アシュトン・カッチャーがジョブズという配役に、疑問と非難が続々
昨年10月、世界中の人々に惜しまれつつその生涯を閉じたデジタル世代のカリスマ、スティーブ・ジョブズ。彼の映画が制作されることは死後早々に決定していたが、1日、インディペンデント伝記映画でジョブズ役を演じる俳優が発表された。抜擢されたのは、マスコミもノーマークだった、喜劇俳優アシュトン・カッチャーであった。
アップル社の共同創業者であり、斬新で革命的なヒット商品を次々と世に送り出してきたジョブズ。ライバルであるビル・ゲイツ同様、パーソナル・コンピューター革命を巻き起こした人物として讃えられており、その活躍ぶりは、すでに『バトル・オブ・シリコンバレー』(1999)というタイトルでテレビ映画化されている。今回制作が決定したインディペンデント映画は、ジョブズの「わがままなヒッピー時代から、アップル創始者になるまで」の道のりをメインに描くとのこと。業界大手ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントが企画を進めている、ウォルター・アイザックソン著の公認伝記本『スティーブ・ジョブズ』を元に制作する映画とは関係のない作品だが、ジョブズが主人公の映画だけに大きな注目を集めている。
1日、米エンタテイメント業界紙「Variety」は、そのインディペンデント伝記映画のジョブズ役をアシュトン・カッチャーが演じると発表。作品のタイトルは『Jobs』で、5月にクランクインすると報じた。アシュトンは、離婚協議中のデミ・ムーアと共にTwitter普及に貢献したことで知られるセレブであり、デジタル・メディアに精通している。長身でカッコよく、自信溢れる雰囲気を持つなど、ジョブズと共通点も多い。シリコンバレーの新興企業数社にも出資しており、IT業界にも詳しく、彼以上の適任者はいないと抜擢されたようだ。
しかし、ネット上では、このキャスティングを疑問視する声が多く上がっている。アシュトンはコメディー番組と、イタズラ番組で大ブレークした喜劇俳優。真面目な伝記映画の主演やジョブズ役には不向きだというのだ。
アシュトンは、1998~2006年に放送されたテレビコメディー『ザット’70sショー』の看板俳優として全米を笑いの渦にまいたほか、初主演したおバカ炸裂コメディー映画『ゾルタン★星人』(00)も大ヒットとなり、若手俳優の中でコメディーを演じさせたら右に出る者はいないと評価されるようになった。昨年は、ドラッグ、アルコール、奇行問題でクビになったチャーリー・シーンの後釜として、大ヒットテレビコメディー『ハーパー★ボーイズ』に主演。視聴率は上々で、ギャラ大幅アップで来シーズンも出演するだろうと見られている。MTVのセレブどっきり番組『パンクト』の司会・プロデューサーとしても知られ、若者を中心に高い人気を得ている。
キャスティング発表後、「大コケしてしまうのではないか」と懸念する声が上がった。4月1日に発表されたことから、「エイプリル・フールのネタだろう」という見解を示すものまで現れたほどだった。
実はアシュトンは、映画『バレンタインデー』と『キス&キル』で、第31回ゴールデンラズベリー賞最低主演男優賞を受賞するという不名誉な“栄誉”を与えられている。コメディー俳優としてもけなされてしまい、ここでシリアス路線に転換しようと決心したのかもしれない。
賛否両方の意見が飛び交っているが、スティーブと共にアップル社を立ち上げ、「ウォズの魔法使い」という愛称で知られるスティーブ・ウォズニアックは3日、アシュトンがジョブズを演じることを支持するというコメントを発表。ウォズニアックは、米芸能ゴシップサイト「TMZ」の取材に対して、「アシュトンが今ホットな役者だからという(客寄せ目的の)理由だけで選ばれたのではないかと心配になるけれど」と前置きした上で、「でも、プロフェッショナルな観点から彼が配役されたのだと感じているよ。彼が出演することになって、とてもうれしい。彼はITメディアを大切に思っているし、きっと素晴らしい作品に仕上げるだろう」と述べ、期待を寄せた。
なお、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントが制作を企画している伝記映画のジョブズ役最有力候補には、ジョージ・クルーニーとノア・ワイリーの名が挙がっている。他にも、『ソーシャル・ネットワーク』を手掛けたアーロン・ソーキンがスティーブ・ジョブズの伝記映画の脚本を執筆しないかとオファーされていることを告白。実現すれば、アーロンだけに、ジョブズ役には実力派俳優を抜擢するに違いないと見られている。それぞれの映画で、ジョブズを演じる役者たちが比較されるのは避けられないことであり、アシュトンは大きなプレッシャーを背負うことになりそうだ。
ジョブズの死後に制作される伝記映画第1号となる『Jobs』は、果たして成功するのか。アシュトンはシリアスな俳優へ大化けすることができるのか。今から楽しみだ。
『アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』
ウォズの方が顔的にタイプ
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