雑誌が掲げる理想像と、それを客観視したコラムを配する「VERY」の盤石さ
最近の女性誌は、ファッションやメイクだけで雑誌のカラーを出すことに限界があるのか、ライフスタイルや思想を打ち出してくるものが多いですね。理想の女性像があって、そこに近づくための方法が描かれているわけです。雑誌を見ていると、誰でもそんな素敵な暮らしができるような錯覚に陥るけれど、現実とのギャップは必ずある。雑誌のライフスタイルをそこまで信奉してなくとも、雑誌に出てくるような素敵で理想的な暮らしができていないことが、プレッシャーになることもあるのではないでしょうか。
さて、そんなことを思ったのは、前回のレビューで取り上げた小島慶子さんの「コ・ジ・マ・メ・セ・ンのもしかしてVERY失格!?」の連載ページに、こうしたプレッシャーについて書かれていたからなんですが……。
<トピック>
◎コ・ジ・マ・メ・セ・ンのもしかしてVERY失格!?
◎バス停で、ミセス・サングラス番長を探せ
◎口うるさいのは愛のムチ 旦那の小言がキレイの源泉
■「VERY」における小島さん=アメリカにおけるキューバ
今回の小島さんのコラムには、とある女性写真家の話が出てきます。その写真家は「嫌いな科目は一切勉強しない」子どもで、好きな写真と出会って「夢中になって撮り始めたら、誰にもならわないのに賞をいくつもとり、仕事になった」とか。ところがその写真家は「私は包容力があって芸術に造詣の深い両親のもとで、恵まれた人生のスタートを切ることができたから、好きなことができて、今があるんだと思う。だから、違う環境の人に『あなただってできる』なんて簡単には言えない」とも言っていたそうです。
小島さんはこのエピソードを受けて「自分にとっての当たり前が、他の人にとってそうではないことがあるのを知っていれば。その客観性と感謝の気持ちが、品位というものだと思います」と言っています。
毎回思うんですが、小島さんは「VERY」の世界観を、“これは雑誌の中だけの話であって、みんながこうでなければいけないというわけではない。メディアの作った価値観に踊らされることはない”と言ってるような気がするんですよね。これまでにも、お受験や、新学期のママたちの値踏み合戦についても書いていますが、雑誌に書かかれている価値観がすべてではないということを警告しているのかもしれません。
■新・石原軍団的な?
今月は6月号ということで、入学式シーズンのママ同士の「この人と仲良くやってけるのか」という値踏み期間も過ぎ、ちょっと気を緩めていい季節ということなのでしょうか、「バス停で、ミセス・サングラス番長を探せ」というちょっと遊びっぽいページがありました。
このページ、同誌モデルのクリス・ウェブ佳子さんが中心となり、ママ友軍団総勢6人がバス停でサングラスをかけて子どもを迎えるために待っている写真が見開きで使われているんですけど、“まー、こんなママがバス停を占拠してたらドン引き”といった感じの写真になっていますので、ぜひとも見ていただきたい。
ただ、クリスさんが「たとえ一番怖いバス停と呼ばれても送り迎えにサングラスは欠かせません」と語っているので、この企画・写真は確信犯のようですね。そして、こんだけバス停周辺を怖がらせておきながら「ただ、ブランドを主張しすぎないというのが共通の意見」という、ママ友の中だけで通用する妙な気遣いに、空気を読みたがる日本人魂を見ました。
■「イケダンは幻だった」という宣言?
「VERY」の布教もあって、「イケダン」という言葉は今や広く知られた言葉になりました。最初は「イケダン」という言葉は、外でバリバリ働いて家のことにも協力的な旦那さんが増えるといいな! と意図して使われていたと思うのですが、最近はそれも難しいのかなと思われる企画がちらほら。「すれ違いがち多忙夫婦の技ありコミュニケーション術」(2012年4月号)、「ご多忙イケダンの“癒やし方”」(2011年11月号)などと、イケダンを持ち上げて、機嫌をとろうという企画が多くなっている気がします。「よっ! イケダン」とおだてても、旦那がイケダンになることはそうそうないということでしょうか。
今月号にも「口うるさいのは愛のムチ 旦那の小言がキレイの源泉」という特集がありました。特集の始まりには「逆襲を恐れてか、関心が希薄になっているからか、妻の風体を面と向かって批判する夫は希少珍種。最も身近で辛口な夫の小言ほどオシャレに“効く”ものはありません」と書いてあります。旦那の“無関心”よりも“小言”のほうがありがたいものになっているということ!?
その“小言”としては、「脚、太くなったら嫌やから毎日ヒール履き!」「二人で出かけるときくらい俺に合わせて。ダークカラー着ていると顔色悪い! しかも気分が悪くなる」とかなり好き勝手言われてますが、夫に気にされているという事実が逆に愛されてるという実感につながるのでしょうね。それにしても、関西弁がなぜ多いのかが謎でした。
今月は、市川海老蔵に「海老蔵さんはイケダンしてますか?」というインタビューページもありました。海老蔵氏は「基本、何もしないですよ」「(家庭のキーワードはありますか? という質問に)ウチにはそういうの一切ないです。ただ、僕を受け止めてもらうだけ」などと言っているのですが、「何もしないというのは、海老蔵さん独特の照れなのかも」と、無理やりイケダンに結び付けようとしている記事は必見です。
「イケダン」は、忙しい「VERY」の読者の女性たちのために仕事も家庭のこともがんばってくれる人ではなく、実際のところは、海老蔵のように、そんなに家庭に貢献した実態がなくても、ただそこにいてくれるだけでもありがたいものになりつつあるのかなと思われる今月の「VERY」でした。今後のイケダンの変化も楽しみです。
(芦沢芳子)
旦那の小言とか、マジうっせーな
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