乙女ゲームのルーツは? 三世代の“乙女ゲーマー”が徹底討論
嵐が任天堂『マリオ』シリーズのテレビCMに起用されるなど、女性にとってもゲームがもの珍しい存在でなくなってきた昨今。1985年の『スーパーマリオブラザーズ』の大ヒットに始まるテレビゲーム市場にも約30年の歴史が刻まれているのだ。そして「乙女ゲーム」と呼ばれる女性向け恋愛シミュレーションゲーム市場にも、20年近い歴史があるという。今回は乙女ゲームの黎明期から現在までの歴史を紐解くべく、三世代の「乙女ゲーマー」たちを集めて座談会を開催した。
[座談会出席者]
A 1994年発売の『アンジェリーク』から女性向けゲームを始めたバツイチ40代。乙女ゲーム第一世代
B 2000年発売の『遙かなる時空の中で』(以下『遙か』)のテレビアニメから、それまで無関心だったゲームをプレイするようになった20代独身。乙女ゲーム第二世代
C 2010年発売の『ときめきメモリアル Girl’s Side 3rd Story』(以下『ときメモ GS 3rd』)を入り口に、『薄桜鬼』『うたの☆プリンスさまっ♪』(以下『うたプリ』)シリーズもプレイする30代主婦。乙女ゲーム第三世代
■人生初の乙女ゲームは「ネオロマンス」とDS版『ときメモ GS』
――まずはゲームを始めたきっかけと、初・乙女ゲームタイトルを教えてください。
A 一人暮らしを始めた20代前半から”趣味はゲーム”だと公言してましたけど、当時はゲームは男と子どものものだったから、周りから変わり者扱いされてました(笑)。なので女友達から深刻な顔で、”実は今度『アンジェリーク』ってゲームの、歌のCDが出るんだけど……私が買っても大丈夫?”って、相談された時は逆にビックリしました。
B ええっ? キャラソン(キャラクターソング)、普通に売ってますよね?
A 当時はアニメのグッズすら珍しい頃だったから。彼女は、アイドルや生身の存在じゃないものに惹かれる自分をやましく思ってたみたいです。私は趣味だと開き直ってるせいか、好きなら買えばいいのにと返事をして。その後に彼女から、そのゲームのすごさを熱く語られて、しっかり「布教」されました(笑)。
C 私もよくやります(笑)! いいって思ったら、他の人にも教えたいですよね!
A うん。私は恋愛要素よりもライバルを出し抜くゲーム性にハマったので、純粋な意味の乙女ゲーマーと呼べないんだろうけど、すごく目新しかった。私にとって、コーエーといえば歴史SLG(シミュレーションゲーム)の会社だったけど、その友達にとっては「ネオロマンス」を作った会社っていう認識の違いも面白かったです。
B 私の初ゲームも「ネオ・ロマンス」シリーズで、『遙かなる時空の中で3』から始めました。大学生の頃、声優の関智一さんが出演した『遙か~』のアニメを見始めて、主題歌の歌詞と世界観に惹かれたんです。だけど、家にゲーム機がなかったので自分が遊ぶなんて考えもなく、ずっとドラマCDやキャラソンを近所のアニメイトで買ってました。そこに偶然『遙か3 十六夜記』の限定版が再入荷されてて、特典の設定資料集を目当てにゲームソフトを買ったのが初めてです。
C 特典付きか~(笑)。
B 箱に「今後の再入荷未定!」と貼られてて、「これは今買わなきゃ!」って。当時はアニメ化されてなかった『遙か3』の情報がすっごく欲しかったんです。資料集によると『十六夜記』自体は単体でも遊べるソフトなんですが、ファンディスクだと分かって、ちゃんと作品を知るなら本編の『遙か3』からやらないとって。
A マジメだなあ!(笑)
B でもゲーム機とソフトを一緒に買うのは高いですよね? 迷ったあげく、ゲームの公式サイトを見てから決めようと。そこでPVを見たら、もうゲームやるしかない!! って思ったんです。その日のうちにゲーム機を買ってきて、実家の居間のテレビにつないだまま、学校から帰ったらそのまま朝までプレイしたり(笑)。先の展開がまったく読めずに、早く続きを知りたい! ってお話にグイグイ引き込まれました。
C 私は『ときメモ GS 3rd』がそうでした! 大学生の頃に、弟が男の子用の『ときメモ』を実家で遊んでたから、流行ってるのは知ってました。だけど、就活から社会人になってからはゲームとはまったく縁もなく……。結婚後にダンナが『ドラゴンクエストIX』とニンテンドーDSiをプレゼントしてくれたけど、レベル上げに飽きちゃって(笑)。
A クリアまで長いですからね(笑)。
C その年に『ときメモGS1st Love Plus』が出たばかりで目にとまって、でもビジュアルを見てなんか違うと思い。その後、ダンナが単身赴任して一人になった時に、突然だけど「すごく”恋したい!」と思って。ネットで見かけた『ときメモ GS 3rd』の絵を見て、「あっ今度のはイケる!」って思ったんですよ(笑)。
――「恋したい!」から、なぜゲームに? 合コンとか他の選択肢はありませんでしたか?
C だって結婚してるし、リアルな浮気はダメでしょ。弟が『ときメモ』で遊んでるのを見てた時、「なんで女の子用がないの?」って思ってたせいか、ゲームに対する意識の壁もなかったのかも。ちょうどいいタイミングで友達から誕生日プレゼントのリサーチが来たので、迷わず『ときメモ GS 3rd』をお願いします……と(笑)。でもその子は、リクエストがあったから買っただけで、私が熱く語っても反応が薄かったんですよ。だから思い切って、mixiの乙女ゲームのコミュニティに入りました! そこから一気に友達が増えて、趣味の世界もすごく広がりました(笑)。
――SNSですか。Aさんの頃は、そういう仲間とか情報はすぐ見つかりました?
A 相談してきた子以外いなかったですね。書店で男子中高生に混じってゲーム雑誌の立ち読みをするのも恥ずかしいから買って帰って、家で隅々まで読んでもなにも情報がない時の方が多かったです。女性向けゲーム雑誌ができたのも2000年を過ぎてからだし、それも季刊や不定期発行で追い切れませんでした。「B’s-LOG」の増刊「乙女ゲーム白書」(エンターブレイン/2006年初号発売)で、今まで発売された女性向け恋愛ゲームタイトルが網羅されたのを見て「世の中が変わった!」と思いました。
B 私も買いました!
A どこで情報を探せばいいのやら状態から、このジャンルはこれを買えばOKっていう安心感が生まれました。
B その後くらいから、一気に色んなメーカーも参入して作られる数も増えましたよね。
――知る人ぞ知るジャンルに光が当たって、新規ファンが増えた実感はありますか?
A はい。「後追いかよ!」みたいな古参気取りは、ないと言えば嘘になりますが(笑)。それよりも、自分自身も好きな趣味を充実させたいので、今の人たちのアイディアや楽しみ方を参考にさせてもらってます。
(後編につづく)
なるほど、三国志ですか~
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