えすぎて、ついに、自らの死まで思考が辿りついてしまったみたいです。ぴかりん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ!
ぴかりんはこのほかにも、「コスプレ探偵ぴかりんの『萌っえ萌えにしてやんよ!』」という連載ページも担当。編集長からのむちゃ振りで、なんとガリガリ君のコスプレをやっています。「RMKの一番黒いファンデ」「チャコットのプロフェッショナルファンデ04」といった化粧品名まで紹介して、ガリガリ君メイクを解説しているのですが、これ、やってみようと思う読者はいるのでしょうか。
■坊主頭にも「いいじゃん!」の姿勢
さて、そんな「Popteen」ですが、どんなギャルたちが読んでいるのか。読者ページである、「ビバ!! ティーンズ」を読んでみましょう!
まず最初は「読者の爆笑アンケート」。「切実な願い……」「○○になりたい!」「金くださーい!」などのテーマに沿って、「透明人間になってイタズラしたい!」「イケメンでモテモテのアイドルになりたい(はぁと)」「ベッドにカレそっくりのマネキンが欲しい」と、10代らしい回答が並び、思わず老婆のような笑みがこぼれてしまいます。
しかし、ここでも、不況を反映したようなシビアな回答がチラホラ。各回答には、男性編集者からのコメントが合わせて掲載されているんですが、「これからの人生に不安が募る10代」と「いろいろ開き直ったチャライ大人」の構図が、なんだかとっても変な感じ。
「公務員になりたい!!」……安定を求めるなら「100兆円くれ」のほうが効率いいぞ(笑)。
「いますぐ生まれ変わっていちから人生をやり直したい」……追加でセーブ機能も欲しい(笑)。
「バイトを早く決めたい!」……せっかくの願いをそこに使うのか(笑)。まあ…がんばれ! 面接はハキハキとな!!
基本的に、(笑)で返すしかない編集者に、「100兆円なんてねーよ!」と、ついカッとなってしまいましたが、大人になったらなったで、今よりもっと楽しいことがいっぱいあるんだと、彼女たちに伝えたいものです。
次のページからは、読者からのさまざまな「写メ」を掲載するコーナー。「盛り写メ」「イケメン写メ」「青春写メ」「ラブ写メ」などの中で、一番興味深いのは、「ビフォー&アフター写メ」。ダイエットやお化粧を頑張り、まったくの別人のようにきれいになった女の子の「変身」っぷりは、なかなかの見ものです。
特に今号は、珍しい変身を遂げた女の子が掲載されていました。それは、なんと坊主頭! ビフォーの写真は、茶髪のロングヘアで目の周りを黒く囲った今風ギャルなんですが、なんでも「勇気と気合いと好奇心で」坊主にしたのだそう。瀬戸内寂聴先生が、不倫に次ぐ不倫、男たちとの別れ、傷つききった果てに辿りついた境地に、10代でさっくり足を踏み入れたのかはわかりませんが、坊主頭って並大抵の決意じゃできませんよ! この写メについても、先ほどの編集者は「バッサリいったね~(笑)」と、チャラすぎるコメントを寄せていますが、「ギャルが坊主にする」という一般人からは引かれてしまうことも、「Popteen」は「いいじゃん!」の姿勢を保っている。どんなに将来が不安でも、「生きたいように生きよう」としている子を応援するのは、とても素敵だと思うんです。
ちなみに、この写メコーナーには、顔面を白塗りにして「実写版ネコ型ロボット」を再現するギャルも紹介されていました。「ガリガリ君コスのための、詳細な化粧品情報はいらないのでは?」と述べましたが、そんなことはない、結構POP読者には需要がありそう。POPの奥深さを感じてしまいました。
(豊島ユイ)
『Popteen (ポップティーン) 2012年 07月号』
最近のギャルはお人形さんみたい
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