「キャッチ」と「ラッセン」がキーワード! 入園のために角川式営業術とは?
入園ラッシュのシーズンが過ぎ、落ち着きを取り戻している駒沢の森こども園ですが、ここからが角川式営業術の腕の見せどころなんですよ。見学&問い合わせが多い2月や3月は向こうから入園希望者がわんさかやってきますが、関係のないシーズンは見学がたまに入るだけになってしまいます。そこで、私は薄利な保育ビジネスを生き抜くために、オープンしてからいろいろと試みてきました。いちばん集客があるのは新聞折り込み広告やポスティングなのでしょうが、オープン前に一度だけ行いましたが、かなりお金が掛かります。やはり、“新規オープン店”なのでなるべくお金を掛けたくないのが本音。
結局、継続してやっているのは、バスのアナウンスで「八雲、1歳から8歳、学童対応の駒沢の森こども園前」というのを下りの停留所のみ広告していますね。それは、保育園周辺は最寄駅から13分以上離れているため、近隣の働いている住人はバスに乗って通勤するケースが多いのを知っているからです。では、なぜ上りはやらないかというと、下りの停留所は保育園の目の前だけど、上りは少し離れているからということと、朝は時間がタイトなので歩いて最寄駅まで行って電車に乗る人も多いけれど、帰りになると始発の渋谷からバスに乗ってゆっくり帰る人が多いという地元心理を知っているからなんですよ。お金があれば上りも下りもやりたいけどね(笑)。値段が全然違ってくるから我慢です。
■「ラッセンの絵」式営業術を保育園でも
で、お金の掛からない私のやっている営業方法をここで紹介しますね。どれも他の業種では普通にやっていることですが、保育園ではやってないでしょうね。
まず「キャッチ」。簡単に言っちゃえばホストのキャッチと一緒です。これは保育士にやってもらっている営業方法で、子どもたちを連れて公園に行くとき、とにかく楽しく遊びます。こちらに興味を持っている保護者がいれば、すかさず話しかけ、「お友だち作りに」「短い時間から預けられる」などをアピールして、そのまま散歩の子どもたちといっしょに保育園まで連れて来ちゃうんです。そこからは途中で連絡を受けていた私がスタンバイして、接客をするという流れ。
もうひとつは「ラッセン」。よく繁華街の画廊ともいえない店の前で、キレイなお姉さんが「ラッセンの絵を見ませんか?」と声を掛けているのを知っていますか? あれは繁華街に来たのに何の目的もなく、なんかいいことないかな? と思っている、心に隙のある男性をターゲットにしているんですが、その保育園バージョン。ベビーカーを押している散歩中の母親が「ここ何かしら?」と一瞬止まったのを発見したら、すかさず「見学できますよ、月に40時間から預けられます」と言って引き止めます。デスクワークをしながら、誰か立ち止まってないかどうかアンテナを立てているんですよ。
このふたつの営業方法でターゲットになる層というのは、子どもが保育園にも幼稚園にも行ってない専業主婦です。母親というのは、専業主婦であっても常に育児に疲れていて、「美容院行きたい」「ネイル行きたい」「ゆっくりお茶やランチをしたい」という欲求が必ずあるんですよ。その隙間に入るんです。
「駒沢」という場所は、富裕層が住むエリアなので、金銭的な余裕はあります。あとは「子どもには友だちが必要」「この保育園は習いごとができる」など、子ども預けることに罪悪感を持たせない、「むしろ預けるのは子どものため」と思わせるんです。それが角川式営業術です。子持ちなので話に説得力がありますし、そのとき園の子どもたちがニコニコしていればOK。
実際、駒沢の森こども園に来ている子どもたちは元気ですし、言葉を覚えるのも、トイレトレーニングもすべて早いです。我が子は知らぬ間にひらがなが読めるようになっていました。「こども園」のそもそもの定義は、幼稚園と保育園の機能を合わせた施設のことなので、駒沢の森こども園でも個々のレベルに合わせて学習させています。園長は保育士免許だけでなく、幼稚園教員免許を持った先生なので、「こども園」本来の意味の保育が可能なんです。
角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では4歳の愛娘の子育てに奮闘中。
『クリスチャン・R・ラッセン 1000ピース The Blue World -Star- 81-985』
怪しげな金持ちの家にしかない!
【バックナンバー】
・究極の愛! 娘が安心して過ごせるように保育園をつくっちゃいました
・シロウト保育園オープン! いつも遅刻&スッピンの私がガラリと変わり……
・借り入れゼロで保育園を設立! 内覧会で父親、母親の本音があらわに
・子どもを預ける口実を作ってあげるのも、保育園経営者のお仕事です
・読みが甘かった? 保育園の遠足でギャン泣きが発生し、思わぬ事態に
・子どもだけじゃなく、従業員も守らないと! 保育園経営は常に問題発生
・「お子さんがお友だちに噛みつきました」園児のトラブルに親の反応は……
・過保護なパパママに人気のアクティビティ、講師は元K-1王者!
・英語を話すサンタがやってきた! クリスマス会も保育園経営も大成功
・出産費用100万円は当たり前! 園長もパシらせるセレブママの実態
・「安いと変な人が入ってくるから心配」という親の安心料!? 入園金の意味とは
・「鬼って優しいよ」セレブ保育園での豆まき、子どもの受け止め方も一味違う!
・高い月謝をドブに捨ててるようなもの!? セレブママの子ども習いごと事情
・「美容外科の大好き」の私に、保育園経営で思いもよらぬ変化が!
・「入園の季節、モンスターマザーに“選ばせない”営業術とは?