AV借りにくい、寺社ガールウザい! 坊主が本性を晒した『美坊主図鑑』
坊主頭は人を選ぶ。何しろ、髪型での誤魔化しがきかないゆえ、その人本来の顔面偏差値がもろに浮き彫りになりうる。坊主頭が似合う男こそ、イケメン界の王者なのではないだろうか。
そんなことを考えながら、先月発売された奇書『美坊主図鑑』(廣済堂出版)を開いた。著者は美しいお坊さんが大好きな女性集団の“日本美坊主愛好会”。数年前から、「高尾山には、ハンサムなお坊さんが多いらしい」などと情報交換をしつつ、あちこちの美坊主に会いに行く活動をしていたのが、満を持して本にまとめられたのだという。「お寺に行こう、お坊さんを愛でよう」をキャッチコピーに掲げ、イケメンから癒し系、クリーミー系まで、総勢40人の美しい坊主が登場。“クリーミー系”となんだかよく分からないジャンルを作ってしまうあたり、やりたい放題である。
さて、図鑑はというと、1ページ目からさっそく、くっきり二重の正統派イケメンが現れたじゃありませんか! トップを飾るのは、大本山高尾山薬王院の佐藤秀仁さん。1ページぶち抜きのどアップ写真にも耐えうる、ホリの深い美坊主だ。品があり、ほどよい色気が滲み出ている顔立ちに反して、プロフィールには「カレーライスが好きです」。王道のギャップテクをいきなり使ってくるとは……『美坊主図鑑』、本気だ!
次のページからも、薄い顔の美坊主に、釣り目の美坊主、動物のようなクリッと愛くるしい美坊主と、ジャニーズ顔負けの幅広いラインナップとなっていた。パラパラとプロフィールを眺めていると、元役者だったり航空自衛隊出身だったり、坊主たちの経歴も実にさまざま。京大卒のインテリ坊主や、経営コンサルタントを目指していたという意識の高い坊主、『聖☆おにいさん』(講談社)を読む坊主まで発見。
まるで統一感のない美坊主たちだが、多くに共通していたのが、音楽好きな側面。「ロックフェス大好き」、「クラシックを爆音で聴く」、「お坊さん2人でヒップポップユニットを組んでいる」、「お坊さん仲間で結成した“坊主バンド”で、ギターと作曲を担当している」、と実に音楽坊主の多いこと。この“坊主バンド”とは、東京・四谷の「坊主バー」のスタッフによるバンドだそうで、彼らの曲「お寺の娘」も本に掲載されているのだが、これがもう革命的な名作なのである。(以下、歌詞の一部を引用)
♪ああハゲは見飽きたーああ檀家の相手も飽きたーああ重要文化財どうでもいい
♪最近はやりの仏女とか寺社ガールとか阿修羅とかなんだかイラツク こめかみ殴りたい
ちなみに、「節があるお経は、やはり音楽センスも必要なんですよ」と発言している坊主もいた。「ああハゲは見飽きたー」という過激な歌詞も、優れた音楽センスで歌いこなされたら問題ない……のか?
徐々に坊主の本性が白日の下にさらされていく中、極めつけは、ところどころに挿入されているイラストレーター・腹肉ツヤ子さんが出会ったお坊さんの実態コラム。ドライブデートのBGMには、法要の練習のために般若心経を流す坊主の話や、AVを借りる際の坊主ならではの苦悩が綴られている。お寺近辺の檀家さんにバレないように、遠くの町へ片道一時間半かけて借りに行くんですって。「未亡人モノは悪いことしてる気がして借りるとき緊張する」ですって。坊主も借りるのね、未亡人モノを。
未亡人AV好きの坊主然り、「最近はやりの寺社ガールとか~なんだかイラツク」の歌詞然り、お坊さんの姿からは想像しがたい人間臭さを感じられるのが本書の醍醐味。もしかしたら、この図鑑で穏やかな笑みをたたえている美坊主たちも、心の中では「美坊主と言われるとかなんだかイラツク」などと思っているかもしれない。その毒づきすら、お坊さんのイメージとのギャップに感じられて、いとおしい。坊主ってば、おいしい立場ね!
(朝井麻由美)
惚れちゃう(はあと)
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