妄想を楽しむはずの「HERS」デート企画で、宮根誠司がひたすらに自分語り
先月号での、ピース・綾部祐二と読者のデート企画が楽しそうなので、連載として続いてほしいとレビューに書いていたのですが、驚いたことに、今月号の「HERS」はデート企画ばっかりです。最近の女性誌は、1カ月コーディネートなどを見ていても、イケメンタレントが職場の同僚を演じることも多く、妄想の具現化の場のようになっています。「HERS」のデート企画も定番化して、50代の妄想をどんどん投影する場になっていくのでしょうか。
<トピック>
◎萬田久子さん「今日は私の彼でいてハート」第2回 宮根誠司さんと月島へ
◎続ピース綾部が読者とデートに出かけたら
◎湯山玲子の人生相談 かる~く五十路越え!
■客層無視のトークですか?
そんなデート企画の第1弾は萬田久子さんの「今日は私の彼でいて(はあと)」です。第1回のお相手は役所広司、2回は宮根誠司です。ただ、今回はあまりデートの甘さは感じられないのですが、宮根氏の、謙遜しながらも、しっかり自分の功績を読者に知らしめる話術が見事すぎます。
例えば萬田さんに自身の情報番組『ミヤネ屋』(日本テレビ系)での采配を褒められると「いや、大阪のおばちゃんに鍛えられたんですわ」「萬田さんがこんなぶっちゃけた大阪のおばちゃんやと思わへんかった(笑)。でもね、大阪のおばちゃんって、しなやかだと思うんですよ」と大阪のおばちゃんと萬田さんを持ち上げ、最終的には「大阪のおばちゃんに『あんたおもろいなぁ』って言われたら安心ですねん」と自分を肯定。
また「宮根さんって、学生時代からアナウンサー志望?」と尋ねられると、「アナウンサーになる気なんかまったくなくて、大学へ通学する電車から見える朝日放送という看板に、ここで『プロポーズ大作戦』や『ラブアタック!』やってるやな、と。で、社内見学するつもりで受けてみたんですよ」と、まるでアイドルの「友人のオーディションに付き添いできたら受かっちゃいました」的な謙遜をしています。ただ「ほかはだめやったんですけどね、朝日放送だけが…」と言ってるくだりを見て、「ほかも受けとったんかい!」と思わずエセ大阪弁でつっこまずにはいられませんでした。
すっかり宮根氏の話術にひきこまれて、デート企画なのかなんなのかわからなくなってしまったこの企画。萬田さんも取材後記的なコラムで「年下がいいな」とリクエストしたんで、20代か30代が来るかと思ったら5歳しか下じゃなかった! と漏らしていましたが、次号はもっと甘めのデートが実現するのでしょうか。
■「熟女好き」という商売
単発で終わったと思われていた、ピース綾部と読者とのデート企画の続編がありました。今月は、前回よりも怪しい雰囲気が漂っていてまた楽しめそうです。
今回は、「クラブで踊れば水を得た魚!」と仰る50歳の女性と銀座でのショッピングデートと、「美を追求するサロンを多角経営している」50歳女性と高級ランジェリーショップでのデートという、大人のショッピングデート二本立て。高いヒールをはいてヨロけた女性の手を取る綾部氏や、下着を試着して「どお?」と顔をのぞかせる女性に平常心を失いかけの綾部の写真などが掲載されています。綾部も熟女好きだからうれしい企画ではあると思いますが、なぜか「お疲れ様です」と心の中でつぶやいてしまいました。
■1誌にひとり!
今月号は湯山玲子さんの人生相談コーナーに、読者から興味深い相談がありました。新人研修で、すぐに「僕、できません」と言って拗ねる若者にどう対応すべきかという悩みや、12歳年下の彼氏ができて、いつ素顔をカミングアウトすべきかという悩みがよせられています。
前者に対しては、新人の「できません」という気持ちと、新人ができないというのを見てたじろぐ相談者の気持ちはどっこいどっこい、新人の反応を見てマニュアル以外のやり方を開発することが学びになると回答。また、後者の質問に対しては、「成熟した人間の魅力というよりも、圧倒的に美魔女のような若作り外見に彼が魅了されている、というならば、もう、鶴の恩返しのように素顔を見せてはいけません」「すっぴんで離れていくような相手ならば、それはそこまで、ということ。中年の恋愛がその苦みから逃れられないことは、覚悟しておきましょう」とのアドバイスがあり、気持ちよく納得。
若い男(ピース・綾部)とのデート企画と相対峙する質問が選ばれていることが、なかなか心にくいですが、湯山さんの人生相談の連載は、もしかしたら「VERY」における小島慶子さんのコラムのように、雑誌自体を客観視する作用が少なからずあるのではないかと思いました。この連載のタイトルが「かる~く五十路越え」というように、その作用は、「VERY」よりは、軽くてさっぱりしている感じもしますが。
(芦沢芳子)
「本好き」に対抗した「熟女好き」……
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